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従業員が協力したくなる!
リファラル採用のための制度設計&規定

7 従業員から採用候補者を紹介された後の制度設計

(1)被紹介者に対する配慮-紹介してくれた従業員との関係を壊さないために

従業員から採用候補者を紹介された場合、会社は、被紹介者に対して必要な通知を行い、面接等を行うこととなります。このとき、会社としては、被紹介者が従業員の友人・知人であることに十分な配慮をする必要があります。リファラル採用を成功させるためには、従業員と被紹介者との今後の関係を壊してしまうようなことは絶対に避けなければなりません。また、被紹介者に対し、「冷たい会社だ」 などといった印象を与えるようなことも、避ける必要があります。

まず、被紹介者に対する通知等は、一般的な応募者に対するものとは文面を変える必要があるでしょう。また、面接等をする場合も、冷たい態度で接することは避けるべきでしょう。そして、特に考慮すべきは、被紹介者を不採用とする場合です。不採用の理由は検討する必要がありますし、不採用の場合は連絡しない等の対応も避けるべきです。

(2)被紹介者に対する紹介者の責任

会社が被紹介者を採用し、その者が何らかの失敗をしたとしても、原則として紹介者に対する責任追及はできないでしょう。紹介者に対して損害賠償を請求することはもとより、減給したり、人事考課でマイナス評価したりすることも基本的にはできません。そのようなことができるとする制度設計は、従業員の意欲も奪う可能性があるため、リファラル採用を成功させるためにも避けるべきです。

8 リファラル採用を成功させるためのポイント

(1)従業員への周知

リファラル採用では多くの従業員の協力が不可欠です。一人の従業員が採用候補者として会社に紹介できる友人・知人にはおのずと限りがあります。そのため、協力してくれる従業員が多ければ多いほど、多くの採用候補者を集めることができます。

協力してくれる従業員を増やすには、会社として、リファラル採用を導入していること、会社がどのような人材を必要としているか等の情報を従業員に与えて周知することが必要です。その方法は、社内報、社内メール、勉強会の開催、社内イベントの開催等、会社ごとに適したものを選択すればよいでしょう。また、一度周知しただけでは浸透しない可能性もあるため、定期的に周知活動をする必要があります。「リファラル採用」という名称ではなく、従業員にとって馴染みやすいネーミングにして周知するのも一つの方法です。

ただし、従業員に紹介人数等のノルマを与えるべきではありません。従業員の過度な負担となるばかりか、ノルマ達成のために会社との相性を度外視した紹介が増える可能性もあるからです。

(2)従業員への必要なフォロー

前述の通り、リファラル採用を成功させるためには、従業員への必要なフォローを惜しまないことです。従業員は、紹介することに不安や負担を感じれば、紹介してくれません。従業員の不安や負担を減らすための努力が必要です。

そのためには、従業員に対して講習会等を開催したり、従業員が気軽に相談できる者を身近に配置したりすることも必要となります。さらに、採用候補者の紹介に必要な書類があれば、その書式は会社が作成して準備しておくべきです。従業員は、通常の業務に加えて紹介をするわけですから、従業員の業務負担を極力減らす環境作りを会社が積極的に行う必要があります。従業員が協力したいと思うような環境作りや従業員への配慮は欠かせないということを念頭に、会社に合う制度設計を検討してみてください。

『ビジネスガイド』は、昭和40年5月創刊の労働・社会保険の官庁手続、人事労務の法律実務を中心とした月刊誌(毎月10日発売)です。企業の総務・人事・労務担当者や社会保険労務士等を読者対象とし、労基法・労災保険・雇用保険・健康保険・公的年金にまつわる手続実務、助成金の改正内容と申請手続、法改正に対応した就業規則の見直し方、労働関係裁判例の実務への影響、人事・賃金制度の構築等について、最新かつ正確な情報を基に解説しています。ここでは、同誌のご協力により、2019年7月号の記事「リファラル採用の制度設計と規定」を掲載します。『ビジネスガイド』の詳細は、日本法令ホームページへ。

【執筆者略歴】
●井上 祐一(いのうえ ゆういち)
弁護士法人井上・菊永法律事務所代表弁護士。東京の大手弁護士法人での勤務を経て、現在に至る。代表弁護士として事務所に所属する弁護士を育成するとともに、企業法務や労働審判などの業務を取り扱う。最近では、働き方改革への対応も踏まえた労務セミナーの開催を事務所として積極的に行っている。


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