働き時代における企業の人事施策アンケート
女性の就労継続に向けて「長時間労働の是正」を課題とする企業は70.7%。家庭事情を理由に退職した社員の再雇用制度の導入率は24.4%
1.女性社員の就労継続に向けた各種施策への課題認識
各種施策への課題認識 [図表1]
「ワーク・ライフ・バランス推進に向けた長時間労働の是正」を“対応を急ぐべき喫緊の” “優先度の高い” 課題であるとする企業が70.8%
労働力人口の減少が進む中、若者、女性、高齢者などの労働市場への参加促進が期待されているが、女性が働き続けていく上では、仕事と家庭の両立が可能な制度を整えることが重要になっている。
今回の集計企業(123社)で、女性社員の就労継続に向けた各種施策のうち「すでに対策済み」のものは、「育児と仕事の両立を図る柔軟な勤務制度の整備」21.1%、「男女隔てない登用・処遇に向けた制度または運用の拡充」20.3%、「配偶者・子どもを対象とした手当制度の見直し」19.5%となっている。
また、まだ対応していないが、課題として認識している施策を「対応を急ぐべき喫緊の課題である」「優先度の高い課題である」の割合の合計で見ると、「ワーク・ライフ・バランス推進に向けた長時間労働の是正」が70.8%に上る。以下、「女性の活躍推進に向けたキャリア形成支援」57.8%、「育児と仕事の両立を図る柔軟な勤務制度の整備」56.1%、「継続的な親族介護と仕事の両立を図る柔軟な勤務制度の整備」51.2%と続く。
最も優先度が高い課題とされた「ワーク・ライフ・バランス推進に向けた長時間労働の是正」は、“すでに対策済み” と回答した企業が8.1%にとどまっており、これから取り組みが進んでいくと考えられる。
一方、優先度が低い施策を「課題としての優先度はさほど高くない」「課題とは考えていない」の割合の合計で見ると、「保育サービスの情報提供や保育費補助など、子育て支援策の新設または拡充」が76.4%、「介護サービスの情報提供や利用費用補助など、仕事と介護の両立支援策の新設または拡充」59.3%、「配偶者・子どもを対象とした手当制度の見直し」58.6%となっている。
2.女性社員の就労継続に向けた各種施策の実施状況
労働時間・休日関連制度の実施状況
[図表2] 半日年休の実施率が86.2%と最も高い。全体として1000人以上で制度の導入率が高い
労働時間・休日関連制度の実施状況(複数回答)を見ると、「半日単位の年休付与(半日年休)」が86.2%と最も高く、次いで「失効年休の積立保存制度」53.7%、「フレックスタイム制度」48.8%となった。
規模別に見ると、どの制度も1000人以上では他の規模に比べて導入率が高くなっている。とりわけ、「在宅勤務制度」は1000人以上が28.9%なのに対して、300〜999人では5.4%、300人未満では17.1%と大きく差がついている。
育児期の社員を対象とした制度の実施状況・内容[図表3~6、事例1]
導入率が高いのは、勤務・休暇制度では「配偶者出産休暇制度」51.2%。
保育施設関連施策では「保育園料、ベビーシッター料などの補助」26.8%
[1]育児期の社員を対象とした勤務・休暇制度の実施状況||
後掲「個人調査」の[図表1](3914号本誌参照)によれば、既婚・正社員として働く22〜59歳の女性の場合、「子どもがいる」家庭は56.6%に達する。そのうち、小学校入学前の一番手が掛かる時期の子どもを持つのは30代で88.0%に上る。このことから、「キャリア形成」と「仕事と育児の両立」の時期が重なる社員を対象とした施策は、重要度を増しているといえるだろう。
育児・介護休業法で義務化されているもの以外で、育児期の社員を対象とした勤務・休暇制度の実施状況(複数回答)を見ると、最も多かったのが、「配偶者出産休暇制度」で51.2%、次いで「始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ」48.0%、育児・介護休業法で定められている内容を上回る「短時間勤務制度」が40.7%となっている[図表3]。なお、法を上回る具体的な内容は、[事例1](省略)で紹介している。
[2]育児期の社員を対象とした保育施設関連の制度・施策の実施状況
小さい子どもを持つ社員が働き続けられるために、企業が保育関連施策をどの程度講じているかを聞いたのが(複数回答)、[図表4]である。
「いずれも実施していない」が68.3%と最多だが、「保育園料、ベビーシッター料などの補助」を行っている企業は26.8%と4分の1を超える。「いずれも実施していない」を除いて、実施している施策を規模別に見ると、実施しているすべての施策で規模が大きくなるほど実施率が高くなる傾向が見られた。なお、「企業内保育施設を設置している」と回答した企業はなかった。自前で施設を用意するより、費用補助を行うほうが企業にとってのトータルでのコスト負担が少ないためと考えられる。
[3]「短時間勤務制度」を利用した場合の賃金の取り扱い
育児・介護休業法では、3歳に満たない子を養育する従業員に対し、短時間勤務制度を設けることを企業に義務づけている。その時短分の賃金の取り扱いについては、「所定労働時間を短縮した時間分を控除して賃金を算定する」が92.7%と圧倒的に多い[図表5]。「短縮時間分は控除しない」はわずかに3.3%であり、ほとんどの企業でノーワーク・ノーペイの原則が徹底されていることが分かる。
[4]短時間勤務を含む評価対象期間の評価方法
短時間勤務の場合、勤務時間が短いことに対する評価の取り扱いは、「他の社員と同じ基準で評価を行う(短時間勤務は考慮しない)」が71.5%で最も多くなっている[図表6]。短時間勤務だからといって便宜を図ったり、逆に短時間分を低く評価したりしないのが主流である。「他の社員と比べて勤務時間が短いことを何らか考慮して評価を行う」は14.6%にとどまった。
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