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邂逅がキャリアを拓く【第4回】
ビジネスに必須な想像力はお能で養う

株式会社ブレインパッド 常務執行役員 CHRO

西田 政之氏

株式会社ブレインパッド 常務執行役員 CHRO

時代の変化とともに人事に関する課題が増えるなか、自身の学びやキャリアについて想いを巡らせる人事パーソンも多いのではないでしょうか。長年にわたり人事の要職を務めてきたブレインパッドの西田政之氏は、これまでにさまざまな「邂逅」があり、それらが今の自分をつくってきたと言います。偶然のめぐり逢いや思いがけない出逢いから何を学び、どう行動すべきなのか……。西田氏が人事パーソンに必要な学びについて語ります。

ビジネスには想像力・妄想力が必要であり、それを養うための一つの手法として、能楽(お能)をおすすめします。

私がお能に出会ったのは、あるエグゼクティブ勉強会に招かれたときのこと。毎回、一流講師による至極の講義を受けていたのですが、あるとき、観世流シテ方能楽師の武田文志さんが登壇されたのです。受講前に武田さんの個人リサイタルを観賞したのが、お能との初めての出会いでした。それはまさに、直観的に私の感性を揺さぶりました。邂逅がまた、私の新たな世界を広げてくれたのです。

お能とは?

お能の舞台は、一辺約6メートルの正方形。総ひのき造りで、四隅は「シテ柱」「目付柱」「笛柱」「脇柱」という柱に囲まれています。加えて、舞台には役者が登・退場するための「橋掛」という通路が付いています。「橋掛」は現実とあの世をつなぐ橋でもあり、舞台に立体感を与える役割も果たしています。また、舞台を正面の観客席側から見ると、舞台後方に大きな松の絵が目に飛び込んできます。これは「鏡板」といって、春日明神の化身である「影向(ようごう)の松」が観客席の側にあり、それを鏡のように映したものであるという意味があります。

つまり、お能は観客ではなく、神に向かって演じるものというのが一般的な解釈になります。お能の舞台は、限られた演目で使用される必要最小限の作物(つくりもの)と言われる大道具を除き、情景を描くものは一切なく、非常にシンプルなことが特徴です。

お能の舞台

次に、お能に登場する役者ですが、主役である「シテ」とシテの相手役ともいえる「ワキ」があります。あの世の者を演じるシテは能面を掛けますが、ワキは現実に生きている成人男子であり、面を掛けることはありません。また、役者は演じる中で扇など最低限の小道具しか使いません。お能の舞台構成としては、シテを中心とする役者に、笛、小鼓、大鼓、太鼓からなるお囃子(はやし)と、地謡(じうたい)という声楽が加わることで物語が展開されていきます。

余談ですが、同じ能舞台で演じられる狂言では、主役である「シテ」の呼び名は変わりませんが、相手役は「アド」と言います。今、一世を風靡している歌手のAdoさんの名前の由来が、狂言の「アド」から来ているのは有名な話ですね。

これ以上の説明は省きますが、ここで申し上げたいことは、お能が無駄を極限まで削った簡素な芸能であるということです。これは、歌舞伎と対比すると一目瞭然です。

歌舞伎は派手な舞台装置や演出のもとで、役者自身も派手な化粧やきらびやかな衣装を身にまとい、大小さまざまな道具を駆使して縦横無尽な動きを展開します。一方、お能は艶やかではあるものの重い装束と能面を着け、重心を低くして体の軸がぶれないように、上下運動の少ないゆっくりとした動きを特徴としており、一切の無駄な動きがありません。あえて表現するなら、“目に魅せる”のが歌舞伎であるのに対して、“目に見えないものを想像させる”のがお能であり、これが両者の根源的な違いといえます。

お能に登場する役者

信長や秀吉、家康が愛したお能

お能は600年以上続いている日本最古の伝統芸能ですが、その歴史の中で、秀吉や家康のような希代の天下人はもとより、多くのリーダーたちがのめり込んだという事実があります。

家康はお能を「武家式楽」(公儀の儀式に用いる音楽・舞踏)として定めました。身分とは切り離した礼儀作法にはじまり、心身を鍛える芸能として、武士の教養を高める人財育成手段としたのです。

なぜお能はそれほどまでに、名立たるリーダーたちを魅了してきたのでしょうか。私は、五つのポイントがあると考えます。

一つ目は、美的表現の深さです。お能は繊細かつ洗練された芸術形式であり、その美的表現は見る者に深い感銘を与えます。

二つ目は、物語性と象徴性です。お能の現行演目は250ほどあると言われていますが、その中には神様を主人公として世の中の平和や安全を祝福するものもあれば、平安時代末期に活躍した平家や源氏の武士たちの修羅の苦しみや悲哀を取り上げたものなどもあります。つまり、権力や富、人間の欲望など、リーダーたちが直面する本質的なテーマを反映しているのです。

三つ目は、社会的地位の象徴です。歴史的にお能を楽しむことは、高い社会的地位や教養の象徴でした。特に秀吉などは出生の負い目から、お能を通じて自らの地位や教養を示したいという思いが強かったのではないかと想像できます。

四つ目は、静止性と瞑想的な要素です。お能は静寂な雰囲気と瞑想的な要素で知られています。これは、普段の喧騒から離れて精神的な平穏を求めるリーダーたちにとって、魅力的だったのかもしれません。科学的にもお能の謡やお囃子からはクラシック音楽と同様に、脳をリラックスさせるα波が出ていることが知られています。

五つ目は、今回のテーマである想像力、妄想力を鍛えられるからではないかということです。想像力や妄想力は人間が唯一保持する特殊能力であり、AIには代替できません。全ての発明は想像や妄想から始まります。逆に言うと、想像・妄想できないものは発明できません。

前述の通り、お能には一部を除いて大掛かりな舞台装置はありません。照る月も、空を飛ぶ鳥も、虫の鳴き声も役者のわずかな動きによって表現されます。その動きを見て、謡や囃子に耳を傾けることで、観客はそこに月の明かりや虫の音を聞くのです。

どんなに役者の型が見事でも、謡や囃子が素晴らしくても、観客が想像力・妄想力を発揮しなければ情景は浮かんではきません。美しい装束や見るものによって表情を変える能面、切れのある所作を観賞し、音楽に身を委ね、自分の感性に正直になって味わい尽くすのがお能の醍醐味です。

その意味で、お能は究極のバーチャルリアリティと言えるかもしれません。希代のリーダーたちは、この行為自体が新たな発想につながることを直感的に理解していたのでしょう。

信長や秀吉、家康が愛したお能

日本にもあった帝王学

お能を室町時代に大成させたのが世阿弥(1363年〜1443年)です。歴史の授業では、観阿弥と世阿弥を対にして暗記したのではないでしょうか。ご承知の通り、観阿弥は世阿弥のお父さんです。

世阿弥は生涯に約20もの能楽論を書き遺しましたが、その初期に書かれたのが「風姿花伝」です。「風姿花伝」は、世阿弥が父から受け継いだ能の奥義を子孫に伝えるために書いたもので、秘伝として代々伝えられてきました。

「風姿花伝」は、能役者にとってのみ役立つ演技論や、視野の狭い芸能論にとどまらず、芸能という市場をどう勝ち抜いていくかを語っています。「序」から始まり、七つのパートから成り立っていて、能役者の子供から老人に至るまでの人生の各ステージの生き方や、芸能という安定しない世界に生きる者にとって何が必要かを解いた教訓が記されています。つまり、「風姿花伝」は戦略論でもあるのです。そのため、多くの著名な経営者が座右の書にあげています。

世阿弥は、お能においてイノベーションを起こしたことでも知られています。それは、「複式無幻能」と呼ばれるものです。主に相手役のワキ(大半は僧)の見る夢が舞台上で演じられる展開を「夢幻能」といいます。「複式」とは、物語が前半と後半の二つにわかれていて、前半に仮の姿(老人や女性など)で登場した人物(シテ)が、後半には本体(本性)として現れるという2段構成のことです。世阿弥が発明したこの「複式夢幻能」により、あらゆる物語がお能で表現可能になりました。世阿弥は天才劇作家だったわけです。

また、誰もが知っている「初心忘るべからず」という格言も、世阿弥の言葉です。「若い頃の気持ちに戻って」という意味のみだと理解されがちですが、一方で「今まで体験したことのない新しい事態や試練に遭遇したとき、あらためて真摯で謙虚な心をもってそれを乗り越えよう」というのがより深く意味するところです。そのほかにも「秘すれば花」「離見の見」など、有名な格言がたくさんあります。正に世阿弥は、和製哲学者と言って過言ではないでしょう。

このように、お能はイノベーションを起こすための起点である想像力・妄想力を鍛える芸能です。また、「風姿花伝」に象徴されるように、お能の世界で生き抜くための教えは、私たちが生きていく上でも有益な教えとして、その価値が認識され、長い間守り抜かれてきたものと言えます。

VUCAの時代となり、これまで盲目的に信じてきた土台が覆される世の中になった今、哲学やお能のように、物事の本質を見極め、人が持つ本能や五感を研ぎ澄ますことに回帰することこそ、明日への光明を導き出すことにつながるのかもしれません。

西田 政之氏
西田 政之氏
株式会社ブレインパッド 常務執行役員 CHRO

にしだ・まさゆき/1987年に金融分野からキャリアをスタート。1993年米国社費留学を経て、内外の投資会社でファンドマネージャー、金融法人営業、事業開発担当ディレクターなどを経験。2004年に人事コンサルティング会社マーサーへ転じたのを機に、人事・経営分野へキャリアを転換。2006年に同社取締役クライアントサービス代表を経て、2013年同社取締役COOに就任。その後、2015年にライフネット生命保険株式会社へ移籍し、同社取締役副社長兼CHROに就任。2021年6月に株式会社カインズ執行役員CHRO(最高人事責任者)兼 CAINZアカデミア学長に就任。2023年7月より現職。日本証券アナリスト協会検定会員、MBTI認定ユーザー、幕別町森林組合員。日本CHRO協会 理事、日本アンガーマネジメント協会 顧問も務める。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「HRペディア「人事辞典」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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