在籍出向者への賞与負担について
この度弊社の人事制度が刷新され新たに賞与制度を設けることとなりましたため、在籍出向者への賞与負担の考え方を各出向先と整理しようと考えております。
前提として、賞与金額の算出は弊社(出向元)のロジックで行う想定です。
負担については基本的には稼働率に応じて按分するのが妥当と考えております。(100%出向の場合は100%出向先に負担してもらう)
また、もう一案として、出向先に賞与制度がある場合は先方の賞与制度における賞与額分を支払っていただく方法も考えておるのですが、この方法は過去事例としてあるのか、妥当性をご教示いただきたいです。
例:
・出向元の賞与制度による賞与支給額が100万で、出向先の賞与制度による計算額が70万の場合、100万の内70万円をお支払いいただく。
投稿日:2025/06/19 12:32 ID:QA-0154197
- *****さん
- 東京都/情報処理・ソフトウェア(企業規模 101~300人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
ご質問のケースでは、以下のパターンが存在してくるかと思います。
出向元の賞与額 > 出向先の賞与額
出向元の賞与額 < 出向先の賞与額
結論、社員にとって不利のないよう、どちらか高い金額を支給するであれば
制度上の問題はないかと思いますが、運用上はかなり複雑になります。
なお、全てを出向先基準に委ねる場合は、多くの社員が出向に同意しない事象
が生じるものと思われます。(出向には原則本人同意が必要です。)
仮に同じ評価結果を賞与に反映した場合も、会社間の賞与原資が異なれば、
金額も異なって参ります。もちろん、賞与決定するプロセスが違う場合が、
ほとんどですので、その場合は人事考課が出向元・出向先で二本走ります。
余りにも複雑な人事制度と運用になります為、運用をしているケースは余り
見られませんが、ゼロではありません。
複雑な制度に耐えうるだけの土台があれば良いですが、
運用倒れするリスクもある為、通常はお勧めできません。
投稿日:2025/06/19 15:08 ID:QA-0154207
相談者より
ご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
投稿日:2025/06/26 15:26 ID:QA-0154556大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1,結論
出向者の賞与負担に関しては、
原則的かつ一般的に用いられている方法は
「出向元で支給された実際の賞与額を、出向期間中の稼働率に応じて出向先に按分請求する」方式です。
つまり、出向元で100万円支給し、出向期間中の稼働率が70%であれば、出向先には70万円を請求するのが最も多く見られる実務運用です。
2.「出向先の賞与制度に基づく額だけ負担してもらう」方式の妥当性
この方式は、
「出向元支給額(=100万円)」に対して、
「出向先制度による理論上の支給額(=70万円)」のみを負担してもらう
という考え方です。
(1) 妥当性について
以下のような条件が整えば、実務上採用されることもありますが、留意点が多いため慎重な検討が必要です。
(2)この方式の妥当性があるケース(例)
出向先が「独自の人事制度・賞与体系を持っており」、
他社(=出向元)の支給基準をベースにした支払には応じられない方針がある
出向先の就業規則や就労慣行上、賞与支給額が一定で明確な算出ルールに基づいている
出向契約書等で、「出向先制度に基づく額を限度にする旨」が明記されている
(3)問題点・リスク
出向元が実際に支払う賞与額との差額(例:100万-70万=30万)を自社負担する必要が出る
出向元制度で評価された内容と、出向先制度での想定賞与額との間に齟齬が生じる
出向者本人の納得感に悪影響が出る可能性(「自分の評価は100万相当なのに、出向先基準で減らされるのか?」等)
3.実務上は「稼働率按分方式」が最も妥当
現在のご方針:
「出向元で支給する賞与額を、出向先の稼働率に応じて負担させる(100万×70%=70万)」
は、法的・会計的にも整合性があり、企業間交渉の観点でも採用例が最も多いです。
3.ハイブリッド方式(妥協案)も可能
ご提案いただいたような「出向先制度で計算された額を上限とする」方式は、例えば以下のような契約書上の調整条項として使われることがあります:
(1)契約書記載例(案)
出向者に対して出向元が支給する賞与について、出向先は当該賞与額のうち、当該期間における労務提供割合に応じた額を負担するものとする。
ただし、出向先における賞与制度が適用される場合は、当該制度に基づき算出された金額を上限として負担するものとする。
4.まとめ
項目→内容
最も一般的な方法→出向元の賞与支給額 × 稼働率で出向先へ請求(実務多数)
ご提案の方法→出向先制度で計算した額のみ負担(事例あり、ただし注意が必要)
妥当性→双方の人事制度に違いが大きい場合には採用されることも
注意点→差額が出る場合の費用負担、本人の納得性、契約での明記が必須
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/06/19 16:54 ID:QA-0154216
相談者より
ご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
投稿日:2025/06/26 15:26 ID:QA-0154557大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、出向社員の給与や賞与の費用負担をいずれの会社がどの程度されるかに関しましては、法令で定められておりませんので、各会社間で協議の上決められる事が求められます。
つまり、事例の按分方法に関しましても、会社間で協議して合意されていれば問題ございませんし、内容的にも妥当性が高いものといえるでしょう。
投稿日:2025/06/20 19:22 ID:QA-0154263
相談者より
ご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
投稿日:2025/06/26 15:26 ID:QA-0154558大変参考になった
プロフェッショナルからの回答

- 渡井 保仁
- 渡井マネジメントオフィス 代表
ご相談の件、以下のとおり回答いたします。
在籍出向者の賞与負担については法的な規制がありませんので、出向元と出向先との合意で自由に定めることができます。従い、(1)「稼働率に応じて按分する(100%出向の場合は100%出向先に負担してもらう)」でも(2)「出向先に賞与制度がある場合は先方の賞与制度における賞与額分を支払っていただく」でも、どちらのルールを採用していただいても結構です。賞与負担は、労務の提供があった事業所とするのが通常の考え方でしょうから、(1)(2)とも妥当性はあると思います。(1)(2)以外では、出向先の業績が思わしくないときなど、人件費負担を軽減する目的で出向先の賞与負担の割合を低く抑える(たとえば、出向元、出向先双方の負担割合を50%ずつとする)場合もあるようです。
大多数の会社が(1)を採用しており、(2)を採用している会社は寡聞にして知りません。(2)の場合、出向先の算定方法で賞与額を算定して、その算定額が出向元の算定額より高くなってしまう場合は(そういう場合は少ないかもしれませんが)、出向元に復帰したときに賞与が減額になってしまうとか、出向先の賞与算定方法が出向元と異なり、出向者の賞与額を適切に算定できないなどの問題が発生することが想定されます。これに対して、出向先の賞与が高ければ、それが出向のインセンティブになる、あるいは、出向先は子会社で、出向先の賞与算定額が出向元の親会社を上回ることはない、また、出向先の賞与に評価などは反映されず、一律基本給の1か月分というような決定の仕方で出向者の賞与額が明確に決まるなど、想定される問題がすべてカバーされるのであれば、(2)を選択してもよいでしょう。しかし、通常のケースでは何らかの問題が残るため(2)は選択できず、在籍出向者の賞与負担ルールは(1)が適当ということになります。
投稿日:2025/06/21 02:19 ID:QA-0154272
相談者より
ご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
投稿日:2025/06/26 15:26 ID:QA-0154555大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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