転職者と企業のすれ違い 紹介におけるマッチングの難しさとは
紹介手数料がゼロになるケースも…… 短期間での退職は誰に問題があったのか
転職者が入社して働きはじめた後に、不幸にしてミスマッチが起こるケースは少なくない。もしミスマッチが誤解によるものなら、話し合いで解決することは可能だ。その時に企業と転職者の仲介役になるのも、人材紹介会社の重要なサービスの一つである。しかし、話がこじれて双方に不信感が生じ、修復できない場合もある。早期退職となれば紹介手数料の大幅な減額は避けられない。
個性派人材に即日内定が出る
「フリーランスで仕事をされていた期間が長い方ですが、技術力は十分にお持ちです。一度お会いになりませんか」
その日、私が紹介したMさんはIT系の開発エンジニアだった。求人の多いインターネットのセキュリティー分野の経験者である。実績の詳細を見ると、あの企業にもこの企業にも推薦したくなる人材だ。しかし、同時に紹介が難しいかもしれないなと思う要素もあった。それは、この数年フリーランスとして個人で請け負った仕事だけを行っていたことだ。しかもかなりの個性派。転職相談にも、無精ひげを生やし、カジュアルなリュックサックを背負って現れたほどだ。こういうタイプのエンジニアは、「技術力はあるかもしれないが、組織の中でチームプレーができるのか」という目でみられやすい。大手企業に採用されることは難しいだろうなと私は思った。
そこで、私は独立系のIT開発会社・C社を紹介した。この会社なら技術担当の副社長と直接、人材採用の話ができる関係にある。Mさんも「もともとベンチャー出身ですから大手にはこだわりませんよ」と言ってくれたので、副社長へダイレクトにMさんの資料を送ってみた。副社長から電話がかかってきたのはその翌日だった。
「面白い経歴の方だけど、現在は会社勤めはされていないのかな?」
私は、ぜひ直接会って実力を見て欲しいと訴えた。
「わかりました。ではいつならご都合がつきますか」
こうしてセッティングした面接で、Mさんは即日内定となった。そのスピードぶりにこちらが驚いたぐらいだ。やはり技術力が評価されたのだろうか。自分の考えたマッチングが「どんぴしゃ」で決まったので、私はすっかり嬉しくなった。しかし、C社からはある条件が提示された。
「最初の1ヵ月は契約社員でお願いします。ずっとフリーで仕事をされていた方なので、組織にうまく順応できるか、お互いに試用期間があった方が安心できると思いまして……そのことはMさんにも伝えています」
気になったのでMさんにも確認してみる。
「年収さえ希望通りなら雇用形態は何でも構いません。さっそく明日から出社して欲しいと言われました」
難しい人材ではないかと思ったが、即日内定、翌日出社だ。すべてがうまく運びすぎていたが、その時私の脳裏には「好事魔多し」ということわざは、浮かんでこなかったのである。