役割等級と人事評価
当社は人事制度の構築を検討しております。
役割等級制度を導入したいのですが、役割等級制度に合う評価基準というのは、会社目標に連動した業績評価基準であると認識しています。
ただ、下位等級の社員などは個人別に業績目標の設定が難しい状況です。業績目標を設定ができない場合、「仕事の量・質」という評価基準で評価してもかまわないものでしょうか?
また、役割等級制度の評価基準に能力を設定するのは制度として矛盾があるのでしょうか?
投稿日:2007/07/25 10:44 ID:QA-0009219
- *****さん
- 東京都/その他業種(企業規模 1~5人)
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
人事制度と会社目標の連動
■限られた紙面で大雑把な話になりますが、重要な人的資源を運用する人事制度は、どのような形の制度であれ、膨大な経営資源の運用管理を司る限りは、ご指摘のように「会社目標に連動」していなければなりません。言い換えれば、重要なコンポーネンツは経営目標から機能別にダウンロードしてくる必要があります。
■会社目標のどの部分に連動させるのか、上位者と下位者への連動のさせ方、評価に際してブレのでない基準書の策定、会社目標以外の要素は無視してもよいのか(ご引用の「能力を設定するのは制度として矛盾があるのか」を含む)など、基本方針あるはコンセプト作りにシッカリ時間をかけて、制度の基礎部分を固めることが大切です。
■最初のご質問に対する回答ですが、「業績目標を設定ができない場合」あってはならないのです。従って、内容のない「仕事の量・質」は、合言葉としては心地よくても、現実には、評価尺度がなければ評価項目にはなりません。
■「役割等級制度の評価基準に能力を設定するのは制度として矛盾があるのか」については、特に矛盾するとは考えていません。基本方針あるはコンセプト作りの段階でシッカリ議論しておかれることをお勧めします。
投稿日:2007/07/25 12:42 ID:QA-0009223
相談者より
ご回答いただき、誠にありがとうございます。
役割等級制度において、業績目標を設定できない状況があってはいけない、ということですが、会社目標からのダウンロードがどうしても難しい場合に、日々の業務(役割)を着実に行うことが、結果として会社目標の達成に貢献する、ということにはなりませんでしょうか?
投稿日:2007/07/25 17:31 ID:QA-0033691大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
人事制度設計の基本的な考え方
人事制度は、「評価をするため」に構築するのではありません。会社の考え方にそって、「いい仕事」をし、「いい職場」をつくるための基準を明確にすることが目的だと思います。
評価基準・賃金項目により、その会社の「考え方」が明確になります。以前在籍した外資系企業では、営業社員に「売上高に比例したインセンティブ」を支給していました。ある時、人事部門の私が、一番売っていた営業社員に「どうやって売ったんですか」と質問しました。その営業社員の答えは、「それを教えたら他の営業社員がまねをして、私のインセンティブが減るから教えません」とのことでした。この会社では「成功体験の共有」とか「人材育成」という考え方はない、と全員が思っていました。(役割)等級の設定は、賃金額に連動します。したがいまして、当然、「能力・スキル」もかかわってきます。また、下位者に特定した、業績目標ですが、業績目標は評価の対象にしない方が、賢明だとおもいます。目標設定を研究していくと、目標には二つの種類があります。ひとつは、「コントロールできる目標(成果)」で、もう一つは「コントロールできない目標(成果)」です。売上高のような業績目標はコントロールできない目標に分類されます。コントロールできる目標には、「お客さまに対する価値の提供」「業務フローの改善」「能力開発」・・・などがあげられます。
投稿日:2007/07/25 15:24 ID:QA-0009226
相談者より
ご回答いただきまして、ありがとうございます。
ところで、先生は役割等級制度においては、下位等級の者に業績目標を設定しないほうがよい、というお考えでしょうか?
また、その理由をお教え下さい。
投稿日:2007/07/25 17:10 ID:QA-0033693大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
御社の戦略に応じて、柔軟な対応が可能
■役割等級とは?
>役割等級制度を導入したいのですが、役割等級制度に合う評価基準というのは、会社目標に連動した業績評価基準であると認識しています。
「役割」というには実は多少曖昧な概念ですが、一般的には、分担された職責(=成果責任)、または職務分掌のことを表していると考えられます。
したがって、役割等級だから評価は業績評価でなければならないとは一概には言えず、能力評価、ないしはプロセス評価等によって運用する制度構成もありうると思われます。
■「仕事の質・量」とは?
>ただ、下位等級の社員などは個人別に業績目標の設定が難しい状況です。業績目標を設定ができない場合、「仕事の量・質」という評価基準で評価してもかまわないものでしょうか?
「仕事の質・量」という評価基準があるのではなく、「仕事の質・量」を具体的に評価するために、業績目標等による目標評価を使うということではないでしょうか?
また、「下位等級」だから業績目標の設定が難しいのではなく、一般的には高度な職務内容ほど難しいのではないでしょうか。
■能力評価との適合性
>また、役割等級制度の評価基準に能力を設定するのは制度として矛盾があるのでしょうか?
1点目に申し上げた理由から、十分に検討の余地はあると思われます。
ポイントは、御社における「役割」の定義、及び能力評価の内容にあります。
一概に能力評価といっても、従来型の能力要素評価から、行動評価、バリュー評価、コンピテンシー評価まで様々ですので、実質的に仕事の成果を勘案しつつ運用する方法は、いくらでも可能です。
以上、ご参考まで。
投稿日:2007/07/25 18:01 ID:QA-0009231
相談者より
ご回答、ありがとうございます。
会社目標に連動する具体的な業績目標を設定しないで、「仕事の質・量」で評価する、ということは可能ということですね。
投稿日:2007/07/25 18:18 ID:QA-0033694大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
Re:御社の戦略に応じて、柔軟な対応が可能
ご返信ありがとうございます。
はい、業績目標に代わる具体的な評価方式を別途活用すれば、可能です。
その際、どうしても「仕事の質・量」ということに限定されるのであれば、何らかの目標や、業績基準を設定することになります。
投稿日:2007/07/25 18:23 ID:QA-0009233
相談者より
投稿日:2007/07/25 18:23 ID:QA-0033695参考になった
プロフェッショナルからの回答
下位等級者と業績目標
「責任・権限の範囲」ということを考えた場合、「業績」に対してどの範囲まで、「意思決定」ができるかが、ポイントになると思います。下位等級者の「役割」は一般的には「定型的な業務に対する判断」が許されているだけではないでしょうか?
・・・・・・・
目標設定で重要なことがあります。それは、「役割」という概念のとらえかたです。
<例>米国のサウスウエスト航空では、A空港からB空港に到着した飛行機は、10分後にA空港に向けて飛び立っています。「10分間ターン」という目標を掲げ実行しています。このコントロールできる目標を実行する時に問題になったことがあります。それは、「機内清掃をだれがするか」という「役割」の問題です。結論から言うと、「手があいている人がする」ということになりました。何が問題かというと、「パイロットと機内アテンダント」もこの手のあいている人に該当します。ところが、大手航空会社から転職してきた人達は、「それは私の仕事じゃない」「そんなことできっこない」といいはったのです。結局、みんなでやればできたのですが、このいいはってやらなかった人達は退職していったそうです。「目標と役割」の関係は、意識改革にもつながる深いものだと思います。
投稿日:2007/07/25 18:28 ID:QA-0009234
相談者より
回答ありがとうございます。
役割の設定の仕方次第で、目標が設定しやすくもなるし、難しくもなる、ということですね。
投稿日:2007/07/25 18:37 ID:QA-0033696参考になった
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
人事制度と会社目標の連動 P2
■着実に行うべき「日々の業務(役割)」にも、会社の経営計画の達成と同じベクトルが必要なのです。どんな些細な業務でも同じベクトルを持たせればダウンロードは可能です。日々の業務を着実に行うといっても反対のベクトルを持たせれば足を引っ張ることになります。
投稿日:2007/07/25 20:18 ID:QA-0009236
相談者より
明快な回答ありがとございます。
スッキリしました。
投稿日:2007/07/26 07:56 ID:QA-0033697大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
「会社目標に連動」という点について補足
補足です。
「会社目標に連動」という点が、御社内の検討ポイントとして重要なようですが、単に「連動」と言っても、いくつかの意味があるのではないでしょうか。
①「目標項目」「目標指標」レベルの連動
②「目標値」レベルの連動
すでに考慮されているように、②レベルでの業績目標の連動は、「下位等級」ではときに難しい事情もあるかと推察します。
ただ、①レベルでの連動、つまり目標の統合は、ある程度可能なのではないでしょうか。
具体的には、事業部門や組織系統の中での目標項目や指標には統合性も持たせつつ、それを部門内のどう展開するか(※目標値の配分)は、部門裁量に委ねるというような運用イメージになります。
ご参考まで。
投稿日:2007/07/26 07:00 ID:QA-0009239
相談者より
納得しました。
ありがとうございました。
投稿日:2007/07/26 07:59 ID:QA-0033700大変参考になった
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