日本企業の課題を解決する特効薬
多様な人材が活躍する時代に欠かせない
「組織開発」の学び方と実践方法
立教大学 経営学部 教授
中原 淳さん
組織開発とは、組織をworkさせるための意図的な働きかけ
年々、組織開発への注目度が高まっているように感じますが、中原先生はこの状況をどのように捉えていらっしゃいますか。
日本は今、大きな岐路に立っています。先進国でも類を見ない、歴史上最大規模の人口減少に相対し、事業継続が困難に陥るほどの人材不足がさまざまな現場で起こっています。しかもこれは一過性のものではなく、これから数十年にわたって日本が直面する、いわば国難です。そのため多様な働き方を許容し、子育て中の人や介護をしながら働く人、定年後も働きたい人、外国人などの労働参加を促していく必要があります。職場の雇用形態や雇用条件、労働時間、働き方の多様性はさらに加速していくでしょう。
しかし一方で、多様性は「遠心力」でもあります。多様性が行きすぎれば、メンバーがバラバラになり、組織やチームが空中分解を起こしてしまう。しかも以前のように、年中一緒にいて「同じ釜の飯を食う」という仲間ではありません。年齢も性別も、労働観やキャリア観も異なるメンバーが集まって、スピーディーに成果を出していかなければならない。だからこそ、「遠心力」とは反対の「求心力」を持った組織やチームをつくる手段としての組織開発が求められているのだと思います。
書籍では「組織開発とは、組織をworkさせるための意図的な働きかけである」と述べていらっしゃいますね。
「組織をworkさせる」というのは、バラバラのメンバーが組織やチームとして体を成し、うまく動くこと。組織開発とは、人を集めただけでは「うまく動かない」組織を「うまく動くようにする」ための意図的な働きかけというわけです。
「意図的な働きかけとは何か」については、組織開発の3ステップとしてまとめました。自分のチームや組織の課題を可視化する「見える化」が1ステップ。見える化した組織の課題に、チームメンバー全員で向き合い、問題の解決を目指して話し合う「ガチ対話」が2ステップ。そのうえでこれから自分たちのチームや組織をどうしていくのか、当事者たちが自分事として決めていく「未来づくり」が3ステップです。この三つのステップをまわすことが組織開発の本質といえます。実はこの3ステップは、組織開発の発展の歴史上、生まれてきたものです。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。