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職場のモヤモヤ解決図鑑
【第6回】副業解禁したけど、運用が難しい! 労使双方の注意点は?

職場のモヤモヤ解決図鑑

自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!

副業解禁したけど、運用が難しい! 労使双方の注意点は?
吉田りな(よしだ りな)
吉田 りな(よしだ りな)
食品系の会社に勤める人事2年目の24才。主に経理・労務を担当。日々奮闘中!

ようやく副業・兼業解禁に漕ぎつけた吉田さん。副業を始めた社員は料理教室で活躍しているようですが、彼の上司からは「労働時間多いのに大丈夫かな」とチクリ。また、「これ、大丈夫なの?」と感じる副業の届け出もチラホラ出てきました。副業・兼業制度を運用するにあたり、どういう点に注意すればよいのでしょうか。

副業制度の運用で困るあれこれ

副業・兼業制度の運用を開始した直後は、従業員も知識が浅く、どんな企業や業務内容でも問題ないと思い込んでしまう場合があります。就業規則の禁止・制限事項をきちんと読まずに、自分の思うままの副業を選ぶ従業員もいるかもしれません。また、会社側でも労務管理上注意したいことがいくつかあります。

従業員に伝えておくべきNGな副業と、副業運用で会社側が注意したい点について、順番に見ていきましょう。

従業員に伝えたい、NGな副業

従業員は選んだ副業が本業に問題がないかどうかを検討する必要があります。厚生労働省のモデル就業規則では、副業・兼業の内容に関して、禁止・制限事項として以下の内容を定めています。

(1)労務提供上の支障がある場合
(2)企業秘密が漏洩する場合
(3)会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
(4)競業により、企業の利益を害する場合
(引用元:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192845.pdf

特に、注意したい禁止・制限事項は(2)情報漏えいと(4)同業他社での副業です。

従業員は、業務上知り得た企業秘密について守秘義務があります。これを破って企業秘密を漏らすと、企業は大きな損失を被り、会社側が従業員に対して損害賠償の裁判を起こすという事態になり、従業員・会社双方にとって不幸を生みます。

また、同業他社での副業は競業避止義務に違反する可能性があります。競業避止義務とは、自社独自のノウハウや情報を他社で利用されないようにするためのルールです。

同業他社での副業は、自分が身につけたスキルを生かしやすいため、魅力的に見えるかもしれません。しかし、競業避止義務に反する行為として、副業・兼業の禁止・制限事項にしているのが一般的です。

どんな副業がNGなのかについては、企業から従業員へ何度も根気強く伝え続けるとともに、問題のある副業の届け出をした従業員には、個別対応も検討しなければなりません。

これは気を付けたい!副業運用の注意点

副業を運用していくにあたって、会社側でも労務管理上の注意点がいくつかあります。特に注意したいポイントは以下の4点です。

1)労働時間の管理

労働基準法第38条では、事業場が異なる場合でも労働時間の規定の適用は通算すると定めています。つまり、1日8時間、1週間に40時間以内とする労働基準法上の労働時間は、副業として勤務する労働時間も含めて計算します。従業員の労働時間を、副業先の労働時間も含めて把握する仕組みが必要です。

副業を個人事業主として行うなど、副業での働き方が労働基準法に定める労働者とならない場合、労働基準法第38条は適用されません。ただし、その場合でも、従業員の自己申告によって労働時間を管理し、過労で業務に支障をきたすことながないような対応が推奨されます。

2)健康管理

会社は、従業員の健康管理について、労働安全衛生法に定める健康診断やストレスチェックを実施しなければなりません。期間の定めのない労働契約の者や、契約期間が1年以上である者(1年以上使用されることが予定されている者や1年以上引き続き使用されている者を含む)の1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上であれば、健康診断やストレスチェックを受けさせる義務があります。

この判断基準となる労働時間は、副業先の労働時間と通算する必要はありません。しかし、従業員が働きすぎることのないよう、相応の配慮が求められます。労使の話し合いにより、場合によっては健康診断の受診や労働時間の短縮なども検討します。

例えばカゴメは、年間1,900時間以上働いている従業員は、副業・兼業制度を使えないようにしています。制度面で従業員を過労から守る仕組みも検討すると良いでしょう。

3)労災保険

労災保険では、基本的に個別の事業場ごとに労働の過重性を評価するという仕組みでした。しかし法改正により、2020年(令和2年)9月1日より、副業も含めて通算することになりました。

これまでは本業と副業それぞれで労働の過重性を認定していたために労災認定されなかったケースでも、今後は労働災害として認められるかもしれません。複数の事業場での業務による傷病と認められる場合は「複数業務要因災害」と呼ばれる災害を支給事由として、脳・心臓疾患・精神障害などを対象とする傷病について、労災保険が給付されます。

ただし、一つの事業場のみの負荷だけで労災認定できる場合は、通常の「業務災害」と判定されるので注意が必要です。ただし、この場合も、給付額はすべての事業場の賃金を合算して算出されます。

4)休業中の対応

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で休業をしている従業員が、副業を始めたいと申し出た場合、感染対策のために休業しているので、やむをえず届出を却下することもあるでしょう。

従業員が新型コロナウイルスの影響により休業し、収入が減少すれば生活が苦しくなります。感染対策のために副業を認めないのであれば、会社は自宅待機とし、休業手当を支給する対応が現実的です。休業手当をめぐる労使トラブルによる従業員の離職を回避するためにも、従業員が生活できる金額の休業手当を支払うのが望ましいといえます。会社としては、雇用調整助成金を活用し、従業員の生活と雇用維持を第一に考えたいものです。

在宅勤務のように感染を予防できる環境で副業ができる場合は、副業を認めることも考えられます。この場合、雇用調整助成金には副業の規定が特にないため、支給には影響がありません。

副業したいって言いにくい? それは風土のせいかも

副業に否定的な考えを持つ従業員がいる部署では、副業をしたいと言い出せない雰囲気になりがちです。特に、管理職に副業への理解がない場合、上司経由で副業の届出をすること自体、心理的なハードルが高くなってしまいます。

制度があっても使えないという事態に陥らないよう、副業しやすい風土づくりも重要です。そのためには、人事・労務担当のみで副業制度を推進するのではなく、社内全体で話し合いを進め、管理職も含めて副業に前向きな気持ちになれるような土壌を作っていくことが重要です。

副業制度の円滑な運用には従業員・会社双方の協力が不可欠!

【まとめ】
  • 従業員にはNGの副業を根気よく伝え続ける
  • 会社側は従業員の総労働時間を把握して従業員の健康に留意する
  • 副業制度に対する理解を求めるためには、従業員、特に管理職との会話が重要

副業制度を作って実際に運用すると、制度を利用する従業員とその上司、また会社自体も不慣れなため、さまざまなトラブルが発生することが予想されます。従業員には、定期的に副業制度について説明し、NGとなる副業の条件をしっかりと把握してもらわなければなりません。

会社側は、従業員の労務管理に気を配り、過労となりそうな従業員には適切な配慮や措置も検討します。また、副業制度に理解のない上司が部下の副業を阻むことのないよう、定期的にコミュニケーションを取る場も必要です。副業を認める意義や上司の抱いている不安の解消などを図ることで、副業しやすい風土づくりを進めてください。

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