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人材採用“ウラ”“オモテ” 
企業・求職者・人材紹介会社の「転職」三角関係

世界不況で再就職を余儀なくされた人材

企業側にも理解してほしい

予期せぬ事情で再びの転職活動

米国に端を発する金融危機、それに続く世界不況で規模の大小を問わず多くの企業がリストラを余儀なくされている。人件費の高いベテラン社員を中心に退職者を募る企業もあれば、戦力となっていない層から削減を進める会社もある。経験豊富な人材は別の企業でも活躍の場を見つけられるが、異業種に転職して新たなキャリアの第一歩を踏み出したばかりの人材は思わぬ苦境に立たされている。

せっかく転職を成功させたのに

「先ほどお送りした人材の資料は、もうご覧いただけましたでしょうか…?」

私はG社の採用担当マネジャーに電話を入れた。書類選考の前にどうしても補足しておきたい情報があったからだ。

「ええ、さっきざっと拝見しました。前職でお勤めになった期間がずいぶん短いですね。業界もちょっと違うようですし…。いちおう募集部門の責任者と相談しますが、他の候補者と比較したとき不利になるかもしれないですね」

さすがは採用のスペシャリストだけあって、ほんの数分で候補者の問題点を見事に言い当てている。それだけに電話してよかった…と私は思った。

「実はお電話したのは、まさにその点についてお伝えしたいことがあったからなんです」

候補者であるSさんを前職の会社に紹介したのは、何を隠そうこの私だったのだ。Sさんは不動産の評価に関する仕事をずっと希望しており、そのための勉強も続けていた。そしてようやく念願がかなって不動産業界に転職したという経緯がある。

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「入社後は、頑張って仕事をされていたのですが、今回の金融危機で海外の本社から大規模なリストラの指示が出たそうなんです。実際、親会社では大きな事業部門も売却しています。外資系ということもあって、日本法人では最小限の事業を継続していくための人員を残して、多くの社員が退職したそうです…」

Sさんとしては、せっかく切り拓いたキャリアをこんなことで途切れさせたくはなかった。同業への転職を希望したのだが、業界全体が大きな打撃を受けていて新規採用の余裕がある企業はまったくない。また、Sさん自身もこれから実務経験を積んでいく段階であり、個別に企業に打診しても興味を示すところはなかったのである。

「なるほどねえ…」

G社のマネジャーは私の話を聞いて事情を飲み込んでくれたようだった。

もう同業はきっぱり諦めました

「分かりました。今お聞きした情報は、実際に選考を行なう部門のマネジャーにも伝えます。書類選考の結果は近日中にご連絡します」

私は、今回の話を要約して添付の推薦文に書いてあることも伝えた。採用担当者の中には意外と推薦文を読まない人も多い。人材紹介会社の推薦文には「良いこと」しか書いていないと思っているのかもしれない。そのため、私は重複を承知でわざわざ電話したのだった。

「Sさんの前々職でのキャリアは御社の業務と比較的近いものです。Sさん自身も、不動産業界に戻ることはもう考えていらっしゃらないそうです」

この最後の部分が非常に重要だった。私自身、Sさんが景気の回復後に再び不動産業界を目指そうと思っているのではないかと、気になっていたからだ。長年の夢をそう簡単にあきらめられるものではない気もする。ただ、その状態で紹介することは、G社に対して失礼になるのではないかと思った。数年間の腰掛け気分で入社されてはG社もたまらないだろう。

「もう不動産業界には戻りません。今回の件で懲りただけではないんです。私も決して若くないですし、数年後に景気が回復しても、私のようにキャリアがほとんどない人材には再度の転職は難しいと思います。実際、前回の転職活動で不動産業界に行けなかったら、その方向はもう諦めようと思っていたんですよ…」

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今回の金融危機は自然災害のようなものだから、もともと不動産業界に転職できなかったと思うしかないでしょう…とSさんは寂しそうに笑いながら言った。私も金融危機が起こることが分かっていたら、Sさんが希望した不動産業界への転職をサポートしなかっただろう。誰もここまで事態が悪化するとは思っていなかったのだ。

数日後、G社から「Sさんを面接します」という連絡をもらった時には本当にほっとした。しかし、再就職を成功させ、Sさんが安定的な職場を得られるまでは安心できないのだ。私は気を引き締めながら、Sさんに面接が決まったことを連絡するため、電話を取った。



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