賞与査定の規定がない場合の、懲戒者への賞与額勘案について
初めてご質問させていただきます。当法人は市民団体から発展した福祉関連のNPOです。
9月に懲戒処分(戒告)を受けた職員の賞与額・昇給への勘案について検討しています。
まず、賞与ですが、現給与規定には人事評価等による減額の規定がありません。基本給与に一律の月数を掛けて支給額とすることを定めています。加えて「収入状況を勘案し理事会に定めた額に調整することができる」とし、近年、理事会決定にて一律0.2カ月を上乗せしていますが、これも一律変更の実績しかなく、個人別に査定する旨の規定はありません。小規模のNPOとして事実上人事評価等の実施が困難であり、必要性も生じなかったことから、検討されたことがありませんでした。
こうした状況で、たとえば一律に上乗せされていた額を減給すること、あるいは、懲戒の一環として命令した出勤扱いでの研修期間を、事前の説明・規定がないままに賞与の算定期間から除くといった処置は、労基法的に反しないでしょうか。
次に、昇給については、毎年4月の実施とならび、やむを得ない事由の場合は除外することと、昇給額は定めた給与表を考慮して各人ごとに決定することが定められています。「各人ごと」の定めがある点、賞与以上に法人の判断に委ねられるところかと考えますが、今回の処分に至った経過から、長期的な影響を与える昇給への勘案は行き過ぎではないかとの考えがあり、慎重に当たるべきとの認識でおります。
なお、懲戒処分の実施自体が当法人として初めてのことでしたが、すでに通知済の戒告処分通知には、賞与・昇給への勘案にかかる記載をしていません。他のご回答から、賞与査定等が懲戒処分の一環とされる場合には、「二重処罰」として不適切なケースにあたると察しておりますが、実態として、処分の一環としての後付けの議論が始まった状況にあります。
以上、人事マネジメント的にみて賞与等、給与面でのハンディを与えるべきと考える半面、組織的な不備により対応がおいつかなかったこと(規定や事前通知の不備)を鑑み、無理な対応をすべきでないとの考えもありますが、どのように判断すべきでしょうか。
長くなり恐縮ですが、ご教授いただければ幸いです。
投稿日:2010/11/19 13:48 ID:QA-0023901
- *****さん
- 神奈川県/医療・福祉関連(企業規模 31~50人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
- この回答者の情報は非公開になりました
懲戒処分と賞与
規定がないにしても、処遇に関しては理事会などで決定することができます。したがって、今回の場合、特例措置が適用できると考えます。
まず、出勤停止などを命じた場合、その出勤日相当期間を賞与期間(6か月)から控除することが可能でしょう。
また、賞与は恩恵的給付であり、功労報償であると考えれば、懲戒対象者について不支給または一部不支給が適用されてしかるべきです。
そこで、今回の場合、賞与を一律処遇に該当させないことが可能になってきます。
ただ、今回の賞与に関する措置をもって、本人に対する制裁も最後にすべきと考えます。
懲戒対象者にも職場でやり直しする権利があると考えます。
投稿日:2010/11/19 14:00 ID:QA-0023903
プロフェッショナルからの回答
- この回答者の情報は非公開になりました
賞与の不支給
減給に加えて賞与も一部不支給とするのはセットの処分であれば、二重処分、二重懲戒にはならないでしょう。
また、賞与は労組があると、これを一時金と呼んで生活費の一部のようにみなしますが、賞与という名称は、功労報償としての給付金の性格を示しています。
よって、功労ではなく、懲戒のあった者が賞与を減額されるのは当然のことです。
問題は減額の度合いで、全額不支給などは極端かもしれないです。
市民団体から発展したNPO、またはNPO的組織であれば、報酬の水準は300-450万円程度が多く、減額は生活費に響いてくるものと推測します。
投稿日:2010/11/19 18:43 ID:QA-0023912
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
給与の減額措置は妥当性を欠く
.
■ 組織的な制度整備が遅れているとのことですが、内容の適否は兎も角として、懲戒処分 ( 戒告 ) は、就業規則の定めに基づいて決定されたものと思います。また、従来から、賞与支給方式は、総額は兎も角、個人別配分については、一律固定的との慣習が定着していること、考課結果の賞与反映の仕組みがないことなどに鑑み、減額措置は妥当だとは言えません。
■ 労基法91条は、その文脈から、月例賃金にのみ適用されると看做されます。これは、月例賃金への生活依存度が過度に脅かされることを禁じるための定めです。仮に、減額する場合には、当然、制裁限度として守らなければなりませんが、賞与には、直接、適用されるものではありません。
■ 現時点では、労使間のルールブックとも言うべき、就業規則 ( 付属諸規定を含む ) に定めのない行為をしてはなりません。仮に、大急ぎで就業規則を改訂しても、その制裁措置を過去に遡って適用することは、「 重大な違法行為 」 ですので、考えるべきではありません。
■ 従って、ご相談の事例に関しては、文字通り、「 戒告 」 のみに止め、賞与に差別をつけることは避けるべきです。また、昇給についても、「 各人ごと 」 の定義が明確ではありません。勤続期間なのか、学歴なのか、職責なのか、不明な状況で、これを以って、今回の処分に経済的制裁を加えようとするのも、大いに問題です。このケースを機に、早急に組織的な不備を矯正、整備すべきだと思います。
投稿日:2010/11/19 21:33 ID:QA-0023915
相談者より
川勝様
このたびは御礼が遅れ申し訳ありませんでした。
川勝様の明確なご解説により、減額の対応が不適切であることを理事会で了解し、このたびの減額等は行わないこととなりましたことご報告いたします。ご回答をいただき大変助かりました。本当にありがとうございました。
投稿日:2010/12/03 11:04 ID:QA-0041675大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
賞与の支給内容等につきましては、各企業で任意に決める事が可能ですが、そうした規定に基づかない措置を採ることは就業規則(賞与規程)への違反となりますので通常出来ません。
御社の場合ですと、人事評価等による減額規定が無いことからも、賞与額は各従業員の業務成績や姿勢等に関わらず固定されているものといえますので、所定の満額を支給されることが必要です。
一方、昇給に関しましては、「定めた給与表を考慮して各人ごとに決定すること」と定められている事から、一応個別の人事評価が想定されていると解釈する事が出来ます。但し、何を基準にして決定するかが示されていませんので、今回の件は別にしましても労使間で給与額の決定の妥当性を巡るトラブルが生じるリスクは否定出来ないものといえるでしょう。
従いまして、ご認識の通り規程の未整備といった不手際がある以上、今回の措置につきましては無理な処分や減給とすることなく、早期に賃金・賞与に関する規程整備を進めることで今後の教訓とすべきというのが私共の見解になります。
投稿日:2010/11/19 22:46 ID:QA-0023917
相談者より
服部様
このたびは御礼が遅れ申し訳ありませんでした。
川勝様に続きご解説いただけたことで、さらに確信を深めることができました。ご回答いただき、まことにありがとうございました。昇給等についても、個別の考課を行うためには、一定の規程整備が必要であることを改めて認識いたしました。
投稿日:2010/12/03 11:06 ID:QA-0041677大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
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