外国人の求職者を日本企業に紹介する難しさ
グローバル採用がトレンドの時代だが…… 対象が限られる、外国人の中途採用
日本企業でも外国人の採用が増えているという記事を、新聞などでよく目にするようになった。しかし、新卒採用が中心で、外国人の中途採用は積極的に行われていないのが実情ではないだろうか。外国人を優先的に採用するとしたら、海外拠点とのコミュニケーションを担当する「外国人枠」での募集か、一定のスキルを持った人材を各社が奪い合っているIT系エンジニアの募集に限られている印象が強い。
外国出身の第二新卒
「マーケティング関連の部門で、語学が必要な人材の募集はありませんか。実務経験は浅いのですが、ITの専門知識もあって意欲的な若手人材がいるのですが」
企業の採用担当者と会うたびに、私はこんな質問をしていた。念頭にあったのは、ある外資系ITベンチャー企業に勤務しているPさんというエンジニアだ。生まれも育ちも海外だが、日本が好きで、日本で働きたいと3年前に日本にやってきた外国人。日本好きというだけあって、日本語も日常会話程度なら問題ない。
「今回、転職したいと思われた理由は何でしょうか?」
Pさんが現在勤務している会社は、日本オフィスの社員が数名というベンチャー企業だ。おそらくもっと大きな会社に移りたいのだろうと思っていたのだが、Pさんの回答は意外なものだった。
「私はマーケティングを希望しています。特に興味があるのはスポーツのマーケティングですね。そのような仕事があれば、ぜひ紹介してください」
まだ20代のPさん。職務経歴書を見るとITのサポートエンジニアの経験のみで、マーケティング業務に携わったことはないようだ。しかしPさんは自信満々だ。
「大学でマーケティングを勉強したので専門的な知識はあります」
「なるほど……」
人材紹介会社では、外国人の登録もそう珍しいことではない。そのため、日本人とは少し違う彼らの考え方にも多少は慣れている。
日本と海外との違いでまず大きいのは、大学の位置づけだ。日本では、大学で専門的に勉強したからといって即戦力になると考える企業はほとんどない。特に文科系では皆無だろう。しかし、海外の大学は勉強に対する姿勢も厳しく、一流大学ともなれば卒業生を即戦力扱いで採用する企業も少なくない。Pさんのように大学で学んだことに自信を持っている人はかなり多い。
日本では控えめな姿勢がよいとされるが、海外では逆だ。実力はあっても「私などまだまだです」というのが日本流で、実務経験はなくても「できます」と言い切るのが海外流。この二十年ほどで日本人にも自分をアピールする姿勢がかなり広がってきたが、まったく経験がないことを「できます」と言える人はごく少数派だろう。
とはいえ、若手でバイリンガル、ITの専門知識があるPさん。日本人なら第二新卒の枠で可能性がありそうなスペックだ。そこで、何か良いチャンスはないかと私はいろいろな情報を探してみることにした。