未来の職業地図はどうなる?人材紹介もひとごととはいえないAIに代替されない仕事を希望する人たち
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人材紹介もAIがやるようになる?
「なるほど。確かに未来のことを今から心配しても仕方ないですね」
リラックスした雑談モードの場合は、さらに余談の情報を付け加えることもある。
「AIには仕事を奪われる可能性と同時に、仕事の幅を広げてくれる側面もあるそうですよ」
現在、「自動翻訳」の技術が急速に進歩している。すでにWEBブラウザでは画面の外国語を即座に翻訳する機能がすでに当たり前だし、2020年の東京オリンピックでは、ボランティア全員に自動翻訳機を持たせて外国人観光客に対応するという計画も現実味を帯びているという。
「外資系企業をはじめとして、社内公用語が英語という会社がありますよね。私なんか英会話が苦手なので、そういう会社には絶対勤務できないと思っていました。でも、AIを使った高性能な自動翻訳機があれば、ひょっとしたら私も外資系企業で働けるようになるかもしれない。そういう夢も同時にあるんじゃないでしょうか」
そう言うとAさんも、「そうですね、そう考えるとけっこう楽しいですね」と笑顔を見せてくれた。
しかし、技術の進歩によって仕事がなくなるという現象は今に始まったことではない。私自身もそれを目の当たりにした経験がある。
私もそうだが、人材紹介をはじめ人材サービス業界には、求人広告業界の出身者が多い。1980年代から90年代にかけて、求人情報メディアの主役は「雑誌」だった。そこでは求人広告の原稿をつくり、それを写植や製版といった工程を経て印刷するための、数多くの技術者たちが働いていた。しかし、その業界はパソコンを使ったDTP(デスクトップ・パブリッシング)の普及でわずか数年で消えてしまった。また、2000年代になると、雑誌という紙媒体そのものがインターネットに置き換わってしまった。そこでも印刷関係の多くの会社が淘汰されていったのだ。そうした変化はあっという間に起こり、業界全体を劇的に変えていった。求人広告を扱っていた人材が、今では人材紹介業で働いているケースが少なくないのはそのせいでもある。
そう考えると、「人材を仕事をマッチングする」という人材紹介の仕事が、やがてはAIに置き換わってしまう可能性も大いにある。実際に、アメリカでは人間よりもAIの方が「良いマッチング」をしたという実験結果がすでに出ているという。
Aさんに「AIを導入したり、管理したりする立場になれたら強い」という話をしたわけだが、それはそのまま今の自分自身にもいえることだなと、私はその日の転職相談の後、ぼんやりと考えたのだった。
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