どうする? 迫る社会保険の適用拡大
古橋 孝美(ふるはし たかみ)
さらに、今後、厚生年金・健康保険の加入要件が引き下がった場合、どのような働き方を望むのかを聞いています。
結果を見ると、すでに厚生年金・健康保険に加入していると思われる「週30時間以上」で働いている層は、「特に気にせず働く」という回答が多くなっています。一方、現在と今後の加入要件のちょうど狭間にいる「週20~30時間未満」の層は、半数以上の54.5%が「保険料を支払わなくてすむように、時間や日数を調整して働く」と回答し、「特に気にせず働く」という回答は29.3%となりました。
もちろん、保険料を支払っているので将来的には自身の年金も支給されます。それでも「保険料を支払わなくてすむように、時間や日数を調整して働く」というのが、パート・アルバイトの現段階での大勢のようです。
企業の意向は?
企業側の意向も見ていきましょう。パート・アルバイトを雇用している企業に、厚生年金・健康保険の適用基準が改正された場合、どのような対応を取るか聞くと、次のような結果になりました。
- <1>
「保険料負担が増えても、特にパート・アルバイトの労働時間の調整は行わない」39.2% - <2>
「保険料負担が増えないよう、パート・アルバイトの労働時間を適用基準未満の時間に設定する」34.4%
全体の結果では、保険料負担を特に気にしない企業<1>と保険料負担を気にして雇用を調整しようとする企業<2>の割合が拮抗していました。しかし、パート・アルバイト比率(全従業員に占めるパート・アルバイトの割合)で見ると、パート・アルバイト比率40%を境に、企業の特徴が見えてきます。
「保険料負担が増えても、特にパート・アルバイトの労働時間の調整は行わない」企業は、パート・アルバイト比率40%未満の企業で4割を超える一方、パート・アルバイト比率40%以上の企業では2~3割に留まりました。反対に、「保険料負担が増えないよう、パート・アルバイトの労働時間を適用基準未満の時間に設定する」企業は、パート・アルバイト比率40%未満の企業で3割のところ、パート・アルバイト比率40%以上の企業では4~5割にも上っています。
ここからは、パート・アルバイトを多く抱える企業が保険料負担の増大に強い危機感を持っており、パート・アルバイトに「時間を短くして働いてもらう」スタイルを模索している様子がうかがえます。
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