「人」基準から「仕事」基準へ
――日立製作所が取り組む、
グローバル視点に基づく
人財マネジメントとは
株式会社日立製作所 人財統括本部 副統括本部長(グローバル人財戦略担当)
山口岳男さん
人事のプロとしてどうあるべきか
日本企業がグローバルで勝っていくために、人事部門、そして人事責任者はどのようなことを心がけていけばいいのでしょうか。
人事部門の最大のミッションは、「マーケットで競合と勝つ強い組織と人財を作る」ということに尽きます。しかし、今まで日本企業には、そうした視点が欠けていたように思います。
強い組織と人を作るために一番重要なのは、現実のビジネスのことが分かっていることです。一般的に、人事部の人たちは制度が好きですから、制度ならいくらでも作ります。しかし、重要なのは制度を作った時の主旨・目的が本当に実行されて生かされているかを追いかけていき、それを検証してダメなら変えることです。人事制度とは、状況が変わればどんどん変えるべきなのです。
私たちが社会人になった頃は、あまり人事制度は変えるなと言われました。100年続く制度を作れと言われたりもしました。しかし、今はそんな時代ではありません。人事制度は経営マネジメントのツールなので、そういう視点から考えていくべきだと思います。
そうした中、いくつかの問題があります。例えば製造業では、効率を第一に考え、無駄を省いてどうやってスリム化し、安いコストでモノが作れるかを必死で考えてきました。しかし、そういうことを間接部門はあまり行ってこなかった。それは人事部も同じです。使っている時間・コスト・リソースは、オペレーションとアドミニストレーションが中心。そこを何とかしなければいけません。
二つ目は、今の経営課題にきちんとアドレスできているかということです。例えば、組織が40~50年前のままの組織になっていないか。実際、従業員管理の組織モデルのままであることは多いわけです。例えば、人事、労政、教育、安全、福利厚生など。もちろん、以前は従業員管理が経営課題の大きなテーマだったことは間違いありません。労使関係などもそうです。しかし、現在の重要な経営課題は、グローバリゼーションあるいは成長です。しかし、現状を見ると、7割もの人がオペレーション、アドミニストレーションを行っていて、経営課題に対してアドレスできていまない。これらの業務を減らす努力をして、空いた時間を戦略的なことに回していかないと、人の育成はできません。
こうした取り組みを開始した時に、「古典的勤労部門の解体」というスライドを作って、人財部門のスタッフに見てもらいました。もちろん、反発も受けました。人財部門の改革における最大の敵は、実は自部門なのです。そのため、自部門をどうやって味方につけるかは重要なポイントです。15~20%くらいを味方にすればいけると思います。残りの40~60%は、必ずこちらに来ますから。
今、弊社が取り組んでいることは、サクセスストーリーではありません。オン・ゴーイングで、日本はもちろん、海外でもいろいろなことが起きています。コミュニケーションの問題もあるし、一筋縄ではいかないことがたくさんあります。それでも、25万人もの人材の情報ががデータベースに入りました。「グローバルグレード」では、4万5000ポジションがマッピングされました。「従業員サーベイ」では、14万人が参加し、採用のアプリケーションやグローバルパフォーマンスパフォーマンスというアプリケーションも稼働しています。進んでいるところは、かなり進んでいます。
今回、日本の人事部「HRアワード2013」の企業人事部門個人の部最優秀賞を受賞し、大変驚きましたが、私たちが人事部門として行っていることに対して、エールをいただいたのだと思っています。課題への対応はまだ途中の段階であり、「過去形」ではありません。表彰式でもお話ししましたが、現在、進めている人材マネジメントのグローバル・プラットフォームをどうやって実行し、どうやってビジネスに貢献していくのかが、この1~2年は問われると思います。2015年には、現在行っている取り組みがすべて「過去形」となり、もう一度、このような賞をいただくことができるように、努力していきたいと思っています。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。