手当に固定残業代を含めることの可否および制度変更の可否
以下2点についてご教示いただきたいです。
■手当に固定残業代を含めることの可否について
手当を支給する際に、その手当の中に固定残業代を含めて支給することは問題ないでしょうか。
また、問題がない場合、現在は手当に固定残業代を含めていませんが、含めるように変更することで、不利益変更となる可能性はありますでしょうか。
総額自体は変わらず、内訳が変わるイメージです。
【例】
現在 :〇〇手当 30,000円
変更後:〇〇手当 30,000円(うち30時間分の固定残業代6,888円を含む)
■車両手当の割増賃金の算定基礎への算入可否について
割増賃金の算定基礎に、下記の「車両手当」は含める必要があるか、または除外して差し支えないか、ご教示いただけますと幸いです。
金額によって取り扱いが変わる可能性がある場合には、その点についても併せて伺いたく存じます。
【車両手当】
・マイカー営業を行っている社員に対して毎月支給
・3か月の走行実績に基づき、3か月ごとに支給額を見直し
(例:4~6月の走行実績で算出し、7~9月の給与で支給)
・メンテナンス費用や任意保険料の実費補填の一部として支給
・業務におけるガソリン代は専用カードにて会社負担
投稿日:2025/12/12 21:21 ID:QA-0161961
- soumukaさん
- 東京都/不動産(企業規模 101~300人)
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本Q&Aは法的な助言・診断を行うものではなく、専門家による一般的な情報提供を目的としています。
回答内容の正確性・完全性を保証するものではなく、本情報の利用により生じたいかなる損害についても、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
具体的な事案については、必ずご自身の責任で弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.手当に固定残業代を含めることの可否および制度変更の可否
(1)手当の中に固定残業代を含めることの可否
固定残業代(みなし残業代)は、賃金の一部として支給され、かつ「時間外労働に対する対価」であることが明確に区分されていることが必要です(最高裁判例:高知県観光事件等)。
そのため、形式上「〇〇手当」という名称であっても、
固定残業代に該当する金額
対応する時間数(例:30時間分)
超過した場合は別途割増賃金を支払うこと
が就業規則・賃金規程・雇用契約書等に明確に記載され、実務上も区分管理されているのであれば、手当の中に固定残業代を含めること自体は可能です。
ただし、「手当30,000円」とのみ表示し、その内訳が不明確な場合は、固定残業代として無効と判断されるリスクが極めて高い点に注意が必要です。
(2)現在含めていない固定残業代を、後から含める変更の可否
ご質問のように、
総額は変えず、内訳のみを変更する
場合であっても、原則として不利益変更に該当する可能性があります。
理由として、
これまで「通常賃金」として扱われていた手当の一部が、
「時間外労働の対価」に性質変更されることで、
割増賃金単価や将来の残業代算定に影響を及ぼすため、
労働者にとって実質的に不利となる場面が生じ得るからです。
したがって、実務上は、
労働者本人の個別同意を取得する
就業規則・賃金規程の変更と周知を適正に行う
変更の合理性(制度趣旨、影響の程度、代償措置等)を整理する
といった対応を取らずに一方的に変更することは、紛争リスクが高いと言えます。
2.車両手当の割増賃金算定基礎への算入可否
(1)原則的な考え方
労基法施行規則第21条により、割増賃金の算定基礎から除外できるのは、
通勤手当
家族手当
住宅手当
など、「労働の対価性が弱いもの」に限定列挙されています。
車両手当はこれらに該当しないため、原則として算定基礎に含める必要があります。
(2)実費補填性が強い場合の例外
もっとも、実務上は、
業務に必要なマイカー使用
メンテナンス費用・任意保険料等の実費補填
走行実績に基づき金額が変動
といった事情から、実費弁償的性格が明確な場合には、算定基礎から除外できる余地があります。
そのため、
実費補填の趣旨を規程上明確にする
一定額固定ではなく、走行実績等に連動させる
生活補助・賃金補填的要素を排除する
といった整理がなされていれば、算定基礎不算入とする実務対応は一定の合理性があります。
(3)金額による取扱いの差
金額の多寡そのものよりも、支給趣旨・算定方法・実費との対応関係が重視されます。
高額であっても実費補填性が明確であれば除外余地があり、逆に定額・一律支給であれば算入対象となる可能性が高くなります。
以上のとおり、いずれの論点も「名称」ではなく「実質」と「制度設計の明確性」が判断の鍵となります。制度変更時には、規程整備と労働者への丁寧な説明が不可欠です。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/12/14 04:53 ID:QA-0161988
相談者より
ご回答いただきありがとうございます。
車両手当につきまして、下記の点について改めてご確認いただけますと幸いです。
・実費補填の趣旨を規程上明確にする
→具体的にどの点まで明確にする必要があるのかなど、可能な範囲でご教示いただけますと幸いです。
・一定額固定ではなく、走行実績等に連動させる
→現状、直近3か月の平均走行距離に応じて、5パターンに区分して支給しております。(例:1~1,000kmは〇円、1,000~2,000kmは〇円、など)
・生活補助・賃金補填的要素を排除する
→「実費補填の趣旨を規程上明確にする」という対応により、当該要素は排除されるというイメージでよろしいでしょうか。
また、現状は算定基礎に含めていますが、今後除外するとなった場合の対応やリスクもご教示いただけますと幸いです。
投稿日:2025/12/15 11:07 ID:QA-0162043大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
固定残業代
以下、手当に固定残業代を含めることの可否について、回答いたします。
(1)判例(医療法人社団康心会事件 2017年7月7日 最高裁判決)では、「労働者に支払われる基本給や諸手当にあらかじめ含めることにより割増賃金を支払うという方法自体が直ちに同条に反するものではない」とされています。
その際、時間外労働等の対価であると認めることができること、また、従来の手当に当たる部分と明確に区分されていることが必要であると認識されます。
(2)御提示いただきました「変更後」の記載につきましては、上記(1)に則るものであると考えられます。
(3)一方、従来の手当に当たる部分については30000円から6888円が減額され23112円になるものと認識されます。見方を変えれば、基本的には、これまでは「〇〇手当30000円+残業代」であったものが、変更後は「従来の手当に当たる部分+残業代で30000円」となり、不利益変更になりうるものと考えられます。
(医療法人社団康心会事件 2017年7月7日 最高裁判決)
以下の旨が述べられています。
※労働基準法37条が時間外労働等について割増賃金を支払うべきことを使用者に義務付けているのは、使用者に割増賃金を支払わせることによって、時間外労働等を抑制し、もって労働時間に関する同法の規定を遵守させるとともに、労働者への補償を行おうとする趣旨によるものであると解される。
※労働基準法37条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまるものと解され、労働者に支払われる基本給や諸手当(以下「基本給等」という。)にあらかじめ含めることにより割増賃金を支払うという方法自体が直ちに同条に反するものではない。
※同条の上記趣旨によれば、割増賃金をあらかじめ基本給等に含める方法で支払う場合においては、労働契約における基本給等の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要であり、上記割増賃金に当たる部分の金額が労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回るときは、使用者がその差額を労働者に支払う義務を負うというべきである。
投稿日:2025/12/14 20:49 ID:QA-0161999
プロフェッショナルからの回答
日本の人事部Q&Aをご利用くださりありがとうございます。早速ですが3つのご質問について順を追って回答申し上げます。
Q1.手当の中に固定残業代を含めてよいか?
A1.次のいずれの条件も満たせば可能です。
(1)通常労働時間の賃金部分と割増賃金に相当する部分が明確に判別できること
(2)実際に労基法第37条により計算した割増賃金が固定残業代を下回らないこと
(3)当該手当が時間外労働に対する割増賃金として支払われることが明確なこと
※労働条件通知書の絶対的必要記載事項に該当します。
Q2.手当に固定残業代を含めることは不利益変更か?
A2.労働条件の不利益変更に該当する可能性が高いです。
理由は、何等かの名目で支給されていた現行の手当が、時間外労働の対価に置き換えられることで、本来の手当が実質的に減少してしまうこと、また時間外手当の算定基礎が減額され、残業代の支払義務を相殺する効果を生じてしまうためです。
Q3.車両手当は割増賃金の算定基礎に含まれるか?
A3.車両手当の性質が賃金に該当するか、あるいは経費の実費弁償となるかによって扱いが変わります。
車両手当の計算根拠が、マイカーを業務使用する際に生じる維持費や損料(税金や保険料、オイル交換代、タイヤ代、減価償却費等)を補填するために支給されていることが明らかであれば、賃金とはみなされませんので、割増賃金の算定基礎に含める必要はありません。
一方でマイカー営業を行っている者に一律の額で支給される手当、あるいは経費の範疇を超えるような額の手当であれば、賃金とみなされます。賃金の場合は、次のいずれかに該当しない限り、手当の名称や金額の多寡に関わらず、割増賃金の算定基礎に算入しなければなりません。
<割増賃金の算定基礎から除外される手当>
・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当
・臨時に支払われる賃金
・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
以上雑駁な回答となりますが、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
投稿日:2025/12/14 22:44 ID:QA-0162001
相談者より
ご回答いただきありがとうございます。
下記の内容につきまして、具体的にどの点まで明確にする必要があるのかなど、可能な範囲でご教示いただけますと幸いです。
>マイカーを業務使用する際に生じる維持費や損料(税金や保険料、オイル交換代、タイヤ代、減価償却費等)を補填するために支給されていることが明らかであれば、賃金とはみなされませんので、割増賃金の算定基礎に含める必要はありません。
投稿日:2025/12/15 10:41 ID:QA-0162035大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
|■手当に固定残業代を含めることの可否について
本手当設計は回避したいところです。1つの手当に2つの支給主旨が存在し、
固定残業代以外の支給主旨の明確性が担保できない結果となり、手当の明確性
が欠如しています。それにより残業基礎単価への算入など判断が難しくなりま
す。また30時間分の固定残業代で6,888円ですが、通常で考えれば少額過ぎます
ので、計算ロジックを改めてご確認ください。
|■車両手当の割増賃金の算定基礎への算入可否について
|割増賃金の算定基礎に、下記の「車両手当」は含める必要があるか、
結論、含める必要があります。
含めないで良しとされるのは、以下の項目に限定されており、本手当は該当
しません。
・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当
・臨時に支払われた賃金
・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
投稿日:2025/12/15 07:59 ID:QA-0162006
相談者より
ご回答いただきありがとうございます。
回避する方向で検討できればと考えております。
固定残業代についてですが、手当が30,000円の場合に、その手当に対する固定残業代のみを計算した想定金額となります。
その前提の場合、計算ロジック自体に問題はないか、ご確認いただけますでしょうか。
【固定残業代の計算式】
1時間あたりの基礎賃金:183.679円
(30,000円÷163.328時間)
1時間あたりの割増賃金:229.59875円
183.679円×1.25倍
30時間分の固定残業代:6,888円
(229.59875円×30時間)
【条件】
・年間所定労働日数
245日(年間休日:120日)
・月間所定労働日数
20.416日(245日÷12か月)
・1日の所定労働時間
8時間
・1か月の平均所定労働時間
163.328時間(20.416日×8時間)
投稿日:2025/12/15 10:36 ID:QA-0162033大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
追加のご質問にご回答申し上げます。
追加のご質問をいただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
考え方や規定等につきましては、ご説明申し上げました通りです。
追加のご質問
「車両手当につきまして、下記の点について改めてご確認いただけますと幸いです。
・実費補填の趣旨を規程上明確にする
→具体的にどの点まで明確にする必要があるのかなど、可能な範囲でご教示いただけますと幸いです。
・一定額固定ではなく、走行実績等に連動させる
→現状、直近3か月の平均走行距離に応じて、5パターンに区分して支給しております。(例:1~1,000kmは〇円、1,000~2,000kmは〇円、など)
・生活補助・賃金補填的要素を排除する
→「実費補填の趣旨を規程上明確にする」という対応により、当該要素は排除されるというイメージでよろしいでしょうか。
また、現状は算定基礎に含めていますが、今後除外するとなった場合の対応やリスクもご教示いただけますと幸いです。」
につきましての最終の判断は、所轄の労働基準監督署が行うものと存じます。
つきましては、本ご質問は、所轄の労働基準監督署の監督官にご確認されることをお勧め申し上げます。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/12/15 11:31 ID:QA-0162044
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
うち30時間分の固定残業代6,888円を含むとのことですが、
まずは、明らかに最低賃金を下回っています。
また、不利益変更ともなります。
さらに固定残業代であれば、別出しにして、
計算式も明らかにしておく必要があります。
投稿日:2025/12/15 16:50 ID:QA-0162067
プロフェッショナルからの回答
soumuka様
お問い合わせありがとうございます。アドバイスの趣旨は、車両手当が賃金ではなく、従業員が負担した経費を会社が支弁するものであると認められる(=割増賃金の算定基礎から除外される)ためには、補助の対象と算定ロジックを整えておく必要がある…ということです。
たとえば当方がかつてサラリーマン時代に、勤務先の営業職を対象としたマイカー借上制度を設計した際は、マイカーの業務使用にあたって運転手(外勤営業マン)に業務日誌の記録と提出を義務付け、以下の項目について総走行距離に対する業務使用の割合で按分したマイカー借上料を支給するようにしました。
具体的にはオドメーターの前月差異から月の総走行距離を、また業務日誌によって報告された業務上の走行距離をそれぞれ算出し、総走行距離に締める業務走行距離の割合に応じ、以下の金額を按分した額を、マイカー借上料として支払います。
(1)運転手が実費負担した額のうち業務使用分
・ガソリン代
・オイル交換代
・車検代(法定費用を除く)
・タイヤ代
・その他ウォッシャー液やワイパブレードなどの消耗品
※ガソリン代以外は前年度トータルの按分率を期首に確定して月々の借上料を算定。
※当方の暮らす北海道ではマイカーは日常生活の必需品なので税金等は補助せず。
(2)前期から減価したマイカーの中古車査定額のうち業務使用分
ポイントは給与手当のようにざっくりとした括りで支給額を決めるのではなく、経費精算の要領で、業務による走行距離に応じ、実際に要した費用あるいは減価部分の一定割合を補填する仕組みです。さらに念を入れて給与手当には含めず、月末締め切り翌月5日払いで経費精算していました。
ただし貴社の場合は、あくまでも給与手当の中で完結されたいようですので、車両手当の扱いについて、割増賃金の算定基礎から除外できるのか、いったん所轄の監督署に相談してみると宜しいかと存じます。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。
投稿日:2025/12/15 17:02 ID:QA-0162070
本Q&Aは法的な助言・診断を行うものではなく、専門家による一般的な情報提供を目的としています。
回答内容の正確性・完全性を保証するものではなく、本情報の利用により生じたいかなる損害についても、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
具体的な事案については、必ずご自身の責任で弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
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