<就職サイト5社に聞く> 26卒分析と学生動向
インターンシップの充実が学生の志望度を上げる
「学生目線」に立った採用活動が重要
株式会社マイナビ キャリアデザイン事業企画室 企画推進統括部 統括部長
大塚 亮氏

2026年卒の新卒採用市場や27卒の見通しなどについて、株式会社マイナビの大塚亮氏に話を聞いた。
学生のニーズに合わせた採用活動が重要
2026年卒の新卒採用の傾向についてお聞かせください。
昨年度に続き、「売り手市場」だったと言えるでしょう。一般的に売り手市場になると学生の動きが鈍くなると考えられがちですが、活動そのものは活発で、2026年卒学生のインターンシップ・仕事体験の参加率は85.3%、平均参加社数は平均5.2社と、いずれも過去最高水準に達しています。
一方で、大学3年生の3月以降のインターンシップへのエントリー社数は前年より3.1社減少し、平均8.0社になりました。これは今年に限ったことではなく、ここ数年見られる傾向です。
2026年卒の全体の傾向として、インターンシップへの応募数は増加していますが、学生が実際に参加したインターシップの数は微減しています。長期間のインターンシップでは、受け入れ側のマンパワーにも限りがあるため、「企業側が受け入れる学生の人数を絞った」ことも理由の一つだと考えられます。
また、学生の活動時期が早まっている点も特徴的です。大学2年生から、情報収集をはじめとしたキャリア形成活動を始める学生の割合が増加しています。
内定も早期に決まっている学生が多いですね。
大学3年生3月末時点での内々定保有率は54.6%で、前年比で4.7ポイント以上増加しています。大学3年生6月末時点では82.8%とさらに伸びており、早期から内々定を得ている学生が増えていることがわかります。
内々定を保有しながら活動を継続している学生の割合も、前年と比べて増えています。早い段階で内々定を獲得できるようになったからこそ、じっくりと吟味したいというニーズが高まっているのでしょう。当社の調査でも「就職活動を早く始めて、じっくりと就職先を決めたい」と回答した学生が51.7%を占めています。
企業側の傾向はいかがでしょうか。採用に成功した企業の特徴も教えてください。
採用に成功した企業は、単に応募者を集めることだけに注力するのではなく、インターンシップにおけるコンテンツの中身を充実させていました。特に、学生が実際の職場で業務に携わる「職場体験型」や、「特定の課題やテーマ」についてグループディスカッションやプレゼンテーションを行う「プロジェクト参加型」といった実務に深く関わるプログラムは、実際の業務をイメージでき、学生の志望度を高める上で大きな効果を発揮しています。
また、学生のニーズに合わせてインターンシップや面接においてオンラインと対面を併用したり、採用回数を削減したりするなど、学生の負担を減らす柔軟な対応も目立ちました。さらに、初任給の引き上げが一般化する中で、住宅手当や資格手当をはじめとした給与面以外の待遇を充実させることで、他社との差別化を図る企業も採用に成功する傾向にあります。
一方、採用に苦戦した企業には共通の課題が見られました。最も顕著なのが採用活動を行う人員の不足です。学生の多くがインターンシップに参加しているにもかかわらず、マンパワー不足を理由にインターンシップを実施できていない企業が約4割に上りました。
また、母集団形成に奔走するあまり、その後の内々定者フォローがおろそかになったケースも少なくありません。その結果、内々定を複数社保有した学生が慎重に企業を見定める中で、辞退率が高まる傾向にありました。このように、学生一人ひとりのキャリア意識やニーズに寄り添えなかった企業は、採用目標の達成が難しい現状に直面しています。

採用成功のカギは「就業体験」に
今後の採用活動を考える上で、2027年卒の学生の動きはどのような傾向にあるのでしょうか。
インターンシップなどのプログラムに参加する際に、「とりあえず参加する」のではなく、目的を持って参加する学生が増加しています。学生は、企業ごとに設定されたプログラムで「どのようなスキルが身につくか」「就職活動で有利に働くか」などを事前に確認し、自身の興味やキャリアプランに合ったものを選択する傾向にあります。
また、企業を選択する上で、社員とのコミュニケーションを非常に重視しています。インターンシップ・仕事体験で「話を聞いてみたい人」「一緒に働いてみたい人」を聞いたところ、「2~5年目以内の社員」と回答した学生が約7割。若手社員と話すことを通じて、自身のロールモデルを見つけ、キャリアプランを具体的にイメージしようとする学生が多く見られます。社員との接点を増やしたり、より多様な情報を得られる対面でのコミュニケーション機会を設けたりすることが、学生の志望度を高める上で重要な要素となっています。
そうした学生のニーズに応えるには、どのようなアプローチが有効でしょうか。
実務を経験できるプログラムを提供することは、学生の志望度を高めます。「どのようなプログラムを中心に参加したいか」を学生に調査したところ、単日で気軽に参加できる「オープン・カンパニー型(業界・企業による説明会・イベント)」との回答が最も多く、次いで「就業体験のあるプログラムを中心に参加していきたい」という回答が多く見られました。
当社が、企業の業務を体験できる学生向けイベント「体験型!インターンシップ&キャリアフェスタ」を実施したところ、非常に好評でした。企業からは「仕事の理解や魅力促進ができた」、学生からは「受け身ではなく、主体的に参加できた」という声が多く聞かれました。
採用から育成、そして活躍へ。データ活用で採用の精度を高める
今後の新卒採用市場を展望し、貴社が注力している取り組みについてお聞かせください。
当社は現在、タレントマネジメントシステム「タレントパレット」を提供する株式会社プラスアルファ・コンサルティングと、資本業務契約を締結しました。
具体的には、タレントマネジメントシステムに蓄積された社員のデータを採用活動に活用し、自社で活躍する人材の傾向を分析して、よりマッチング精度の高い採用を目指します。また、採用後もそのデータを活用し、社員それぞれに合わせた育成プログラムを提案するなど、一貫した支援体制を構築していく予定です。
これまでの新卒採用は、とにかく多くの学生を集める「母集団形成」に注力する傾向がありました。しかし、採用した学生が会社に定着しなければ、採用をする意味はありません。「企業にとって採用したい人材」と「学生に合った企業」という双方の視点からマッチングの精度を高めていくことが不可欠です。
今後、売り手市場である新卒採用市場は、単なる「就職」の場から、個人の「キャリア形成」を支援する場へと変容していくでしょう。企業が学生一人ひとりのキャリアに寄り添い、自社の事業を通じて彼らの成長をどのように支援できるのかを具体的に提示することが、採用成功への一歩となります。

社名 | 株式会社マイナビ
![]() |
---|---|
本社所在地 | 〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋1-1-1 |
事業内容 |
|
設立 | 1973年8月15日 |
代表者名 | 代表取締役 社長執行役員 土屋 芳明 |
URL | https://www.mynavi.jp/ |
- 参考になった0
- 共感できる0
- 実践したい0
- 考えさせられる0
- 理解しやすい0
無料会員登録
記事のオススメには『日本の人事部』への会員登録が必要です。