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経営者・人事の視点で取材!業界の傾向と対策
内定者フォローの現状と教育ツールの選び方

景気の回復、また団塊の世代の定年退職などによって企業の新卒採用意欲が急速に拡大している。久しく氷河期といわれてきた就職戦線だったが、この2年あまりは一気に「売り手市場」と言われるほどだ。こうした環境下、しっかりした「内定者フォロー」の必要性がクローズアップされている。

※この記事は2006年5月に作成しました。その後、記事の内容、各社のサービスに関する情報は変更になっている場合がありますので、ご了承ください。

内定者フォローが採用の成否を分ける時代

2007年入社の大卒新卒求人は約70万人…。これは前年に対してだけでも10万人も増えている数字である。景気の拡大が続いていること、団塊の世代の定年退職…など、様々な要因が重なり企業の新卒採用意欲は高まる一方だ。
しかし、それに対して大学生の数は少子化の影響もあり減少が続いている。それだけでも採用競争は厳しいのに加え、各企業とも「採用数は増やしたいが、採用レベルも維持したい」という方針を打ち出しているから、一部の優秀な学生を多くの企業が奪い合うという状況も一般化している。これは、1990年前後のバブル期に、「とにかく数を集めろ」と大量採用した学生がバブル崩壊後にリストラの対象にされたといった歴史が、企業にとっては手痛い記憶となっているためだ。
現在の採用戦線は、「質と量」という一見相反する要素をともに追求することが求められるようになっている。

「質を維持しつつ、採用を増やす」という困難な目標を仮に達成したとしても、そこで気を抜くことは出来ない。
早い企業では3月~4月に内定を出すようになってきたため、翌年4月の入社まで実に1年もの長い内定期間が生ずることになった。これに、さきほどの採用難が重なるとどうなるだろうか。企業は春採用だけでは採用の予定数を確保することが出来ず、夏採用、秋採用、場合によっては冬採用まで継続的な募集、選考を行っている。つまり、いったん内定を出した学生であっても、放っておけばいくらでも他に流れていってしまう可能性があるということなのである。
採用活動は内定を出せば終わりというものではなく、翌年4月の入社日に確実に出社してもらうためには、内定者フォローというプロセスが文字通り不可欠となっているのである。

図1 大卒求人倍率調査(2007年卒)

株式会社リクルートワークス研究所 大卒求人倍率調査(2007年卒) 結果より作成

学生からもニーズが高い内定者研修

内定者フォローと一口に言っても様々な手法がある。最も基本的なのは、小まめに学生にコンタクトを取り、近況報告をしてもらい、時にはミーティングや食事会を開催…といったコミュニケーションを継続していくことだろう。やはり何にも勝るのはマン・ツー・マンの意思疎通である。
また、近年ではインターネット掲示板やブログ、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)といった様々な利便性の高いツールが一般にも普及している。内定者フォローにもこうしたITインフラを活用し、内定者と緊密なコミュニケーションを図っていこうという動きも注目されるようになっている。

それを前提としながらも、同時に企業からも学生からもニーズがあり、有効なフォロー手段として注目されているのが「内定者研修」だ。
従来の内定者研修というと、学生を集めてのビジネスマナー研修や同期意識を高めるためのグループワークといった内容のものを懇親会などと組み合わせて行うようなパターンが一般的だった。しかし、企業の人事部は、近年の業務効率化路線によって最小限の人員で運営されているケースが多い。その上で競合が厳しい通年採用を行わなければならず、必要だと分かっていても内定者フォローにはなかなか手が回らないのが実情だ。そこで、内定者教育ツールを導入することで最低限の労力で有効なフォローを実現しようという動きが盛んになってきている。
また、内定辞退を未然に防ぐという採用担当者の視点と同時に、入社後の戦力化を目的とした「新人研修の前段階」と位置づける人材開発・教育担当者の視点からも、この内定者教育ツールに対する期待が高まっているという状況もあるようだ。

学生側からも内定者研修や教育への要望は高い。研修プログラムを与えられるということは、単純に内定した企業が自分を気にかけてくれているという安心感を与えてくれるものであると同時に、社会人になること全般の不安を解消してくれるものでもある。
特に、バブル後に親の世代がリストラされるのを目の当たりにしてきた現在の大学生は、入社後は出来るだけ早く戦力化し、自分の価値を高めていかなければならないという考えが強い。「教育・研修」に熱心な会社ほど良い会社という意識があるため、内定後、友人の会社に比べて研修がなかったり少なかったりすると、それだけで不安を感じてしまうという傾向まであるのである。

自社の望む人材像から選定が
可能になってきた内定者教育ツール

代表的なリクナビをはじめ、大学生の就職活動がIT(インターネット)を中心にして行われるのが一般的になって久しい。つまり、学生はほぼ例外なくインターネットに接続する手段を持っているということになる(アクセス場所は、1位:大学、2位:ネットカフェ・漫画喫茶、3位:自宅…と続く)。
内定者研修も、このネット環境を生かして「eラーニング」を提供しているサービスが主流となっている。もちろん、じっくり読み込める冊子テキスト形式の通信教育にも根強い人気がある。

eラーニングにしても通信教育にしても、その進捗状況を人事が管理し、コミュニケーションをとっていくことが内定者フォローのもうひとつの柱になる。大勢の内定者と連絡を頻繁に取るのはそれだけで大変な作業だが、現在は研修サービス各社とも、IT(ネット、ケータイなど)を活用した便利なツールを提供している。これらを効果的に利用し、フォローと内定者のレベルアップという両方の目標を実現したいものである。

図2「2005年度内定状況及び採用活動に関するアンケート」

株式会社毎日コミュニケーションズ
「2005年度内定状況及び採用活動に関するアンケート」

内定者教育ツールの商品・サービス情報

面接官・リクルータートレーニングのサービス・製品情報
MobiLEX 有限会社ゲット
Open SESAME サイバックス株式会社
フレッシャーズ・コース
株式会社ダイヤモンド社
日経プレビジネスパック 日本経済新聞社
ビジネスベーシックシリーズ 株式会社日本能率協会マネジメントセンター
NETスキルチェック 株式会社ネクストエデュケーションシンク
内定者Welcomeパック 株式会社ネットラーニング
ようこそ!学生諸君 PHP研究所
内定者Pack 株式会社プロシーズ

注:ASPとは・・・WEBを通じ、ID・パスワード等の管理の下で利用する、いわばレンタルシステム。自社でシステムを構築する必要が無く、低コスト・短期間で始めることができる。

MobiLEX

すべてのコンテンツを携帯電話から利用可能

ゲットの学習機能付コミュニケーションシステム「MobiLEX(モビレックス)」は、全メニューが携帯電話から利用できる。
「学生に一番身近な情報インフラといえば携帯電話。当社のコンテンツは、携帯電話とPCの両方で利用できますが、集計では約8割が携帯電話からのアクセスです。ケータイなら少しの待ち時間や移動中でも学習やコミュニケーションが可能。学生が最も利用しやすいツールという自信を持っています」と同社・天野社長。同システムは、「お知らせ」「掲示板」「プロフィール」「ダイアリー」など基本機能を完備。自社開発でモジュール化されているためカスタマイズしやすく、アンケートや自社の歴史など独自コンテンツも可能だ。
eラーニングは「ビジネスマナー学習」が中心。100~300問の問題に回答しながら社会人の基礎を身につける。また「IT技術」「資格取得」「業界用語」など追加コースも各種用意。これらは学習に特化した携帯アプリ形式での提供もでき、いったんダウンロードすればパケット通話料を気にせずじっくり取り組める。携帯アプリ開発は通常、開発期間とコストがネックだが、基本仕様の場合、問題差し替えのみで最短5営業日で納品できる(ドコモFOMA900以降のみ)。
また、eラーニング以外で人事担当者に好評なのがメール管理ツール。グループ単位や学習進捗率、最終利用日等でターゲットを絞って配信でき、送信メールの開封も画面上で確認できる。メール内に埋め込んだアンケートを集計できる点も評価が高い。セキュリティ面は、ISMS取得のデータセンターでシステムを一元管理。すべての通信は携帯を含めSSLに完全対応。個人情報保護の観点から、内定者間でのやりとりに本名を隠しハンドルネームを使う「ステルスモード」を利用すれば、内定辞退の場合も他の内定者の個人名が漏れることを防ぐことが可能だ。

提供形態 eラーニング:ASPサービス(携帯電話、パソコン)
※携帯の場合はアプリとしてダウンロード可能
利用人数 1人から(上限なし)
利用企業(2005年度) 約700社
代表的なメニュー ●ビジネスマナー
●IT技術者教育
●資格取得
●業界用語
※オリジナルコンテンツにも対応可能
学習進捗管理 内定者管理ツールを利用して各企業にて
利用期間(時期目安) 6月以降:随時
価格(税込) 10人まで 84,000円(年間)
11人以上は10人単位で追加料金(100人以上は50人単位で)
※ビジネスマナー学習含む
※追加のeラーニングコースは別途料金
画面例

◆管理者による集中管理が可能
全ての管理は貴社専用の管理画面にてご利用いただけます。 専門の知識等は一切必要なく、誰でも簡単に運用可能です。

◆強力なメール送信・管理システム搭載
グループ単位、学習進捗率、最終利用日等でターゲットを絞って配信することができます。送信したメールは開封確認機能が付いているため、ユーザが開封したかどうかを即時に画面上で確認することができます。 また、メール文章内にアンケートを埋め込み、即集計できる機能も標準搭載しております。

◆セキュリティ対策も万全
管理者およびユーザの通信は携帯を含め、SSLに完全対応しております。 また、個人情報保護の観点から、内定者間でのやりとりの際に氏名を隠してハンドルネームでやりとりする「ステルスモード」オプションを利用することで内定辞退の際に、他の内定者の個人名が漏れることを防ぐことが可能です。

◆ユーザの利用を促すツールを搭載
ブログ(日記機能)やスケジュール帳、掲示板など、日々利用するツールを搭載することで、ユーザが飽きずに全体の利用度が向上し、内定者全体のモチベーションアップを狙います。

Open SESAME

図4 内定者フォローコースの画面イメージ
内定者フォローコースの画面イメージ

修了率90%超を実現する教材のクオリティーに自信

サイバックス株式会社の「内定者フォローサービス」は、内定者とのコミュニケーションを担うポータルサイト「Open SESAME(オープンセサミ)」とeラーニングによる「内定者研修コース」から構成されている。
まず、ポータルサイトはお知らせ機能、プロフィール、掲示板、グループ分けといったベーシックなメニューの他に「先輩社員登録」の機能がユニーク。人事と内定者のやりとりだけでなく、年齢の近い先輩社員がフォローに加わることで、人事にはしにくい相談ができる、近い目線でのアドバイスが受けられる…など学生には非常に好評だ。
研修コースは、eラーニングが普及し始めた1990年代後半から専業で取り組んできた同社のノウハウを生かした教材内容に注目したい。「ビジネスマナー」「ビジネス文書・ビジネスメール」「経済の基礎と新聞の読み方」「会社とは何?」…などテーマはベーシックなものが中心だが、いずれもその修了率(最後までやり終えた率)は90%を超える。学生が親しみやすいアニメーションや動画を使った画面、マニュアルなしで直感的に使える操作性の良さなど、負担感なく学習できるように様々な工夫が凝らされている。
「受講生からいただく質問、問い合わせなどを最新のバージョンに生かして改良を重ねています。ですからFAQやチューター(サポート)はありますが、ほとんど利用しなくても良いくらい分かりやすい教材になっていると思いますね。また、マナー研修にゲーム感覚を取り入れたり、ビジネスメールコースにもコンプライアンスの概念を組み込むなど、学生、企業の双方から求められる要素を積極的に取り入れて教材を開発しています」と同社・楠田社長。リピーター企業によるユーザー会が行われているほど品質の高さには定評があるサービスだ。

提供形態 eラーニング:ASPサービス
利用人数 1人から(上限なし)
利用企業(2005年度) 約800社
代表的なメニュー ●新社会人のためのビジネスマナー
●新社会人のための文書とメール
●新聞から学ぶ経済の読み方
●仕事って何?会社って何?
●ケースで学ぶマナーと仕事
●その他 ビジネス計数系・PCスキル系・語学教育系 コースあり
学習進捗管理 内定者ポータルサイトの管理画面から進捗管理が可能。
また進捗率ごとのメール送信が可能。
利用期間(時期目安) 6月以降:随時
価格(税込) eラーニング1コース 6,300円~26,250円で各種あり
※最多価格帯は1コース10,500円前後
ポータル利用料 月額10,500円(500人以下)
月額21,000円(1000人以下)
月額31,500円(1500人以下)

フレッシャーズ・コース

日経プレビジネスパック

図6 日経プレビジネスパック内容

日経新聞の購読を通じて社会人としての基礎知識を

日本経済新聞社の「日経プレビジネスパック(PBP)」は、ビジネスパーソンの常識ともいえる日経新聞を読む習慣を養いながら、様々なビジネス基礎知識を身につけてもらおうというプログラムだ。研修費用の中に日経新聞の購読料が含まれているので、内定者の学生には企業から毎日教材でもある新聞が届くことになる。内定企業とのつながりを日々意識させるという意味では、非常に継続性の高いフォローといえる。 この新聞の定期購読に加えて、内定者のモチベーションをアップさせるテキスト教材「日経プレビジネスブック」、経済新聞を読みこなすためのコツを伝授する「わかる!日経」「やさしい日経経済用語辞典」なども届けられる。また、受講生の経済知識のレベルを測定する「経済常識テスト」は、プログラムの開始前・終了後の2回分がセットになっており、期間内にどの程度の知識を得たのかが学生自身にも、また企業にも実感できるようになっている(結果分析付き)。
「ご利用いただいている企業様は、技術系やサービス系など通常は経済新聞をあまり意識しないような業界も多いのが特徴です。現場に入ってしまうとなかなか経済の基礎知識や一般常識どころではない…という企業の方が、学生時代にそれらを身につけておいて欲しいと考えられるのではないでしょうか」と同社・マーケット開発部の中松部長。
もちろん新聞や教材を送るだけなくインタラクティブなサービスも用意されている。パソコンや携帯電話に配信する週刊のメールマガジンは、その週の新聞の中から押さえておきたい記事をピックアップし解説。また、10名以上の受講者をまとめれば、講師を派遣しての「日経読み方研修」も可能。内定式や懇親会などと組み合わせて実施すればより効果的だ。

提供形態 日経新聞の定期購読、テキスト、テスト
メールマガジン、研修講師派遣
利用人数 1人から(上限なし)
利用企業(2005年度) 約350社
代表的なメニュー テキスト「日経プレビジネスブック」他
テスト「経済常識テスト」(2回実施)
学習進捗管理 利用企業にて
利用期間(時期目安) 随時:3ヶ月単位(3ヶ月・6ヶ月)
価格(税込) 1人28,000円(6ヶ月)
※日経新聞購読料(6か月分26298円)含む

NETスキルチェック

内定者向けスキルチェックとオーダーメイドの研修プログラム

株式会社ネクストエデュケーションシンクは、10~30分で必要なビジネススキルの習得度をWebで客観的に診断できる「NETスキルチェック」シリーズを提供している。内定者向けにeラーニングなどを検討したとしても、全員一律では形式的に「やっただけ」になりがち。個人ごとのスキルを診断し、数ある研修コースから適切なものを選択すればいいのだろうが、現実的にはどうすればいいのか分からない…。そんな人事担当者の悩みを解決するコンテンツである。
「ビジネススキルの基礎」「PCスキルの基礎」「コミュニケーションの基礎」「ビジネスマナー」といった一般的なものから、近年要望の高い「コンプライアンス・個人情報保護」「リーダーシップ」「ネゴシエーション」、またエンジニア向けの「IT基礎」「ITSSレベルチェッカー」、営業向けの「セールス入門」…など、内定者向けに使えるスキルチェックを多数用意している。
「研修を行う前に、まずスキルチェックを…というのが当社の発想です。そのうえで各人の弱いポイントを適切に強化する研修を行い、最後に仕上げチェック(テスト)で習得度を効果測定するのが、研修の一つのサイクルなんですね」と同社・斉藤社長。もちろん、最終の確認テストも提供しており、内定者向けには同期でランキングを競うゲーム性も導入し、楽しく取り組めるようになっている。
同社は全国の人材開発系の専門企業約100社と提携している。eラーニング約2000コース、集合研修約1000コースを提供できるシステムを作り上げており、まさに人材教育のワンストップサービス企業である。各社の研修を組み合わせて目的や期間、予算にあわせたオーダーメイドの研修プログラムを組むこともできる。ツールの提供元としてだけでなく、むしろ教育コンサルタントとして活用したいサービスだ。

提供形態 eラーニング・スキル診断:ASPサービス
利用人数 1人から(上限なし)
利用企業(2005年度) 約200社
代表的なメニュー NETスキルチェックシリーズ(汎用100種類・カスタマイズ可)
●ビジネス基礎・ビジネスマナー
●ビジネス敬語
●コミュニケーションの基礎
●コンプライアンス・個人情報保護
●Office Do(オフィスドゥ)※PC操作スキルチェック
●ITSSレベルチェッカー(経済産業省策定ITスキル標準準拠)
●IT資格完全マスター
(基本情報技術者試験など25種類の主要IT資格取得eラーニング)
研修 3000コースから選択可能
学習進捗管理 各企業にて:管理・分析画面のオプションあり
研修コースの設計などは担当営業がご相談をうけたまわります。
利用期間(時期目安) 随時
価格(税込) スキルチェック1種 3,990円/人から(ボリュームディスカウントあり)
※研修については、内定者の場合1コース10,500円程度から各種あります。
別途お問い合わせ下さい。
図8 NETスキルチェック診断結果イメージ

内定者Welcomeパック

受講生の登録から学習進捗管理まですべてをアウトソーシング

株式会社ネットラーニングは、eラーニングの草分け的企業であり、創業当初から内定者向けフォロー/教育ツールを提供してきた実績がある。「内定者Welcomeパック」は、内定者管理ツール「COM+(コミュニケーション・プラス)」を中心に150講座もの豊富な学習コンテンツを組み合わせることができるプログラムだ。
利用度が高いのはやはり「PC(Office系ソフト)の基礎」「ビジネスマナー」「財務諸表、原価など会社に関わる数字の理解」といったベーシックなコース。同社では「ラーニングセンター」という受講生(内定者)をサポートする部署を設け、チュータと呼ばれる担任スタッフが学習の進捗状況管理や励まし、課題の添削などきめ細かい人的サービスを提供している。自発的に学習することが基本のeラーニングの場合、放っておくと半分以上の受講生が途中で挫折してしまうというデータもある。しかし、同社では平均修了率(最後までやり終えた率)が実に90%を超えており、ラーニングセンターによる的確なフォローの効果を証明している。
「当社の内定者教育プログラムは、eラーニングが注目された始めた2000年から実績があります。その間にご利用いただいた企業様の声を毎年反映させて改良を重ねており、資格取得などの分野ではeラーニングの方が合格率が2~3倍良いというデータも出ています」と語るのは同社・岸田社長。
また、企業の人事部門をサポートするための「カスタマーセンター」もあり、学習状況の分析報告などのほか、受講生の登録作業(メールアドレスや氏名の入力ほか)もアウトソーシングが可能。しかもこの費用は利用料金にすべて含まれており、少ないマンパワーで多数の内定者をフォローしていきたい人事担当者には実にありがたいサービスとなっている。

図9 ネットラーニングのアウトソースサービス
提供形態 eラーニング:ASPサービス
利用人数 1人から(上限なし)
※ポータルサイト「COM+」の利用は30人以上から
利用企業(2005年度) 約100社
代表的なメニュー ●ビジネスマナー
●会社の数字入門
●Officeシリーズ
●TOEIC TEST対策
●資格試験(IT系ほか)
※150コースから選択可能
※講座のオーダーメイドも対応
学習進捗管理 ラーニングセンターのチュータが担当
※チュータなしも選択可能:内定者管理ポータルあり
利用期間(時期目安) 5月以降:随時
価格(税込) ●Free Choice2(チュータ付2コース選択)49,900円/人
●Free Choice4(チュータなし4コース選択)12,600円/人
●ビジネス基礎養成パック 21,000円/人
ポータルサイト利用料 3,150円/人(人数割引あり)

ようこそ!学生諸君

内定者のマインドをビジネスモードに切り替える

PHP研究所の「通信教育入社前コース」は1994年にスタートした。「働くとは何か」といった根源的なテーマを通じて学生から社会人への意識の切り替えをはかり、同時に内定者の不安を取り除く…といった最もベーシックな内定者向けのフォロープログラムだ。
「通信教育としてスタートしてからは12年あまりですが、当社は内定学生向けの書籍などを1970年代から出版してきたという蓄積があります。いつの時代にも希望の会社に入れなかった人や、希望の職種につけなかった人はいるわけですよね。そういった学生たちのモチベーションをあげ、今内定している会社で頑張ってみようという意識を作り上げていきます。教材の完成度には自信を持っています」と同社通信教育出版部の萩原編集長。
全7コースのうち最も人気が高いのは、ビジネスマインドを養成する「ようこそ!学生諸君」。さらに近年は、即戦力を求める企業環境の影響もあり、自律型人材をつくる「めざせ!プロ社会人」や、PDCAの演習などを通じて入社後の研修に連動させることもできる「めざせ!ハイパフォーマー」も利用率が急速に高くなっているという。内定者フォローだけでなく「入社前教育」の観点で骨太な人材の育成に寄与することを目指しているのだ。
教材は、「ブックレット(冊子)」「eラーニング(Web)」「CD-ROM」「ビデオ」など様々なメディアに対応。学生の環境にあわせて選択できる。学習は冊子で行い、演習の添削だけをWebで行うといったハイブリッド型も可能。教材には「CES分析」(コンピュータによる個人の傾向診断)テストが付属しているのもあり、研修や配属のための客観的データとしても利用できる。また、受講生からの質問や理解度チェックの添削管理および受講状況の報告など、多忙な人事部をバックアップするための体制も十分に考えられている。

図10 PHP研究所の内定者向け教育ラインナップ例
提供形態
通信教育 テキスト、CD-ROM
eラーニング ASPサービス
利用人数 1人から(上限なし)
利用企業(2005年度) 約2000社
代表的なメニュー ●ようこそ!学生諸君
●めざせ!プロ社会人
●めざせ!ハイパフォーマー
●めざせ!スーパーエンジニア
●チャレンジ!ビジネスライフ
学習進捗管理 添削、サポートサービスあり
※各企業にて行うことも可能(eラーニングの場合は管理機能付)
利用期間(時期目安) 6月以降:随時 1コース2~3ヶ月 (入社時まで利用可能)
価格(税込) ようこそ!学生諸君(3ヶ月)16,380円
※コンピュータ診断、添削サービス含む
※他、1コース9,450円~各種(数量割引あり)

内定者Pack

ポータルサイトとベーシックな研修メニューが充実

株式会社プロシーズが提供する「内定者Pack」は、人事担当者と内定者のきめ細かいコミュニケーションを実現する高機能ポータルサイトに、各種のeラーニング研修コースを組み合わせたサービスだ。
基本となるコミュニケーションツールは、特別な設備やソフトが必要ないASPサービス。簡単に導入でき、人事担当者の負担を大幅に軽減することができる。内定者への一斉連絡やその既読/未読などを一括管理できる「お知らせ機能」、写真付の自己紹介を掲載できる「プロフィール機能」、研修や懇親会の出欠/予約を受け付けられる「スケジュール」、内定者同士でコミュニケーションをはかれる「掲示板」…など、必要な機能を網羅。また、ビジネスシーンに欠かせないタイピングについても、内定者同士で順位を競えるというゲーム感覚で楽しみながら練習できるプログラムを用意している。
研修コースは、「ビジネスマナー講座」「会社の数字入門」「個人情報保護講座」などのビジネス系、MS-Officeなど代表的なPCソフトの基礎を押さえたPC系、TOEIC対策を中心とした英語系など。他にもオプションでコンピュータ言語や資格取得向けの講座などの追加もできる。学習前と後を比較できるアセスメント管理や学習進捗管理機能も。
「当社のサービスは毎年ユーザー様の声を反映させて操作性を向上させています。マニュアルを見ずに操作できるのが特徴ですね。特にタイピングのトレーニングに対戦ゲームの感覚を取り入れたコンテンツは人気。学生のアクセス率も最も高くなっています。内定者フォローはもちろん、研修にも意欲的な企業様に多くご利用いただいています」と同社藤森マネージャー。コミュニケーションと研修のバランスがとれたサービスとなっている。

図11 内定者Packトップとタイピング機能イメージ
提供形態 eラーニング:ASPサービス(パソコン・携帯電話)
利用人数 5人から(上限なし)
利用企業(2005年度) 約40社
代表的なメニュー いずれもeラーニング講座
●ビジネス系6コース
●PC系コンテンツ6コース
●英語系コンテンツ4コース
●オプション追加可能(開発言語系、資格対策系など12コース他)
学習進捗管理 内定者管理ポータルを利用して各企業にて
利用期間(時期目安) 6月以降 申し込み後3営業日より
価格(税込) 初期費用 26,250円
コミュニケーションツール(ポータル)3,150円/人
eラーニング講座 1講座6,300円/人(6ヶ月)~
※追加オリジナルコンテンツなどはお問い合わせ下さい。

内定者教育ツール選定時の着目点

さて、ツールを選択する際のポイントだが、以下のような点を十分に考慮したい。

何を目的とするのか

学生に安心感を与えること、企業とのつながりを実感させることが主目的である場合から、入社後の戦力化をにらんだ新人研修の一環としての考え方まで目的の幅は広い。後者の比重が高い場合は、人材開発の担当者とも協議して判断していくことが必要になるだろう。

期間・予算・地域

期間、予算は当然考慮しなければならないが、最後の地域も重要。内定者が広範囲に散らばっているような場合は、eラーニングの活用を考えたい。比較的集まりやすい地域に固まっていれば、集合研修など顔の見える形のものがより効果的な場合も。

マンパワー

人事部のマンパワーも重要だ。自社のスタッフですべて管理できるのか、あるいはアウトソーシングのサービスを効果的に活用した方がよいのか。マンパワーがないのに自社ですべてをまかなおうとすると無理が生じ、内定者にかえって悪い印象を与える場合もあることを十分考えておかなくてはならない。

使いやすさ

ネット系のツールの場合、操作性の良し悪しは作業効率に直接影響してくる。営業の説明やサポートの体制などがしっかりしているかどうかもポイントになるだろう。

学生の負担

いかに内容が充実していても内定者が負担や苦痛に感じるようではこれも逆効果である。学生はゼミや卒論、あるいはクラブ活動の総仕上げなどで多忙な人もいる。アルバイトもしているだろうし、時期によっては友人たちとの卒業前の旅行などを計画している場合もあるだろう。
いずれにしても、毎年行っていく場合は、新入社員に必ずアンケートを取るなどして、好評だった点・不評だった点をそれぞれ振り返り、翌年の基礎データとして活用していきたい。

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企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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