『ビジネスガイド』提携

事故・機密漏洩等への対応は?
「インターンシップ」導入の際の法的留意点と企業のリスク管理 (3/4ページ)

ロア・ユナイテッド法律事務所 弁護士 竹花 元

2. インターンシップ生の法的地位

1 労働者にあたるとどうなるか

インターンシップ生が労働者にあたる場合は、労働関係法規の適用があります。

労働者とみなされる場合には、賃金その他の労働条件に関して、労基法、最低賃金法等の労働基準関係法令が適用されるとともに、実習中の事故に関しては労災保険法の適用があることに留意する必要があります(平9.9.18基発636号等)。

2 労働関係法規適用の有無の判断基準

(1) 労働者とは
インターンシップとの関連では、労基法9条の「労働者」に該当するかが最も大切です。なぜなら、労基法の労働者概念は、単に労基法の適用だけにとどまらず、労基法を基礎とした労働関係諸規定(男女雇用機会均等法、最低賃金法、労働安全衛生法、労災保険法など)の適用範囲を確定する概念としても用いられているからです。

そして、(1)仕事の依頼への諾否の自由の有無、(2)業務遂行上の指揮監督の有無、(3)勤務時間・勤務場所の拘束性の有無、(4)他人による代替性の有無、(5)報酬が時間単位で計算されるなどの報酬の労務対償性、(6)事業者性の有無、(7)公租公課の負担等を総合的に考慮して、「労働者」(労基法9条)に該当するか判断されます。

(2) 行政解釈
「研修」中の事故に対して、行政解釈は、研修生が労基法9条の「労働者」に当たるかどうかという観点から、いくつかの判断を示しています(労働者と認めた例として、造船会社で実施中の商船学校の生徒:昭23.1.15基発49等、否定された例として、工学部学生の工場実習:昭57.2.19基発121)。

行政解釈を要約すれば、研修中に労災保険の適用が認められるのは、

  1. 研修生に支払われる金銭が、一般の労働者の賃金並みの金額であること
  2. 実際の研修内容が、受入企業の本来業務の遂行を含むものであること
  3. 研修が使用者の指揮命令の下に行われていること

の3つの事実があることが挙げられていますが、実際は、その実態から判断されます(例えば、(1)と関連して、最賃法を下回っている金銭給付しかなされていなくても、企業が、労働者を脱法的に「インターンシップ」として利用することも想定されます。そのような場合は、(2)(3)の実態から判断すべきで、「最賃法を下回っているから労働者ではない」とはいえないと考えられます)。

例えば、本格的に業務にあたる就労をしていないが、企業に出社して実際に労働を行い、出社の義務を課したり、遅刻、早退に制裁を課したりするようであれば指揮命令関係にあり、一時的な労働を行う関係(一種の短期アルバイト)に該当するでしょう。しかし、賃金を支払うほどの労働の実体がなく、単に職場見学や職場体験程度であれば、アルバイト以下であると考えられ、労働関係にはなく、給与支払の必要もないと考えられます。

このように、入社前研修でも労災保険の適用には慎重な厚生労働省の態度からすると、インターンシップでは一層、労災保険の適用はなしとされる場合が少なくないでしょう。

(3) 裁判例
近時の裁判例(ヒューマントラスト事件・東京地判平成20.3.26労判970号94頁)は、研修参加者が労働者に該当するか(労基法22条の解雇予告義務を負うか)否かという点が1つの焦点となりました。

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問題となった研修日業務には、応募者の中から、適性のある者を選抜するという側面があり、会社のワークス部門のオペレーターから電話で研修参加者全員が採用されるわけではないことの告知を受けたうえで本件研修日業務に参加していました。この場合個々の研修参加者は、上記事情を了解したうえで研修に参加したことになり、企業との間で、本件研修日業務に関して1日の労働契約を締結したという評価をすることは困難であって、採用の前提となる研修実施を労働契約の締結であると評価することはできないから、原告の本件解雇予告手当請求には理由がないとされました。

本裁判例によると、「応募者の中から、適性のある者を選抜するという側面」があることを明示されている場合ですら、「研修参加者全員が採用されるわけではないことの告知」がなされているときは、労働契約の締結とは評価できないことになります。インターンシップにおいては、前記「(4)採用直結型」の類型(この類型は比較的、本裁判例に近い)があるとはいえ、より一層、「労働者」性が認められることが困難であるといえるでしょう。

3 労働者と認められない場合の受入れ企業の責任

仮に学生が「労働者」とは認められない場合にも、入社前研修中と同様、企業内での事故に対しては、労災保険の適用の有無にかかわらず、会社が学生に対し安全配慮義務を負うことは避けられず、事故についての過失が認められれば損害賠償の責任が発生することになります。

インターンシップを実施する企業としては、事故の可能性(リスク)を考慮して、どの程度まで踏み込んだ研修(見学にとどめるか、実習させるか)を実施すべきかを決定しなければなりません。


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