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人材採用“ウラ”“オモテ”

キャリアアドバイザーの腕の見せ所
求職者のキャリアの幅を広げる「提案型紹介」
未経験でもキャリアを活かせる!? 理系人材への「提案型紹介」

人材紹介会社のキャリアアドバイザーにとって腕の見せ所。それは、「提案型の紹介」ということになるだろう。人材紹介は基本的に求職者の志向に合った仕事を紹介するサービスだが、提案型の場合は、これまでのキャリアを活かせる「本人が思いもしなかった職種や業種」を案内することもある。求職者にとっては新しいチャレンジとなる場合もあるため、すぐにその意図を理解してもらえるとは限らない。

研究職から技術営業職への転換

「Bさんの研究職の経験を活かせる仕事として、こういう方向性も考えられると思うんです。ちょっと意外かもしれませんが、いかがでしょう」

私が紹介したのは理化学機器のコンサルタント、分かりやすく言うとセールスエンジニアの仕事だった。

Bさんは、前職から引き続いて研究・開発の仕事を希望している。しかし、昨今はメーカーなどでも研究所の業務を縮小するケースが多い。なかなかイメージ通りのポジションがない状況だった。こういう時には視点を変えて、少し違う仕事を提案することにしている。

「セールスの仕事ですか。でも、私は営業の経験がまったくないんですよ」

Bさんは若干戸惑っている。しかし、なぜ自分にその仕事が紹介されたのかということには、関心を持ってくれたようだった。

「実はこの会社のセールスエンジニアは、全員が理系出身なんです。Bさんのように前職が研究職で、営業はまったく未経験という方がほとんどだそうですよ」

紹介された人は意外に感じるようだが、こういう企業は決して珍しくない。研究者や開発エンジニアなどが使う業務用の機器、ソフトウェアなどは専門性が高く、文系出身の営業担当者では、ユーザーの質問に的確に答えられないからだ。そのため、同じような製品を使って研究や開発を行った経験がある理系出身者を技術営業として採用することが多い。

「特色のある製品を扱っていますから、売り込むというよりも、どのように活用したら研究がスムーズに進むかといったことを、ユーザーに伝える業務が中心です。そのため、職種名も『コンサルタント』になっているんです。確かに自分自身が研究や開発を行う仕事ではありませんが、最先端の研究に取り組んでいる企業や大学に出向いて、いろいろなアドバイスをする仕事なので、非常に刺激を受けるそうですよ」

「特色のある製品を扱っていますから、売り込むというよりも、どのように活用したら研究がスムーズに進むかといったことを、ユーザーに伝える業務が中心です。そのため、職種名も『コンサルタント』になっているんです。確かに自分自身が研究や開発を行う仕事ではありませんが、最先端の研究に取り組んでいる企業や大学に出向いて、いろいろなアドバイスをする仕事なので、非常に刺激を受けるそうですよ」

こうした仕事のやりがいはその会社を訪ねた時に、大手メーカーなどから転職してきたコンサルタント(セールスエンジニア)たちが実際に語っていたことだ。彼らはとても活き活きと新しい仕事に取り組んでいるように見えた。年収もアップしたという人が多かった。

「そういえば前の職場にも、機器の会社から説明する人が来ていましたね」

Bさんは仕事について、ある程度理解してくれた。しかし、その日は「もうしばらく研究職で探してもらえませんか」という返事だった。残念ながらBさんには、提案したコンサルタント職の面白みが伝わらなかったのかもしれない。

ポイントは「向いている人材」を見抜くこと

研究職の中途採用ポジションはあまり多くないが、研究・開発部門に機材などを販売する企業の求人は常に多い。同じような理系のバックグラウンドが求められる仕事だが、希望する人の数が少ないのだ。

「理系出身者は、基本的には自分で研究や開発を行いたいんです。大学や大学院時代から、ずっと取り組んできているわけですから」

元研究職の人にもそんな話を聞いたことがある。なかには、セールスエンジニアの仕事を紹介されると半分怒ったような口調で断る人もいる。

「こういった仕事があることは知っています。でも、私たちはその仕事を『コンサルタント』だと思ったことは一度もありません。確かに最新の機器やソフトを扱う仕事ですが、本当に最先端の技術について、彼らから教えてもらうことがあるとはとても思えないのです」

そこまで言われると、こちらとしても「この紹介は本当に正しいのだろうか」という気になってくる。しかし、現在コンサルタント(セールスエンジニア)としてやりがいを感じながら働いている人たちが大勢いることも事実なのだ。

「そこで迷ったり拒否したりする人には無理でしょう。研究や開発、設計が一番偉くて、それが出来ない人材がセールスやサポートを行っているのだ…という階層意識が強い人は、説明しても考え方が変わることはありません」

こう話すのはBさんを紹介しようとした理化学機器会社の人事課長だ。そういう考えを持っている人材を根気よく説得して採用しても、結局はうまくいかないことが多いのだという。

「自分で研究するよりも、最先端の研究開発の現場にコンサルタントとして携わる面白さを感じてくれる人は必ずいます。今の当社の社員のようにね。ただ、ずっと研究や開発を行ってきた人が、そういう新しい可能性に自分で気づくことは少ないんです」

だからこそ、人材紹介会社による「提案型の紹介」が必要なのだという。実際、この理化学機器会社では、中途採用の100%が人材紹介会社経由で決まるそうだ。

「頼りにしてますよ」と人事課長は言ってくれた。

理系出身なら誰でも興味を持つ仕事ではない。求職者に関心を持ってもらえるような“意外性のあるキャリア” を提案すること――それこそ、キャリアアドバイザーの腕の見せ所なのだ。


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