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『ビジネスガイド』提携

生活型、付合い型、独りよがり型、抱え込み型…etc
“タイプ別”残業時間削減のテクニックとその進め方 (4/5ページ)

日本能率協会総合研究所 広田 薫

2013/11/18
(3)抱え込み残業

“抱え込み残業”とは、まさしく仕事を抱え込んでしまい、残業をしないでは仕事が片付かないことが常態化していることを言います。これには、二つのパターンがあります。

(ア)自分しかできない仕事と思い込み、仕事を抱え込んでしまうケース
その人しかできない仕事に就いている人は、素直に称賛すべきです。そこに至るまでの努力はよほどのものであると想像できるからです。ただし、こうした個人の存在を認めたからといって、会社や組織としてこういう事態を放置してよいということにはなりません。リスクが大きすぎるからです。

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例えば、こうした人があと5年で定年退職など、残りの期間が決まっている場合であれば比較的対応は可能でしょう。その間に、その仕事のやり方を若手社員に時間をかけて伝えていけばよいからです。ところが、時間的余裕がない場合はどうでしょうか。例えば、事故に遭って突然出社できなくなった、親が倒れて介護をしなければならなくなった、といった突発的な事態が起こったときに、「担当者不在で仕事ができず滞っています」では済まないのです。だからこそ、日頃からチームの中で仕事の「見える化」「共有化」を図り、万が一のときのフォロー体制を構築していかなければなりません。最初からすべてを引き継ぐことは無理でしょうが、仕事を切り分け、易しいところから徐々に教えていくことで仕事の継承を進めていかなければなりません。

(イ)一部分でも他の社員に仕事を渡すと自分のポジションを奪われてしまうのではないかという強迫観念から、なかなか同僚や後輩に渡さないケース
この“抱え込み残業”は、ある意味で社員の努力の結果として“抱え込み残業”をせざるを得なくなってしまった場合にだけ起こるのではありません。残念なことに、仕事を一つでも他の社員に渡すと自分のポジションを奪われてしまうのではないかという強迫観念から、必要もないのにあえてなかなか手放さず、抱え込んでいる社員も存在します。こうした社員には、仕事をしていくうえでの本当のリスクを早めに突きつけたほうがよいでしょう。

それは、「個人のできる仕事には限界がある。今ある仕事を抱え込んでいると、それだけに精いっぱいで新しい仕事にチャレンジする時間が取れない。結果として視野を広げるチャンスを失ってしまう」ということです。若い頃には会社のエースとして第一線で働いていたにもかかわらず、それに甘んじて新しいことを取り入れなかったがゆえに窓際社員に成り下がってしまう、そんな社員になってもよいのか、といったことを語りかけ、こうした行動が長い職業人生の中でどのくらい大きなリスクなのかを認識させるのです。そのうえで、「仕事の抱え込み」という行動を今後どのように改めていけばよいのか、一度、じっくり時間を取って考えてもらいましょう。

【3】必ずしも否定すべきではない残業
(1)がむしゃら残業

最後に、必ずしも否定すべきではない残業として“がむしゃら残業”を挙げることができます。若手社員が早く人前になりたいといった理由から、また、仕事熱心であるがゆえに毎日残業を繰り返す、こういった残業までもすべて否定し、老若男女一律に定時に帰れと言うべきではありません。とりわけ新入社員や転職してきた若手社員については、新しい仕事に就いて数年間、それこそ寝食を忘れて仕事にのめり込むべきではないでしょうか。仕事というものは、実際に現場で数をこなしていかなければ覚えていかないものです。仕事をしていくうえで起こった試練を乗り越え、「一皮むけた経験」を積み重ねていくことが、大きな自信となり、仕事を続けていく高いモチベーションにつながっていきます。若い時期にとことん仕事にのめり込むことで、知識や経験の“貯金”ができるのです。

(ア)仕事にムダはないか
ただし、こう言い切るためには条件が二つあります。一つ目は、仕事の仕方にムダがないことです。“ダラダラ残業” や“成行きまかせ残業” を繰り返していたり、会社に長くいることが目的になってしまっていたり、長時間残業に自ら酔ってしまっていたりするようであれば、そういった残業はやめさせなければなりません。そうではなく、成果に向かって、悩みながらもまずは自らの力で考え、行動し、上司やチームメンバーの力を借りながら前進しているかどうか、また、上司がしっかりと仕事の進捗を管理し、アドバイスを行うというサイクルが回っているかどうか、この二つができていることが一つ目の条件です。

もちろん、度が過ぎた長時間残業は上司がやめさせる勇気を持たなければなりません。度が過ぎているかどうかは、上司が部下を見守り、進捗管理を徹底していれば自ずと見えてくるものです。

(イ)仕事を狭く捉えていないか
二つ目は、仕事というものをあまりにも狭く捉えないことです。仕事というのは1日中パソコンとにらめっこしたり朝早くから夜遅くまで多くのクライアントと会ったりするだけではありません。感性を研ぎ澄ませて、世の中を眺める時間を持たなければ、良い仕事はできません。

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そのためには、ノー残業デーや休日を活用して自己啓発に励んだり教養を身に付けたりすること、また、同業他社の製品・商品を見たり街に出て消費者の感覚をつかんだりすることで、広い視野を身に付けることもまた重要です。

会社の机に座って見聞きできることは、世の中のほんの一部に過ぎません。こうした一見余裕とも思えるような時間を意識して設けることにより、世の中の流れを読む洞察力を身に付けること、これがビジネスにおける深みを増すのだということを、ぜひとも若いうちから身に付けておくべきです。こうした時間をあえて持つことができているかどうかが、二つ目の条件です。

これら二つの条件を満たしているのであれば、若手社員の残業というものは、一概に否定すべきものではありません。


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*****さんがその他の感想でオススメしました
2013/11/19

以前日経新聞に残業の分類は出ていましたが、より詳細で
大変参考になりました。

*****さんがその他の感想でオススメしました
2013/11/19

当社で労務関係の仕事に従事していまして、残業削減は命題です。36協定の関係もあり苦慮しています。『意識改革』の一環として活用させていただきます。

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