【真の残業削減を実現する】「営業職」の労働時間短縮のための業務見直しのポイント
時短コンサルタント・社会保険労務士
山本 昌幸
(7)長期目標、短期目標および実施計画を策定する
3~5年後の到達点である長期目標、半年~1年後の到達点である短期目標および短期目標を達成するために、いつ、誰が、どのようなことを行うのかの実施計画を策定します。この実施計画は、前述のリストラ手法とリスク対策をリンクさせる場合、そのまま活用する場合の両方があります。
(8)策定した実施計画の運用および残業時間・労働時間の監視、測定検証
策定した実施計画を実行し、次の内容を監視、測定します。
- ◎◎当たりの労働時間(残業時間):原単位
- 営業職員別の残業時間および残業代
- 営業職員別残業時間の最低値、中央値および最高値
- サービス残業、仕事の持帰り量
また、次の内容を検証します。
- 「三六協定」の内容は遵守されているか
- 営業職員に対する顧客からの評価はどうか
(9)残業削減の成果等の情報を公開し、共有する
プロジェクトの成果を公表して、情報を共有します。特に次の情報を共有することが有益です。
- 何が原因で残業時間が増えていたのか
- 誰が(内部、外部)原因で残業時間が増えていたのか
- 何が原因で時短ができたのか
- 誰が(内部、外部)原因で時短ができたのか
(10)効果があった取組みを組織の標準行動とする
実際に時短効果があった取組みをその組織の継続した仕組みにするために、標準化します。できれば文書化しておくことが望ましいでしょう。また、効果が得られなかった取組みについても記録しておき、ムダな取組みの再発防止に活用するとよいでしょう。
(11)組織内に周知する
今までの取組内容、成果等を組織内に周知します。周知の方法はセレモニー形式で発表会を実施し、その内容を掲示、社内報、グループウェア等を活用して継続的に周知します。また、プロジェクトの一連の活動として、時短が思うように進まない場合も想定されますが、そのこと自体も一つの成果として発表し、「何が原因なのか?」の問題点を共有します。
2. 以上が適正労働時間実現プロジェクトの「ステージ0」・「ステージ1」
通常、ここまでのプロジェクトの活動で時短は実現できると思われますが、時短効果が出ない場合は、原点に立ち返ってください。
一連のプロジェクトの活動により時短が実現できない場合(という問題が発生した場合)は、必ず原因があります。その原因を突き止め、取り除く対策を施す活動を執拗に行う必要があります。「Try&Error」の繰返しです。
筆者が労働時間削減や適正労働時間実現のプロジェクトを指導する場合、実際は3段階での取組みを指導していますが、ここまでの取組みは、そのうちの2段階までの内容です。通常は、「ステージ0」から始めて「ステージ1」である程度の成果を出し、「ステージ2では「効率」「稼働率」に着目しながら、さらなる成果を出しつつ、制度や組織風土を定着させるための取組みを行います。
しかしながら、前述のように「ステージ1」までの取組みでも時短という成果は出ますので、ぜひ前向きに取り組んでいただきたく思います。
本稿では営業職員を念頭にご紹介しましたが、この時短のための手法はさまざまな業種・職種で活用できることを忘れないでください。
1社でも多くの企業が時短に取り組み、そこで働く方が仕事とプライベートにメリハリのある生き方を実現していただくことはもちろん、就業時間に制限がある(育児、介護、通学等)方も安心して働くことができる職場の実現を期待しております。
やまもと・まさゆき ● あおいコンサルタント株式会社取締役。小手先ではない真の労働時間削減指導、交通事故削減指導、マネジメントシステム構築指導を得意とする。主な著作に「『プロセスリストラ』を活用した真の残業削減・生産性向上・人材育成 実践の手法」、「運輸安全マネジメント構築・運営マニュアル」(以上、日本法令)、「CSR企業必携!交通事故を減らすISO39001のキモがわかる本」(セルバ出版・三省堂)。1963年生。主な保有資格:ISO9001主任審査員、ISO14001主任審査員、特定社会保険労務士、行政書士。ロードージカンドットコムを運営。
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