裁量労働制とフレックス制の処遇について
毎々お世話になっております。
現在、裁量労働制とフレックスタイム制の協定書を見直しております。
制度としては、フレックスタイム制からより高い成果が期待される裁量労働制に移行する時には基本給に差をつけるようにしています。その差額は公平を期すために一律に一定時間の賃金に相当するようにしていますが、その差額の賃金分(=労働時間)は協定書に書くべきか否か、アドバイスをいただきたいと思います。
投稿日:2025/07/16 01:01 ID:QA-0155485
- トッシー82さん
- 東京都/半導体・電子・電気部品(企業規模 11~30人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
賃金に関することは、協定書ではなく、賃金規程へ規定する方が良いでしょう。
また、基本給に差をつけるということですが、裁量労働制適用者に対する、
みなし労働時間が起因するものであれば、基本給とは性格が別ですので、
裁量労働手当など、所定労働時間を超過する分を手当として分けて、
管理・支給をすることが望ましいです。
投稿日:2025/07/16 09:16 ID:QA-0155497
相談者より
毎々お世話になっております。
基本給と手当に分けることも検討するようにいたします。アドバイスありがとうございました。
投稿日:2025/07/16 10:02 ID:QA-0155510大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.結論
協定書に「賃金額(差額)」まで明記する義務はありませんが、見做し労働時間は必ず記載する必要があります。
ただし、差額賃金の趣旨が見做し労働時間相当の対価であることが明確であるほうが、運用上のトラブル防止に有効ですので、以下の方法で記載することが望ましいです。
2.協定書への記載事項(法令上)
労使協定で定めるべき項目は、労基法第38条の3第1項または第2項に規定されており、以下の事項が必須です:
対象業務の範囲
対象労働者の範囲
労働時間とみなす時間(=「みなし労働時間」)
対象者の健康・福祉確保措置
苦情処理措置
協定の有効期間など
したがって、「みなし労働時間」は明記が必須ですが、
基本給や差額賃金の金額そのものは、協定書上の記載義務はありません。
3.差額賃金に関して記載を検討すべきケース
制度移行に伴って、差額賃金を一律に支給している場合には、以下の理由でその趣旨(=「みなし労働時間分の対価であること」)を付帯的に明記することを推奨します:
理由:
従業員や監督官庁に対して、賃金構成の透明性が高まる
過重労働や固定残業代との混同を防止できる
裁量労働制廃止時の賃金調整にも説明根拠となる
4.実務的な記載例
たとえば、協定書または別添資料に次のように記載することが実務上有効です:
「みなし労働時間は1日○時間とし、これに基づく労働時間分の対価として、当該対象者の基本給に○○円(○時間相当額)を加算して支給することとする。」
また、協定書そのものではなく、就業規則の「賃金規定」や「裁量労働制運用規程」に定め、労使協定書にはその規程を準用・引用する形でも問題ありません。
5.まとめ
項目→記載義務→実務上の記載推奨
みなし労働時間→必須→必須
差額賃金の金額→義務なし→趣旨明記を推奨(透明性・トラブル防止)
差額賃金の根拠→義務なし→「○時間相当」など明記を推奨
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/07/16 09:16 ID:QA-0155498
相談者より
毎々お世話になっております。
詳細なご回答ありがとうございます。大変参考になりました。
投稿日:2025/07/16 10:05 ID:QA-0155511大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、勤務態様で賃金が変わるのは当然ですし、異なる制度間の賃金差額等を直接記載される必要性はございません。
勿論重要な変更になりますので、事前に賃金のみならず労働時間等労働条件の詳細について丁寧に説明され、労働者と合意の上で適用される必要がございます。
投稿日:2025/07/16 12:42 ID:QA-0155518
相談者より
毎々お世話になっております。
規則に記載しなくても、丁寧な説明が必要なこと承知致しました。確かに過去の会社ではそのようにしていました。貴重なご意見ありがとうございました。
投稿日:2025/07/16 14:35 ID:QA-0155524大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご相談内容について回答いたします
例えば、専門型裁量労働制を導入するには、労使協定に以下の事項を定めなければなりません。
(1)制度の対象とする業務(省令・告示により定められた20業務)
(2)1日の労働時間としてみなす時間(みなし労働時間)
(3) 対象業務の遂行の手段や時間配分の決定等に関し、使用者が適用労働者に具体的な指示をしないこと
(4) 適用労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉確保措置の具体的内容
(5)適用労働者からの苦情処理のために実施する措置の具体的内容
(6)制度の適用に当たって労働者本人の同意を得なければならないこと
(7)制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしてはならないこと
(8)制度の適用に関する同意の撤回の手続
(9)労使協定の有効期間(※3年以内とすることが望ましい)
(10)労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意及び同意の撤回の労働者ごとの記録を協定の有効期間中及びその期間満了後3年間保存すること
ここでは、「1日の労働時間としてみなす時間(みなし労働時間)」は労使協定の記載事項となっていますが、フレックスタイム制との差額の賃金分は労使協定の記載事項とはされていませんため、協定書に書かなければならないという法的義務はありません。
ただし、専門型裁量労働制では、適用労働者への特別の手当の支給や、適用労働者の基本給の引上げなどを行い、相応の処遇を確保することが必要とされています。
そのため、御社では、裁量労働制に移行する時には基本給に差をつけるようにしており、その差額は公平を期すために一律に一定時間の賃金に相当するようにしていることを、適用労働者をはじめ、従業員に対して周知させるために、「その差額の賃金分」を協定書に記載することは、制度が求めている賃金設計の透明性が確保されますので望ましい状態といえます。
なお、賃金に関することについては、協定書に記載することもそうですが、就業規則の絶対的記載事項となっていますので、賃金規定等に明記しておく必要があります。
投稿日:2025/07/24 23:36 ID:QA-0155807
相談者より
毎々お世話になっております。
裁量制の詳細なご説明、ならびに私見に対する法律に照らしたコメントなど、大変参考になりました。ありがとうございました。
投稿日:2025/07/26 13:31 ID:QA-0155831大変参考になった
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