採用活動に表れる企業風土
採用活動には企業それぞれのスタイルがある 「手書き履歴書」の提出を求められた求職者の反応は?
少し前にネット上で「手書き履歴書」の是非が話題になった。中途採用においては、応募書類に「手書き」を求める企業がかなり少数派になっているが、まったく無くなったわけではない。また、新卒採用に際して「エントリーシートは手書きで作成」と指定している企業は少なくなく、「文字から人柄が読み取れる」という考え方は、一部の企業の中に深く根づいているようだ。実は、こうした細部に表れる企業風土は、企業と人材のマッチングを考える上での重要な判断材料にもなる。
今も残る「手書き履歴書」
「よろしくお願いします。こちらが履歴書と職務経歴書です」
ある日の転職相談でのこと。差し出された書類のうち、履歴書は市販の用紙に手書きしたものだった。職務経歴書の方はしっかりとパソコンのワープロソフトで作られているから、ITスキルがないわけではない。おそらく手書き履歴書が「正式」なものだと思い、わざわざ手間をかけてくれたのだろう。
転職希望者のうち、このように履歴書を手書きしてくる人はとても少なくなった。中途採用、特に人材紹介に際しては履歴書も職務経歴書もすべてパソコンで作成するのが一般的なので、手書きの履歴書を持ってくるのは、転職が初めてという人が多い。若い人にも多いが、新卒時の就職活動の際にエントリーシートを手書きで作成した経験が大きく影響しているのかもしれない。
「ありがとうございます。せっかく手書きで作成されたのに恐縮ですが、実は中途採用の場合、履歴書もパソコンで作成するのが一般的なんです。志望動機の欄などを応募先にあわせて書き換える際にも、ワープロソフトの方が便利ですしね」
「そうなんですか。知りませんでした。さっそく作り直してすぐにお送りします」
ところが、逆に手書き履歴書の作成をお願いしなければならないケースもある。企業側が「手書き履歴書」を指定してくる場合だ。書類選考時はワープロでもいいが、「面接時に手書きを持参のこと」というパターンもある。
この場合もやはり、「文字を見ると人柄がわかるから」という理由が多いようだ。しかし、文字で本当に人柄がわかるのだろうか。候補者の人柄を知りたいなら、簡単な適性テストを実施した方がよほど信頼性の高い結果が出るのではないか。そんな疑問を懇意にしている企業の採用担当に投げかけてみたところ、こんな答えが返ってきた。
「面接を担当する役員が、手書きの方がいいと言うのです」
慣例だから、ということらしい。別の企業では、「新卒採用が手書きなのでそろえている」というケースもあった。いずれも、履歴書が手書きでなければいけない理由としてはやや弱い気がする。そもそも、エントリー数が数百、数千と非常に多い新卒採用と、数名の候補者の中から選考していく中途採用を一緒にしているところに無理があるのではないだろうか。
とはいえ、企業側に求められれば、候補者にお願いするしかない。また、ほとんどの人は「わかりました」と言って、手書きの履歴書を用意してくれる。
しかし、中にはそうではない転職希望者の方もいた。