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【“うっかり5年超え”に注意が必要!】無期転換ルールに対応した「定年退職日」と「再雇用終了日」の定め方

特定社会保険労務士

鳥井 玲子

就業規則等で定年および定年後の再雇用制度について定める場合には、労働基準法、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下、「高年法」という)のほか、労働契約法および本年4月から施行される「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」(以下、「有期雇用特別措置法」という)に留意する必要があります。

本稿では、これらの法令と定年および定年後の再雇用制度の関連性に加え、定年退職日および再雇用終了日の定め方に関する実務上の留意点を見ていきたいと思います。

1. 高年齢者雇用安定法との関係

(1)定年と高年法

高年法8条により、高年齢者が従事することが困難であると認められる業務(具体的には施行規則で「坑内作業の業務」と定められている)以外の業務に従事している労働者について定年の定めをする場合には、60歳を下回ることができないとされています。

高年齢者雇用安定法との関係

条文上も「定年の定めをする場合には」とある通り、定年制は、必ず設けなくてはならないものではありませんが、9割以上の企業で定年制が設けられており(厚生労働省「平成26年就労条件総合調査」(以下、「就労条件総合調査」という)によると定年制を定めている企業割合は93.8%)、このうち8割以上の企業で定年年齢を「60歳」としています(「就労条件総合調査」で一律定年制を定めている企業のうち、「60歳」を定年年齢としている企業割合は、81.8%。図表1参照)。

なお、同調査によれば、企業規模が大きくなるほど定年の定めをしている企業の割合が高くなり、定年年齢を60歳としている企業の割合も高くなります。逆に規模が小さくなるほど定年を設けていない企業が多くなり、60歳を超えた定年年齢を設けている企業の割合が高くなります(図表1参照)。

(2)定年後再雇用制度と高年法

次に、定年後の再雇用制度については、高年法9条に「高年齢者雇用確保措置」として定めがあります。すなわち、65歳未満の定年の定めをしている事業主は、その雇用する労働者の65歳までの安定した雇用を確保するため、(1)当該定年の引上げ、(2)継続雇用制度の導入、(3)定年の定めの廃止の措置のいずれかを講じなければならないとされています。

このうち「(2)継続雇用制度の導入」により雇用確保措置を講じている企業が約8割というのが実態ですが(図表2参照)、この継続雇用制度には、(イ)・(ロ)の2種類があります。

(イ)再雇用制度
定年年齢到達者を一旦退職(雇用契約を終了)させ、就労形態を嘱託、臨時、パートタイマー(短時間労働者)などに変更して、新たに雇用契約を締結することにより、再び雇い入れるもの。

(ロ)勤務延長制度
定年年齢を設定したまま、定年年齢到達者を退職させることなく(雇用契約を継続させたまま)、引き続き雇用するもの。雇用契約は定年前のものが適用される。

両者の違いは、再雇用制度では一旦雇用契約を終了させた後、新たな内容の雇用契約を締結するのに対し、勤務延長制度では当初の雇用契約を継続延長する点です。実態としては、再雇用制度を導入している企業の割合が圧倒的に多いのが現状です(「就労条件総合調査」によると「勤務延長制度のみ」と回答した企業の割合は10.2%、「再雇用制度のみ」は72.1%、「両制度併用」は11.8%。図表3参照)。

そして、再雇用制度を導入している企業のうち、多くが契約期間を1年以下とする有期雇用契約を反復更新する方法をとっており、その最高雇用年齢(以下、「再雇用終了年齢」という)を「65歳」としています(「就労条件総合調査」によると、再雇用制度を導入している企業のうち、最高雇用年齢を定めている企業割合は82.5%で、そのうち最高雇用年齢を「65歳」としている企業割合は93.2%)。

【図表1】一律定年制を定めている企業における定年年齢階級別企業割合(単位:%)
年・企業規模 一律定年制
を定めて
いる企業(注1)
 
定年年齢階級
60歳 61歳 62歳 63歳 64歳 65歳 66歳以上 (再掲)
65歳以上
平成26年 [98.9] 100.0 81.8 0.8 1.0 0.7 0.1 14.5 1.1 15.5
25 [98.4] 100.0 83.0 0.3 1.2 0.9 0.6 12.5 1.5 14.0
24 [98.8] 100.0 82.7 0.2 1.1 0.9 0.5 13.6 1.0 14.5
23 [98.9] 100.0 82.2 0.5 1.1 1.4 0.7 13.1 0.9 14.0
22 [98.7] 100.0 82.7 0.5 1.1 1.9 0.5 12.3 1.0 13.3
企業規模 1,000人以上 [97.9] 100.0 92.2 0.4 0.4 1.7 - 5.3 0.1 5.4
300~999人 [98.4] 100.0 90.5 0.8 0.6 1.3 0.1 6.6 0.2 6.8
100~299人 [98.8] 100.0 87.2 0.6 1.0 1.1 0.3 9.5 0.3 9.8
30~99人 [99.0] 100.0 79.1 1.0 1.1 0.6 0.1 16.9 1.4 18.3

(注1)[ ]内の数値は、定年制を定めている企業のうち、一律定年制を定めている企業割合である。

【図表2】雇用確保措置実施企業における措置内容の内訳(社、%)
(1)定年制の廃止 (2)定年の引上げ (3)継続雇用制度の導入 合計((1)+(2)+(3))
31人以上総計 3,850 (3,736) 22,317 (21,072) 117,012 (107,259) 143,179 (132,067)
2.7% (2.8%) 15.6% (16.0%) 81.7% (81.2%) 100.0% (100.0%)
  51人以上総計 1,697 (1,686) 12,499 (11,716) 80,879 (74,357) 95,075 (87,759)
  1.8% (1.9%) 13.1% (13.4%) 85.1% (84.7%) 100.0% (100.0%)

(注2)( )内の数値は、平成25年6月1日現在の数値。
「合計」は高年齢者雇用確保措置を実施済みと回答した企業の数に対応している。
「(2)定年の引上げ」は65歳以上の定年の定めを設けている企業、「(3)継続雇用制度の導入」は定年年齢は65歳未満だが継続雇用制度の年齢を65歳以上としている企業を、それぞれ計上している。

資料出所:「平成26年『高年齢者の雇用状況』」

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