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不妊治療を取り巻く企業の実態とは?
-制度導入企業は19%、治療内容や利用目的を限定しない休暇・休業制度の導入を-

ニッセイ基礎研究所 生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛氏

不妊治療を取り巻く企業の実態とは?

要旨

本稿では、不妊治療を取り巻く企業の実態について明らかにし、企業側に必要な制度について考察した。

その結果、不妊治療と仕事の両立体制に関する企業の実態調査からは、不妊治療特有の頻回な通院に受診時期が読めずに調整が図れないことなどが、両立体制を築く上での困難要因となっている。

また、7割近くの企業が従業員の不妊治療の実施有無を把握しておらず、不妊治療に関連した制度を導入している企業も2割(約19%)に満たない状況であり、企業側の両立体制が不十分であることが示唆された。

さらに、既に不妊治療に関する何らかの制度を導入している企業について分析したところ、「休暇」、「休業(休職)」制度のいずれか及び両方を導入している企業を合わせると96%にのぼり、不妊治療と仕事の両立体制を築く上で、企業にとってまずは導入すべき重要な制度であることが明らかとなった。

しかし、不妊治療の特性を考慮すると、利用目的を知られないように、不妊治療だけに限定しない「多目的」での休暇・休業制度が望まれること、また、受診時間や受診時期に対応できるように「当日申請可能」であり、必要な時間だけ通院に割ける「時間休」の導入などが、企業に望まれる工夫ポイントであると示唆された。

1――はじめに

2022年4月から開始された不妊治療の保険適用 1 に伴い、「特定不妊治療助成事業」2 では適用外であった「一般不妊治療」適用層が、治療に踏み込むことが大いに期待される制度改革となった。

しかし、日本では、高学歴化や女性の社会進出が進み、晩婚化・晩産化が進むことが今後も予測される。これらの社会構造を考慮すると、不妊治療を受ける年齢層は、仕事との両立が求められる就労期に重なることが大いに予測される。

では、これら就労期にあたるライフステージにおいて、不妊治療と仕事を両立させるためには、企業はどのような体制が求められているのだろうか。本稿では、現在の企業における両立体制の実態調査の結果と制度分析から見える企業に必要な体制について考察する。

1 厚生労働省(2022)「不妊治療に関する取り組み」、不妊治療の保険適用より
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/funin-01.html

2 特定不妊治療助成事業とは、2004年から2021年度まで実施されていた高度生殖補助医療にかかる医療費の補助事業である。2022年4月の保険適用に伴い原則的に廃止されている。

2――「不妊治療と仕事の両立体制に関する調査」からみえる企業の実態

1|不妊治療と仕事の両立状況と両立困難要因

図表1.仕事と不妊治療の両立状況

まず、不妊治療を取り巻く企業の実態はどうなっているのかみていこう。少し古いデータとなるが、図表1の通り、2017年「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題の調査」3 によると、不妊治療を経験した者のうち、「両立している」が141(53%)、「両立ができず仕事を辞めた」が42(16%)、「両立ができず不妊治療をやめた」が29(11%)、「両立できず雇用形態を変えた」が21(8%)となっている。つまり、不妊治療と仕事を両立している者が5割を超える一方で、両立ができずに、治療や仕事をあきらめている者も3割を超えている実態が示されている。

次に、「両立が難しいと感じる理由」について、図表2に示した。不妊治療と仕事を両立している者(141名)のうち、「両立が困難」と感じた割合は87%を占め、この両立が難しいと感じる理由についての内訳を示すと、男女とも「通院回数が多い」、「精神面での負担が大きい」と感じる者が7割近くにのぼる。

図表2.不妊治療と仕事の両立が難しいと感じている者「141名(87%)」のうち、両立が難しいと感じる理由

3 厚生労働省(2022)不妊治療に関する支援について 令和4年7月1日時点(概要版)
https://www.mhlw.go.jp/content/20220701_gaiyou.pdf

2|不妊治療をしている従業員の把握状況と制度導入状況

続けて、図表3の通り、企業側における不妊治療をしている従業員の把握状況をみると、企業の7割近くが不妊治療を実施している従業員の把握ができていない結果となっていた。

さらに、図表4の通り、不妊治療に関して何らかの制度を導入している企業は、回答した377社のうちわずか71社の約19%であり、その制度の内容(複数回答)をみると、「不妊治療のための休暇制度」を導入している企業は48社、「不妊治療にかかる費用等を助成」している企業は15社、「不妊治療のための通院や休息時間を認める制度」を導入している企業は10社、「不妊治療のために勤務時間等の柔軟性を高める制度」を導入している企業は5社、その他が16社、そして「不妊治療に特化した制度ない」と回答した企業は306社という結果となっていた。

図表3.不妊治療を実施している従業員の把握状況/図表4.不妊治療のために何らかの制度を導入している企業数

これら図表1から3が示す不妊治療と仕事との両立体制の実態を調査した貴重なデータからは、不妊治療と仕事の両立体制を築いても3割超は仕事や治療のいずれかを諦める結果となっており、頻回な通院回数や通院のタイミングが読めないことで仕事の調整が難しこと、また企業側が導入した不妊治療に特化した制度についても未だ課題が残る実態であると言えよう。

しかし、図表4が示す通り、実際に制度を導入している企業も、2割近く(約19%)存在することを示している。これらの企業が、実際に導入している制度とはどのような内容なのか検証してみよう。

3――企業が導入する不妊治療に関する制度とは?

1|「Clarity」掲載企業の制度分類

株式会社Clarityでは、女性が働き方に合わせて仕事が探せるように企業の働き方に関する情報、口コミ等の情報提供を行っているが、同社のホームページでは企業60社における福利厚生制度の概要について掲載しており、その中で不妊治療休暇が取れる企業に関係するデータも紹介されている。

これらの60社の企業が導入している制度について検証していくと、図表5に示す通り、「休暇・休業」制度、「費用補助」、「働き方」の工夫の3つに分類できる。

図表5.Clarity掲載企業の導入制度分類

その中でも、不妊治療に関する制度として、「休暇」制度を導入している企業は約4割にのぼり、「休業」制度を導入している企業も5割を超えていた。さらに、「休暇」と「休業」両方の制度を備える企業を合わせると、96%の企業が導入しており、不妊治療を目的とした休暇・休業制度を設けることは仕事と不妊治療を両立させる上で、先ずは企業にとって取り組むべき制度であろう。

2|「多目的」で、当日申請可能な柔軟な制度導入が必要!

一方で、図表5の吹き出しに示す通り、「休暇」・「休業(休職)」制度の適用要件を分類してみると、「休業・休職(N=34)」では、生殖補助医療でないと制度が適用されない企業が4件(12.5%)存在しており、不妊治療ならどの段階でも制度を活用できるわけではないようである。

2022年4月からの不妊治療の保険適用で、今まで対象とならなかった「一般不妊治療」層も治療に取り組むことが期待されるため、生殖補助医療の前段階である一般不妊治療の段階で、休暇や休業制度が活用されることが望ましい。

また、厚生労働省の調査では、両立のために企業側へ求める内容として、男女とも「不妊治療のための休暇制度」を挙げた割合が7割を超える 4 結果が示されている。一方で、「不妊治療をしていることを知られたくない」と回答している割合が4割を超えており、職場との共有に心理的抵抗を感じる層も多いことが分かる。この層に配慮すると、図表5の「休暇・休業」制度の利用目的分類にあるように、不妊治療だけに限定しない「多目的」での適用要件を備えた制度の拡充が必要であると考える。

次に、不妊治療に関する費用補助に関して、今回は詳細を確認できなかったが、保険適用により医療費の自己負額が軽減された一方で、日本では第3者の精子・卵子を用いた生殖補助医療や代理母などは法的な整備がされておらず、保険適用外 5 である治療法も多々存在している。

保険適用で不妊治療に取り組みやすくなった一方で、晩産化により今後も不妊治療ニーズの増加が予測されるため、現行の制度で保険適用外である治療内容にかかる補助体制の在り方についても、あわせて企業側は検討していく必要があろう。

さらに、働き方については、短時間勤務やフレックス制度を導入している企業が現状では多いことが分かるが、不妊治療の特性を考慮すると、「時間休暇」や「当日申請可能」などの要件が導入されることが望ましい。

不妊治療と仕事の両立体制を築くには、企業側がただ制度を設けるだけでなく、治療特性に沿って不妊治療が促進できる体制を工夫して設ける必要があるであろう。

また、不妊治療の保険適用となる治療内容や企業の勤務形態の工夫の必要性、さらには、企業に求められるメンタルサポートの体制や家族計画を跨ぐ議論等について深める必要性はあるが、別の機会に検証する。


4 厚生労働省「平成29年度厚生労働省 不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査研究事業(報告書)」P53,54.https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11910000-Koyoukankyoukintoukyoku-Koyoukikaikintouka/0000197931.pdf 企業側へ求める制度として、男性26%、女性47%計73%が不妊治療に特化した休暇制度を挙げていた。

5 厚生労働省(2022)不妊治療に関する支援について 令和4年7月1日時点(概要版)P5
https://www.mhlw.go.jp/content/20220701_gaiyou.pdf

4――まとめ

本稿では、不妊治療を取り巻く企業の実態について明らかにし、企業側に必要な制度について考察した。

その結果、不妊治療と仕事の両立体制に関する企業の実態調査からは、不妊治療特有の頻回な通院に受診時期が読めずに調整が図れないことなどが、両立体制を築く上での困難要因となっている。

また、7割近くの企業が従業員の不妊治療の実施有無を把握しておらず、不妊治療に関連した制度を導入している企業も2割(約19%)に満たない状況であり、企業側の両立体制が不十分であることが示唆された。

さらに、既に不妊治療に関する何らかの制度を導入している企業について分析したところ、「休暇」、「休業(休職)」制度のいずれか及び両方を導入している企業を合わせると96%にのぼり、不妊治療と仕事の両立体制を築く上で、企業にとってまずは導入すべき重要な制度であることが明らかとなった。

しかし、不妊治療の特性を考慮すると、利用目的を知られないように、不妊治療だけに限定しない「多目的」での休暇・休業制度が望まれること、また、受診時間や受診時期に対応できるように「当日申請可能」であり、必要な時間だけ通院に割ける「時間休」の導入などが、企業に望まれる工夫ポイントであると示唆された。

株式会社 ニッセイ基礎研究所

ニッセイ基礎研究所は、年金・介護等の社会保障、ヘルスケア、ジェロントロジー、国内外の経済・金融問題等を、中立公正な立場で基礎的かつ問題解決型の調査・研究を実施しているシンクタンクです。現在をとりまく問題を解明し、未来のあるべき姿を探求しています。
https://www.nli-research.co.jp/?site=nli

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