ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社:
年齢も役職も関係ない。会社を変革したい人が内省を通してリーダーシップを学ぶ
ユニリーバ・ジャパン・Uリーダーシッププログラム(UJUL)とは(前編)

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役人事総務本部長

島田由香さん

「アウェアネス(気づき力)」の一貫で始まったUJUL

リーダーシップを学ぶ場として、「ユニリーバ・ジャパン・Uリーダーシッププログラム」(UJUL)を始めたきっかけは何だったのですか。

「リーダーシップ」という言葉はすっかり定着しましたが、当り前のように聞こえる言葉ほど難しいものはありません。自分にとってどのような意味をなすのか、しっかりと腹落ちさせる必要があります。なぜなら、必ずしも絶対的な答えがないからです。だからこそ、組織を率いる立場にある人は、自分と会社にとってリーダーシップとは何なのかを定義し内在させることが重要です。そして、それを組織の人たちに伝え、理解してもらうことが必要です。

実は、UJULはリーダーシップに関する取り組みを行おうとして、始めたわけではありません。最初に考えたのは変革(イノベーション)です。いったいどうすればこの会社に変革を起こすことができるのかということが、4~5年前から私の頭の中にずっとありました。より深いところで変革を起こして、会社としての土台をゆるぎないものとし、会社を強くしていきたいと考えていたんです。

ユニリーバ・ジャパンが勝っていくためには、製品における変革が大事です。常に新しい製品、より良い製品を提供していく必要があります。私は組織にもそういった点が必要だと思っています。単に組織構成を変えたり、人を入れ替えたりするということではありません。社員一人ひとりが良い方向へと変わっていくことができれば、必然的に組織に変革が起こると考えています。そのための仕組みを、どのように作っていけばいいのか。それが形になったのが2014年のUJULでした。

2014年は、人事で「アウェアネス(気づき)」というキーワードの下、いろいろな取り組みを行いました。最初に行ったのは、人事というチームをもっと強くすることです。どうしたら人と組織に対して良いサービスを提供できるのか、人事のあり方とはどうあるべきなのかを、チームのメンバー全員で考えました。そのプロセスは今でもまだ続いています。私たちも毎日進化していますから、きっと終わることはないのだと思います。この取り組みの中で外部からいろいろな人を招いて、人事メンバーのみならず社員の「アウェアネス」をもっと高めていこうという取り組みをスタートさせました。その一環で始めたのが、UJULです。

島田由香さん Photo

 UJULは、どのようなプロセスを経てスタートしたのですか。

「アウェアネス(気づき)」を実現するにはどうすればいいのか、以前から懇意にさせていただいていた合同会社CCCの由佐美加子さんと、いろいろと議論しました。変革を起こすとはどういうことなのか。また、変革を起こすには気づきが必要だけれど、どのように自分自身の内面を振り返ればいいのか。そういった話を、幾度となく繰り返しました。そして、最終的に由佐さんが展開されている内省への取り組みのアプローチと融合させ、UJULを企画しました。

最初は、私自身も含めたボードメンバーから、変革を起こすリーダーシップの研修を行おうと考えていました。組織のトップから変わることが、変革を起こすには一番早いと考えたからです。しかしある時、下から変革を起こしたらどうだろうか、と思い付いたのです。上からではなく、組織の中にいる一人ひとりが内面から変わることが、組織に変革をもたらすのではないかと。

これは私にとって大きな気づきでしたが、ボードメンバー全員がもろ手を挙げて賛成というわけではありませんでした。下からの変革はこれまで行ったことのない取り組みなので、確かに、結果がどう出るかは分かりません。そこで最後は、「私を信頼して任せてほしい」とお願いしてスタートしました。

その時、私が考えたのは、会社に変革を起こしたい人、自分のリーダーシップをさらに強化したいと考えている人、そして自分自身も変えたいと思っている人を育成していこう、ということでした。そこで、研修の受講者はそういった志を持っているなら誰でもいいことにしました。年齢、役職、部署も全く関係ありません。ところが、そのことに対して一部のボードメンバーから、なぜ非管理職を入れるのか、非管理職に対して内省を促してリーダーシップを強化することに意味があるのか、という懸念が出てきたのです。しかし、トップマネジメントが下から変革を起こすということを信じなければ、組織は何も変わりません。経営層が自社の社員を信じ、とにかくチャレンジさせてみて、絶対にできると信じることが、組織では非常に重要だと思います。ピグマリオン効果(教師の期待によって学習者の成績が向上すること)と同じことです。初めてのことで不安や懸念の声もありましたが、UJULを推進していくことにしたのです。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

となりの人事部

人事・人材開発において、先進的な取り組みを行っている企業にインタビュー。さまざまな事例を通じて、これからの人事について考えます。

会員登録をすると、
最新の記事をまとめたメルマガを毎週お届けします!

この記事ジャンル リーダーシップ
この記事を既読にする
  • 参考になった0
  • 共感できる0
  • 実践したい0
  • 考えさせられる0
  • 理解しやすい0

となりの人事部のバックナンバー

企業人事部の取り組みに関するニュース

関連する記事

【用語解説 人事辞典】
ヴント曲線(ブント曲線)
職務特性モデル
プライミング効果
マクレランドの欲求理論
マタイ効果
内発的動機づけ
静かな退職(Quiet Quitting)
心理的資本(Psychological Capital)
企業にとってミッションが必要な理由
目標設定理論