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キーパーソンが語る“人と組織”

いい「人事支援サービス」は ここを見て選べ!

現役人事部・人事支援サービス会社に聞く

企業が人事に関する様々な仕事を外部サービスに委託する流れは、今後、強まることはあっても弱まることはないでしょう。世の中のビジネス全般がまだまだ下向き傾向にある中で、人事支援サービスが活況を呈しているのは、それが雇用環境の変化などに伴う企業のニーズに応えているからかもしれません。ただ、あらゆる分野で数多くのサービスが登場してきたために、いったいどれを選べばいいのか見当がつかないという人事担当者もいるはずです。年功序列制だった企業が成果主義を機軸にした人事制度改革のプロジェクトを展開するときなど、大きなお金が動きますし、企業は役に立たないコンサルティング会社にそれをうっかり頼んだらかなりの痛手を受けることになります。自社の人事課題を外部サービスの力を借りて解決しようというとき、そのサービス会社を選択する基本的なポイントとは何でしょうか? 人事支援サービスの近未来を予想しつつ、リポートします。


大金を注ぎ込んで失敗した 「成果主義」による人事改革

「数千万円を投じたあの人事制度改革プロジェクトは、いったい何だったのか……」

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現在、コンタクトレンズをはじめとするアイケア・カンパニーのボシュロム・ジャパン株式会社で人事部・副部長を務める野口正明さんには、教訓としたい過去があります。1990年代半ば、成果主義を機軸にした人事制度改革が大流行りで、野口さんも当時、在籍した大手日本企業の「人事制度改革プロジェクト」の一員として、外資系コンサルティング会社と組んで、新制度の導入を行いました。しかし、結果は、期待したとおりにはなりませんでした。 「成果主義のコンセプトは、一般論として決して間違いがなかったと思います。ただし、わが社としてどのような人材マネジメントを行いたいのか、現状から見て継承すべき良い部分は何か、変えるべき部分は何か。わが社が目指す方向性と新しいコンセプトをどう適合させていくのか。コンサルティングをお願いする前に、まずこういった点についてトップマネジメントを巻き込んで、社内で十分に吟味して合意しておくべきでした」

当時、人事の仕事を始めたばかりで経験も浅かった野口さんですが、いま振り返ると、反省する点はいくつも浮かび上がってきます。 似たような失敗をしている企業は、ほかにもあるだろうと野口さんは言います。

「今、巷では盛んに『成果主義の失敗』ということが喧伝されていますね。さもありなんと思います。従来、人事部の仕事は、いかに間違いなく既存の人事制度を運用するか、という管理的な要素がとても強かった。ところが、バブル崩壊後は経営環境が急激に悪化し、人材マネジメントの変革が経営の大きな関心事となり、人事部の大きな役割としてクローズアップされてきました。しかし、従来からなぜこのような制度が存在するのかということを本質的なところで考える習慣があまりなかったとしたら……」 その行き着く先は「では、外部のコンサルティング会社に頼ろう」ということになると野口さんは指摘します。 「流行りで導入した成果主義が成功するとは思えません」

これまで自社で行っていた業務を アウトソースするケースが増えた

コンサルティング会社に限らず、最近では、人事関連のさまざまなサービスが登場しています。世の中のビジネス全般がまだまだ下向き傾向にある中で、人事関連ビジネスが全体的に活況を呈しているのは、環境変化に伴う企業のニーズに応えているからかもしれません。

いったい、どのようなサービスがあるのでしょうか。人事部の仕事と照らし合わせながら整理してみると、次のようになります。

まず、「人材の採用」に関すること。この分野には、採用代行サービスや人材のマッチングを行う人材紹介・派遣サービス、採用媒体を作成するなどの採用支援サービスなどがあります。リストラの嵐が吹き荒れたころに登場した再就職支援サービスも挙げられます。

「人材の育成・開発」の面では、教育研修会社の社員研修プログラム。社会人マナーを身につける内容から、業務に特化した専門知識を習得するもの、課長や部長のための階層別研修、リーダー育成の研修など、多様な研修サービス会社が多様なプログラムを提供しています。また、キャリアカウンセリングやコーチングといったサービスも、人を育てていくために必要とされています。

「人材の評価・処遇」も人事に必須の仕事。この面ではコンサルティング会社が、評価基準を設計したり組織風土を診断したりすることで人事部をサポートしています。さらには企業の根幹となる「人事戦略」を、経営改革の一環としてコンサルティング会社が支援する場合もあります。

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「給与計算」「勤務管理」「福利厚生」といった諸業務も、人事部にとっては重要な仕事です。この部分では、業務を一括して請け負うアウトソーシングサービスがあります。

「人事に関するさまざまな仕事を、外部サービスに委託・連係する流れは、今後、強まることはあっても弱まることはないでしょう」

最近の人事サービスの利用状況について話すのは、企業事例が豊富な人材マネジメント専門誌『人材教育』(JMAM人材教育)の副編集長・上本洋子さん。「5~6年前から始まった人事制度改革の大きな波が現在ほぼ終息し、大企業では、従来自社で行っていた諸業務を外部にアウトソースするか、システムを導入して自動化する企業が増えている」と言います。

そのため、「出退勤の管理や、社内人材を活用するための情報共有のシステムなど、ITインフラを構築するビジネスも需要が高まっている」と上本さんは見ています。

新たな市場が生まれつつある 「ポスト成果主義」のサービス

さらに、「最近の顕著な傾向を言葉で表すなら」と上本さんが挙げたキーワードは「ポスト成果主義」。最近、上本さんは、ある流通業の人事担当者と会ったところ、
「いやあ、もう職場はボロボロなんだよ。成果主義を導入した結果、社員たちからは恨まれる。なのに、オレたちの仕事量は増える一方。いったいどうすればいいんだ」 と、疲弊した表情を浮かべていたと言います。

「同じような声を、最近あちこちの企業で聞きます。制度の設計に始まり、社員への説明や評価者研修、評価面談の設定、部門間の調整など、業務が複雑・多岐にわたり、運用の悩みも増えています。しかし制度改革の効果は、はっきりと測りづらい。成果主義を導入したものの、現場社員の理解が得られなければ、(人事部は)経営側と社員側の狭間で調整に苦労する。自社に合わない制度を導入し、うまく機能させることができなかったひずみが、今になって現れているのでしょう」

成果や効率を重視して、リストラなどを推し進めていった結果、人に対するケアが薄くなってしまった職場では、コミュニケーションがなく活気も減退。この状態に多くの企業が危機感を抱いており、「アフター成果主義サービスとも言うべき市場が生まれている」と上本さんは言います。

たとえば、アフター成果主義サービスとはどんなことかというと、「やる気を失った社員のモチベーションを高めたり、上司や部下と円滑なコミュニケーションを図ったり、現場主導で職場を改革していったりする動きを支援する」サービスです。

「現在、多くの企業ではリストラがやっと一段落したところ。人を育てるゆとりも、そろそろ生まれてくると思います。そうすれば、キャリア開発や教育研修の需要は増えていくはずです。これからは、単なる仕組みやツールを導入するだけでなく、どういう人材を育て、そのうえで仕組みをどう運用していくか、トータルに提案していくサービスが伸びていくのではないでしょうか」

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たとえば教育研修なら、ある決まったテーマを教えるのではなく、社員の能力や多様性を引き出していくようなメソッドを有する教育会社が伸びていくのではないかと上本さんは考えています。

さらに続けて「短期間であれだけ急拡大したビジネスもめずらしい」と挙げるのは、福利厚生のアウトソーシングサービスです。中でも、この5~6年で一気に成長した会社もあると言います。その一つが東京・新宿区の株式会社ベネフィット・ワンです。
「宝の持ち腐れ状態で各企業が抱えていた保養所を会員全員が共有できるようにしたことで、企業はコスト削減ができ社員は選択肢が増えた」と上本さんは言います。

「カフェテリアプラン」から 「トータル・コンペンセーション」へ

話に上がったベネフィット・ワンは96年に法定外福利厚生のアウトソーシングサービス提供会社として発足。2000年に約9億円だった売上高を今年はその7倍近い約61億円に伸ばして、9月にはジャスダック市場にも上場しています。
急成長の背景は「終身雇用体制の崩壊によって、多くの企業が賃金体制や福利厚生制度の見直し、コスト削減を強いられたこと」にあると代表取締役社長の白石徳生さんは言います。
「コストや手間は抑えつつも従業員の希望に応えられるのが弊社のサービス。そこが、今の企業に支持されたのだと思います」

白石さんによれば、ここ1~2年は、同社が98年から展開している「カフェテリアプラン」を導入する大企業が急増しているそうです。カフェテリアプランとは、アメリカなどで広く普及している選択型の福利厚生制度のことで、従業員は自分のライフスタイルに合わせて福利厚生メニューを自由に選ぶことができます。

「カフェテリアプランは、毎年決まった予算を従業員に付与する仕組みなので、法定外福利厚生費のコスト・コントロールが可能です。企業規模が大きいほどメリットがあるため、導入する企業が増えています」

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でも、本当にコスト・コントロールを考えるなら、法定外福利厚生費だけでなく、年金や給与、ボーナス、退職金なども加えた人件費すべてをトータルに捉えていく必要がある。そう考える白石さんは「従業員の給与や福利厚生費全てをまとめて管理する『トータル・コンペンセーション』(総額報酬管理)の考えを提唱し、企業に新しい仕組みとして提案していきたい」と語ります。

「ライフ・アンド・ワークバランスという考えがあるように、仕事で良い成果を出すには、私生活の充実も必要です。そのため、企業の福利厚生制度は決してなくなることはありません。コストをかけずに、最も効果的な制度を提供することが、企業の生産性の向上にもつながります」
コストは抑えながらも社員の生活を豊かに充実させていく。そんなサービスが企業を伸ばしていくのではないか、と白石さんは考えています。

まさに企業にしてみれば、自社の成長を促してくれるような質の高いサービスを受けたいところです。新しい人事関連サービスが次々と生まれ、時代とともに内容も変化する中で、ではサービス会社をどのように見分けていけばいいのでしょうか?

ニーズや課題をきちんと受け止めて パートナーシップの構築ができるか

冒頭に登場したボシュロム・ジャパンの野口さんは、失敗も踏まえた経験則から、人事サービス会社の選び方のポリシーをはっきりと持っています。
「確かに、人事関連サービスにはさまざまな分野があります。でも、選ぶ基準において、どの分野であろうと本質的な違いはありません」

その本質とは何なのか。野口さんは「人事サービス会社がこちらのニーズや課題を十分に把握したうえで、その会社の専門性・独自性を生かした価値を提供しようとしているかどうかに尽きる」と話します。 「要はパートナーシップを構築できそうな会社かどうかということですね」

人材の採用から教育・育成、活用・評価、リテンションまでを幅広く任されている野口さんは、人材紹介会社とも数多くつきあってきました。さまざまな人材紹介会社からの売込みの電話もひっきりなしにかかってきます。担当者は開口一番、だいたい次のように切り出すそうです。
「○○職のベテランをご紹介できますよ」
「当社では、御社の○○職に最適な人材がいます」

電話口のそんな声に、野口さんはうんざりします。こちらのニーズも聞かずに、どうして「最適な人材」など紹介できるのだろうか。このようなアプローチをしてくる会社とは、野口さんは「基本的につきあわない」と言います。
「どのような分野でも、私が初めてサービス会社の担当者とお会いするときは、当社の現状や課題について必ず時間をかけて説明しています」
このとき、担当者が本当にニーズを理解してくれれば、その解決策となるツールやサービスを提案してくれる。ニーズを理解していなければ、こちらの現状に関係なく自社のサービスを一方的に押しつけてくる。「ミーティングにおける話の流れで、だいたい見当はつく」と野口さんは言います。

少し前までは成果主義がもてはやされ、最近はその反動が起きているように、人事関連サービスの内容も世の風潮とともに変化しています。いわばトレンドのような動きをどう判断すればいいのでしょうか。

これについても野口さんは「人材マネジメントの根幹の部分がそう変化しているとは思いません」。
「たとえば、成果主義はダメだという論調があるけれど、そのコンセプトが間違っているわけではなく、社員の腹に落ちるように導入できなかったことが問題なのだと私は思っています。自社のビジョンやポリシーを押さえたうえで、何が必要でどう運用していくかを人事担当者がきちんと把握していれば、外部に振り回されることはないはずです」
だから、「自分の会社のビジョンやポリシーを押さえていない人事の担当者が外部のサービス会社とつきあうと、ただ食いものにされるだけ」と野口さんは言います。

先に登場した上本さんも同様な見方をしています。
「企業が目指す方向性に合致しつつも、現場に受け入れられるサービスを選び、それをどう運用していくかをサービス会社とともに考えていく力が、これからの人事にはより必要になると思います」

野口 正明さん Photo

ボシュロム・ジャパン人事部副部長

野口 正明さん

人事サービス会社の選び方は「こちらのニーズや課題を十分に把握したうえで、その会社の専門性・独自性を生かした価値を提供しようとしているかどうかに尽きる」と強調します。

以下、失敗しないポイントを5つ挙げてもらいました。(表参照)


「人事サービス」選びで 失敗しない5つのポイント

  1. 専門領域と考え方
    高度な専門領域を持ち、 その会社独自のポリシーや特色はしっかりしているか
  2. 担当者のレベル
    こちらの課題やニーズをきちんと受け止めて、 自社サービスを提供しようとしているか
  3. サービスの質
    提供されるサービスやツールは、 カスタマイズも含めて、こちらの要望に合致する内容か
  4. コストパフォーマンス
    サービス内容はコストに見合うものか。 コストにかなう効果を発揮するのか
  5. スピード
    こちらの要求するスピードでサービス提供が可能か

(取材・文=笠井有紀子/ジャーナリスト)


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