評価されづらい?「大学院卒」の転職
海外との違いが大きい
中国の総合家電メーカー「Xiaomi」や、アメリカ発の自動車配車サービス「Uber」、民泊サービス「Airbnb」など、近年、さまざまなビジネスが誕生し、急成長を続けている。これらの市場評価額10億ドル以上の未上場企業は「ユニコーン企業」と呼ばれ、世界的にも大きな注目を集める。では、なぜ日本には海外と比べて、ユニコーン企業が少ないのだろうか。そこにはさまざまな要因が考えられるが、「大学院などで高度な教育を受けた人が評価されづらい」日本の採用市場も、理由の一つだろう。
「大学院卒」は転職市場で評価されない?
「退職して大学院で学びなおすことは、転職の際に有利になるのでしょうか。もし評価されるのなら、『急がば回れ』で、それもいいかと思っているのですが」
転職相談のときにこういった質問を受けることがある。勉強熱心でまじめな人に多いようだ。同じように「留学を考えている」「資格取得を検討している」といった相談をされることもあるが、人材紹介会社のキャリアアドバイザーとしては、そのどれにも積極的には賛成できないと回答している。
なぜなら、中途採用において学位や留学経験、資格などを重視する企業はほとんどなく、参考にする程度だからだ。時間やお金をかけても、それに見合うだけのメリットはまず得られない。純粋に学びたい気持ちがあるなら話は別だが、「転職のために」というのならやめておいた方がいい、というアドバイスをせざるをえない。
中でももっとも厳しいと思われるのが、博士・修士などの学位取得だろう。理工系の技術職に関しては修士の方が有利なケースもあるが、それ以外ではプラスに働くどころか、マイナス要因になってしまうことさえある。中途採用に限らず、新卒採用であっても、大学院で学んだ人に対して「年齢のわりに経験が少ない」という見方をする企業は少なくない。
以下のような評価は、いずれもかつて企業の採用担当から聞いたものだ。
「勉強ばかりしてきて社会や現実を知らない」
「専門外の仕事をしたがらない」
「プライドが高くて使いにくそうだ」
「一種のモラトリアムで大学院に進んだのでは?」
ほとんど偏見に近いようなものもあるが、基本的には日本の企業が「学校の勉強は、実際の仕事には直接使えない」と考えていることからくるものだろう。よりビジネスに直結した分野を学ぶMBA(経営学修士)でも、日本企業では優遇されることが少ないようだ。
「なるほど。そうなんですか」
こういった状況を説明すると、ほとんどの人が納得してくれる。ただ、欧米の転職事情などを知っている人には不思議がられることもある。