機能する目標管理制度--その実態と効果的な運用方法を探る
成果主義の広がりとともに、目標管理制度の導入が高まっています。しかし一方で、運用に課題を持っている企業は多いようです。そこで、2006年3月に『労政時報』が行った「目標管理制度の運用に関する実態調査」から、目標管理制度の実態、円滑な運用に向けた施策の実施状況などを探りました。
1000人以上の企業では9割以上が制度あり
まずは、目標管理制度の導入状況などの実態、制度の基本的枠組みに関する傾向を概観します。調査結果の中から導入状況、導入時期、達成度評価の反映項目、制度の見直し状況について取り上げます。
図表(1)をご覧ください。今回の集計対象となった150社の中では、79.3%と約8割が「制度あり」としており、「制度なし」(20.0%)を大きく上回りました。(なお、『労政時報』が04年に実施した「人事労務管理諸制度実施状況調査」における導入率は、260社中77.3%)
企業規模別では、規模が大きいほど「制度あり」の割合が高く、1000人以上では9割を超える(92.0%)一方、300人未満では67.3%と7割を下回っています。
導入時期については、「96~00年」(42.3%)、「01年以降」(39.4%)がそれぞれ4割前後を占めており、8割超が96年以降の約10年間で制度を導入したことになります。以下、「90年以前」が10.6%、「91年~95年」が7.7%となっています。
次に、設定した目標の達成評価について、各種処遇のほか、具体的にどのような項目へ反映させているかについても尋ねています。各割合とも、一般社員・管理職で大きな差はなく、「賞与」が8割超で最も多くなっています。これに「賃金改定」(約7割)、「昇進・昇格」(65%弱)が半数以上で続き、以下「人材育成」(30%超)、「異動・配置」(20%弱)などとなっています。
図表(2)をご覧ください。目標管理制度を運用する上でさまざまな問題が発生しますが、問題を解決するため、制度を見直しているか、あるいは今後見直す予定はあるか等については(複数回答)、過半数(56.9%)が今後「見直す予定」ありとしています。「すでに見直した」は18.1%で、「見直す予定はない」は21.6%となっています。
まずは制度実施上の勘所やルールを周知・確認
図表(3)をご覧ください。目標管理制度を適正かつ円滑に運用し、その実効性を高めるために有効と思われる施策について、各社の実施状況やその効果、今後の方向性を聞いています。
「実施した」割合が最も高い施策は、「制度に関する目標設定事例や目標管理シートの記入例、マニュアル等を配布」で84.8%に上ります。まずは制度実施上の勘所やルールを周知・確認しておく必要がある、ということでしょう。
実施率が半数を超える上位5項目は、以下です。
- 84.8%…「制度に関する目標設定事例や目標管理シートの記入例、マニュアル等を配布」
- 64.8%…「評価結果を処遇にダイレクトに反映させるなど、活用方法を明確化」
- 57.7%…「個人目標を設定する前に、組織目標を共有するミーティングを開催」
- 54.1%…「管理職に自部門の課題・組織目標を設定する研修を実施」
- 52.8%…「運用の中心となる部署を明らかにし、相談窓口を設置、または指導を実施」
研修の実施が効果大
「実施した」場合のその施策への評価(「実施した」企業=100)については、いずれの項目でも「やや効果があった」 が過半数を占めます。一方、「非常に効果があった」とする施策は、「一般社員に目標管理に関する研修を実施」が3割程度(32.0%)で最も高くなってい ます。
また、以下は回答者から寄せられた制度を円滑に運用するための留意点についてまとめたものです。
- 制度に対する理解
- 認識の統一
- 管理者の意識改革
- コミュニケーション、マネジメントの能力向上に向けた研修の実施
- 組織における役割や職務の明確化
- 評価結果の処遇反映への明確化と仕組みの工夫
よりよい仕組みにするためには、継続的な運用を通じて蓄積した課題を整理・検証し、制度の修正・改善を行うことが大切なのでしょう。
◆労政時報の詳細は、こちらをご覧ください → 「WEB労政時報」体験版
人事の専門メディアやシンクタンクが発表した調査・研究の中から、いま人事として知っておきたい情報をピックアップしました。