外国人の求職者を日本企業に紹介する難しさ
グローバル採用がトレンドの時代だが…… 対象が限られる、外国人の中途採用
- 1
- 2
海外では働きたくない?
「この方は20代と若いですし、海外で働く気はないのでしょうか。海外の現地法人でよければマーケティング職で検討しますが、いかがですか」
何社かアプローチした中にはこんな話をくれた企業もあった。やはり外国人社員に期待するのは海外現地スタッフ、または海外拠点とのコミュニケーション役という企業が多い。いい話だと思ったが、Pさんに確認してみると海外には行きたくないという。
「日本で働くという夢が実現しているので、海外には行きたくありません」
話をよく聞くと、海外勤務の場合「現地採用」扱いになる可能性が高く、給与が安くなることも心配だという。確かにそれも重要だが、そもそもマーケティングの仕事は外国人に限らず募集が少ない職種だ。どうしてもマーケティングの職に就きたいなら、他の面で譲歩することも必要になってくるだろう。私はそのことを説明した。
「日本では若手のマーケティング担当が必要になった場合、自社の営業職の中から異動させることが多いんです。営業担当者なら商品や販路についてもよく理解していますからね。この場合、異動で空席になった営業を外部から募集するケースがよくあります」
「営業で入社して、その後マーケティングの仕事に就くチャンスはありますか?」
Pさんは、よほどマーケティングの仕事がしたいらしい。しかし、これについても残念な回答をしなくてはならなかった。
「営業は、未経験だとご紹介しても難しいでしょうね……」
若手や第二新卒で営業を採用する場合、わざわざ外国人を採用する企業はあまりないと言わざるを得ない。外国人であることが武器になる海外の現地法人や技術職以外のポジションでは、文化に気を使わなくてもいい日本人を採用したいと考えるのがほとんどではないだろうか。
「どうでしょう、今の仕事の経験を生かしてIT企業にエンジニアとして転職するという可能性を考えてみませんか? エンジニアなら、すぐにでも採用したいという企業はいくつもありますよ」
しかし、Pさんはその方向は考えていないという。
「IT関連なら知り合いの会社に転職できます。でも、今はそこに行く気はないですね。国内企業でマーケティングか、セールスマーケティングの仕事があったら紹介してください」
Pさんは時間がかかっても当初の希望を貫きたいのだという。
「わかりました。いい求人が見つかるまで、じっくり探しましょう」
グローバル採用が脚光を浴びてはいるが、中途採用では外国人が、語学や技術以外の分野で日本人と対等に採用される時代が来るのにはもう少し時間がかかりそうだ。Pさんを見送りながら私はそんなことを考えていた。
- 1
- 2