特定の職種(スキル保有)の従業員に
「何らかの処遇を行っている」企業が約6割
「手当」が約3割と最も多い。基本給を高く設定、異なる賃金テーブルで処遇するケースも
特定の職種(スキル保有)の従業員に対して、特別な処遇を行うための制度はあるのだろうか。結果を見ると、「特別な処遇は行っていない」が39.4%と約4割を占めているが、残りの6割の企業では何らかの処遇を行っている。その中で最も多いのが「手当等で処遇している」で、28.9%と3割近くを占めている。次いで、「特別に処遇をする制度はないが何らかの形で報いることをしている」(15.3%)が続き、以下、「基本給を高くするなどの処遇をしている」(8.4%)、「異なる賃金テーブルで処遇している」(8.0%)となっている。「職能資格制度」の下、「職能給」が多い日本企業だが、特定の職種(スキル保有)に対しては、基本給を高く設定したり、異なる賃金テーブルを用いたりしている企業も存在していることがわかる。
従業員規模別に見ると、101~500人で「手当等で処遇している」(35.9%)の割合が高いことが目立つ。そのほかにも、1~100人では「基本給を高くするなどの処遇をしている」(12.3%)、1001~5000人では「異なる賃金テーブルで処遇している」(15.1%)の割合が比較的高く、それぞれの従業員規模で適切と思われる対応を講じている様子がうかがえる。
仕事の特殊性や資格保有などに対し、さまざまな形で処遇を行う
特別な処遇対象となる職種やスキルと、特別な処遇を行う理由について、自由記述形式で聞いた。特別な処遇対象となる職種やスキルを大別すると、「技術関連」「スタッフ関連」「営業・販売・サービス関連」「専門職」「マネジメント関連」にまとめることができる。以下では、職種やスキルを列挙し、括弧内にその職種やスキルに対して特別な処遇を行う理由を記載している。
図:特別な処遇対象となる職種・スキルとその理由
【技術関連】
- 技術職(製造技術に関するスキルに基づき適切に処遇することで、さらなるスキル向上を目指してもらうため)
- 情報システム(特筆すべき専門性がパフォーマンスに直結するため)
- システム開発の上位職種(SEなど)(転職・引き抜き防止)
- 高度スキルエンジニア(優秀な人材を確保するため)
- 研究・開発などの理系的なスキル(一般の給与体系では処遇が難しいため)
【スタッフ関連】
- 弁護士(社内弁護士として非常に重要なポジションにあるため。労働市場での人材獲得・維持のため)
- 法務知識のあるスタッフ(知財の重要度が増しているため)
- 経理(特筆すべき専門性がパフォーマンスに直結するため)
- 監査員(資格取得が必要なため)
- 社会保険労務士など国家資格(職務上、保有していることが質の向上にもつながるため。個人のスキルアップ)
- アクチュアリー(余人をもって代え難いため)
【営業・販売・サービス関連】
- 営業職(資格手当を殊遇することにより、自己研鑽してもらうため。外出などが発生するため。大幅な売り上げ増に貢献した場合)
- 高難易度店舗運営(特別なスキルのため)
- テクニカルサポート(英語を活用する)
【専門職】
- 1級土木施工管理技士(官公庁の業務を行うにあたり必要なため)
- 宅地建物取引士(宅建業上、社員数に対して一定の必要数が求められるため)
- 医師、看護師、薬剤師、保健師、管理栄養師、医療技術職(診療報酬上、一定数を置く義務があるため。売り手市場、離職防止。国家資格)
- 介護福祉士(国の政策として介護職員処遇改善加算が設定されているため)
- 修理工事業務(深夜の待機や時間外の拘束時間が長いため)
【マネジメント関連】
- 管理職(一般社員より依頼する業務量が多いから)
- 現場の作業長や班長(現場における管理・マネジメントをつかさどるポジションであるため)
- 管理事務職(労働制が他の職種と異なるため)
【その他】
- 社内の専門性認定制度(社内の第三者から認められたプロとして、上司以外からも評価されている点を考慮)
- 優れた業務効率や業績(手当等で労うことで、個人の頑張りを認めていることを伝えモチベーション向上につなげる)
- 自部門以外の業務への挑戦(自己のキャリア形成への意欲を促進し、イノベーションを創出するため)
- 交代勤務(変形労働時間制の中で、昼夜勤務を命じるため)
※自由記述回答より一部抜粋
実施時期 | 2019年3月19日~4月9日 |
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調査対象 | 『日本の人事部』正会員 |
調査方法 | Webサイト『日本の人事部』にて回答受付 |
回答数 | 5,022社、5,273人(のべ) |
質問数 | 146問 |
質問項目 | 1.戦略人事/2.採用/3.育成/4.評価・賃金/5.ダイバーシティ/6.働き方/7.HRテクノロジー/8.組織活性化 |
出典:『日本の人事部 人事白書2019』
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