[勤怠打刻ミスによる給与清算/控除について]
中途入社してきた従業員について、入社時(過去6か月)から
出勤退勤の異動時間も勤務時間として勤怠システムで打刻をしていたことが判明しました。
大きな金額ではなく、日あたり1時間弱相当の減額(月あたり20時間程度)になる見込みです。
これをさかのぼって控除することは問題ないでしょうか。
・打刻ルール(出勤退勤の移動時間は勤務外)は共有済
ノーワーク/ノーペイの原則には反しないと認識しています。
よろしくお願いします。
投稿日:2025/11/17 16:51 ID:QA-0160773
- バックオフィスさん
- 東京都/情報処理・ソフトウェア(企業規模 51~100人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、勿論ノーワーク/ノーペイの原則には反しませんが、賃金全額払いの原則に反しますので、無断で遡り控除される事は禁物です。
何故このような打刻を当人がされていたのか分かりかねますが、いずれにしましても6カ月間もチェックされていなかった点は会社側にも問題があるものといえますので、当人と相談され少なくとも同意を得られた上で無理のない程度で控除されていくのが妥当といえるでしょう。
投稿日:2025/11/17 19:56 ID:QA-0160777
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.結論
(1) ノーワーク・ノーペイの原則上、実態として労働していない時間の賃金を控除すること自体は違法ではありません。
ただし、
(2) 遡及控除=「既に支払った賃金の返還」が発生するため、
『賃金全額払いの原則(労基法24条)』との関係で非常に慎重な取り扱いが求められます。
(3) 実務的には、本人の同意(書面)が必須と考えるべきです。
本人の同意無く「賃金控除」はほぼ不可能です。
2. 法律上の整理
2-1 ノーワーク・ノーペイの原則
実際に働いていない時間については賃金支払い義務はありません。
→ よって「本来の労働時間ではない部分の誤支給」は理屈の上では会社は支払義務がありません。
2-2 ただし遡って控除するには「賃金控除協定」または「本人同意」が必要
労基法24条(賃金全額払いの原則)により、
賃金から控除できるのは、
(1)法令で認められたもの(社会保険料等)
(2)労使協定(賃金控除協定)があるもの
のみ。
過誤払いの調整(返還)について法令で認められた控除ではありません。
また、賃金控除協定に「過誤払いの調整」が明記されている会社は少なく、
多くの企業では 本人の書面同意が必要 となります。
2-3「不当利得返還請求」は可能だが…
民法上は、誤支給分について会社は「不当利得」として返還請求できますが、
給与から一方的に相殺することは不可(労基法24条に抵触)
実際は労使トラブルになりやすい
金額が小さい場合は特に慎重
という理由で、実務では 労基署も相殺は慎重にと指導する傾向 です。
3. 実務的な判断
今回のケースは以下の通り:
入社後6か月、通勤移動時間を打刻し勤務扱いしていた
本人にはルールが共有済
月あたり20時間程度の誤加算
控除額は大きくない
3-1 本人の故意ではない可能性が高い
「打刻ルールの理解不足」「勤怠運用への不慣れ」など、
従業員に悪意がないケースと考えられます。
その場合、
会社の説明不足や初期指導不足との見られる場合もあり、
一方的な遡及控除は不利益変更として争われるリスクがあります。
3-2 実務上は以下の対応が最も安全
【推奨】本人に丁寧に事実を説明し、調整方法について合意してもらう
例:
「6か月分を一括返金」
「毎月○円ずつ控除(返還)」
「今回は不問とし、今後は適正打刻を徹底する(前例としては慎重に)」など
4. 実務リスクと労基署の見解傾向
・労基署が問題視する可能性がある点
遡及控除の一方的相殺
控除に関する本人同意の欠如
入社時の勤怠指導の不十分さ
控除金額が生活影響を及ぼす場合
特に本人同意なしの控除は是正指導のリスクが大きいです。
5.最適な対応案(実務例)
ステップ1:事実確認
本人の打刻意図(故意か誤解か)
入社時の説明記録があるか(メール・研修資料な
ステップ2:説明・協議
以下を丁寧に伝えることが重要です。
・説明内容
打刻ルールの再確認
今回の誤打刻により実労働時間と乖離していること
ノーワーク・ノーペイの原則上は返還対象であること
しかし会社としては本人事情も考慮し、返還方法は相談のうえ決める意向であること
・控除=本人同意が必要であることも明示する
ステップ3:本人と合意(書面化)
合意書(給与調整・返還に関する同意書)を作成して、
本人署名をいただいた上で処理する。
6. まとめ
・ あなたのご認識
「ノーワーク/ノーペイの原則には反しない」
→ そのとおりです。
・ ただし重要な補足
遡及控除は賃金全額払いの原則に抵触しうるため、本人同意が必須です。
本人が難色を示す場合は、
返還辞退(会社負担)
一部のみ返還
今後は適正管理徹底で終わりにする
などの選択肢も検討すると、法的リスクは大きく低減できます。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/11/17 22:53 ID:QA-0160781
プロフェッショナルからの回答
労働者の合意
以下、回答いたします。
(1)「過払賃金の調整的相殺」は認められています。しかし、これは限定的なものであり、下記を踏まえれば、本件での適用については慎重に考えることがよいのではないかと認識されます。
1)通達(昭和23年9月14日 基発1357号)では、以下の旨が述べられています。
※ 前月分の過払賃金を翌月分で清算する程度は賃金それ自体の計算に関するものであるから、労働基準法第24条の違反とは認められない。
2)判例として、次のものがあります。(厚生労働省「確かめよう労働条件」)
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/hanrei/chingin/sousai.html
福岡県教組事件(S50.03.06最一小判)
【事案の概要】
Y県は、昭和33年5月21日に公立学校の教職員Xらに支給した給与中に1日分の給与の過払があったことから、同年8月21日に支給された給与から減額したところ、Xらはこれを不当として、減額分の返還を求めて提訴したもの。
福岡高裁は、3か月経過した後の賃金との相殺は、時機を逸しており、例外的に許容される場合に該当しないとし、最高裁もこれを維持し、上告を棄却した。
【判示の骨子】
賃金過払による相殺は、過払のあった時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてなされ、その金額、方法等においても労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのないものである場合にかぎり、許されるものと解される。
Y県は、過払分を翌6月分の給与から減額することが可能であったのに、8月分の給与から減額を行ったものであり、その遅延した主たる理由は、減額をすることの法律上の可否等の調査研究をしながら、当時同種事案をかかえていた東京都の動向を見守っていたところにあるのであるから、本件相殺は、これをした時期の点においていまだ例外的に許容される場合に該当しないとしている原審の認定判断は、正当として首肯することができる。
3)本件、「打刻ルール(出勤退勤の移動時間は勤務外)は共有済」とのことですが、労働時間を適切に管理することは使用者の責務であり、6か月にもわたり過払を続けてきたことの要因には会社側の対応もあげられるのではないかと思われます。この点を上記1)及び2)に照らしあわせてみると、さかのぼって「相殺」することは容易ではないように見受けられます。
(2)一方、「労働者の合意」によって、かかる「相殺」に当たることも考えられます。但し、当該合意の有無については、単に相殺を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく、これによって労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも判断されるものと認識されます。
本件、これを踏まえれば、当該労働者から、「出勤退勤の移動時間も勤務時間として勤怠システムで打刻をしてきた理由。打刻ルールは知らなかったのか。会社側に落ち度があると思うのであれば、その内容。」、「さかのぼって相殺されることについての考え方。相殺金額やスケジュールについて意向があるのであれば、その内容。」等を丁寧に聴取し、話し合いによって、「相殺」の有無、「相殺の場合」の金額、スケジュールを決めていくことが考えられます。その際、上記(1)に留意することが肝要であると考えられます。
投稿日:2025/11/18 06:06 ID:QA-0160784
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
従業員本人から、過払い分の賃金を返還することについて明確な同意を得られた
上であれば、遡っての給与控除は可能です。
一方的な控除は、労使協定で明確に給与控除に対する定めを明記していない場合、
賃金全額払い違反の争点となり得るリスクもありますので、同意書の取得も必須
であります。
ノーワーク/ノーペイの原則はあるものの、支払いを行ってしまったことには、
会社側(管理監督者含む)の責任もありますので、慎重にご対応ください。
投稿日:2025/11/18 07:42 ID:QA-0160786
プロフェッショナルからの回答
対応
>打刻ルール(出勤退勤の移動時間はということで、入社時研修や人事総務からの明確な指導が行われていたのであれば、本人が意図的に申告したことになります。
一方、入社手続き関係書類の束の一部のような、単なる情報提示だけであれば、重く会社の責任も問われるでしょう。
特に勤怠管理責任を持つ直属上長はなぜ6カ月も放置していたのか、入社直後など不慣れな状況での管理責任は大きいでしょう。
こうしたことから過去にさかのぼって一方的に控除はできませんので、あらためて指導を徹底すること、それでも収まらなければ話し合いで返還を説得することと思います。(その際には全額でなくとも会社の責任相殺は不可避と思われます)
投稿日:2025/11/18 09:40 ID:QA-0160797
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
まず、会社としても、毎月、労働時間管理していないことは、問題です。
ただし、不当利得となりますので、
遡って返還してもらうことは可能ですが、
返還方法については、一方的に控除するのではなく、本人に説明のうえ、
毎月の返還額等は合意のうえ、控除してください。
投稿日:2025/11/18 12:57 ID:QA-0160817
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
問題はありません。
事の起こりは今さら議論しても始まりませんが、本来、支給すべきでないものを支給しているわけですから、不当利得して返還請求が可能になります。
ただし、全額一括返済となれば本人の経済生活に与える影響も少なくはないでしょうから、本人とよく相談したうえで、返済方法(給与天引き、直接現金払い等)、毎回の返済可能額、回数等で合意し、書面を交わしておくことです。
投稿日:2025/11/19 10:16 ID:QA-0160864
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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