「ベアと同時に手当減額」は不利益変更に該当するのか?
全国に拠点のある会社です。
拠点長が集まる月1の会議で本社より「ベア1万円アップ」の発表があり、同時に住宅手当の減額の発表もありました。
弊社の住宅手当支給ルールは、家賃(又はローン月額)6万円以上の人は月2万円支給、同6万円未満の人は月1万円支給、持ち家の人は支給なしになっています。
今回は住宅手当支給対象者の手当を一律1万円に変更するもので、移行措置として2万円支給の人は2年間は1.5万円となり、2年経過後に1万円になるとの事でした。(会社全体としては2万円支給されている人が最も多い)
会議の場では、複数の拠点長より「それではベアにならないのでは」などの異論が出ましたが、決定事項として報告が終わりました。
上記のような賃金変更 および 進め方は法的に問題ないものなのでしょうか。
そのあたりの知識に疎いもので、教えていただけますでしょうか。
よろしくお願いします。
投稿日:2025/03/28 20:27 ID:QA-0150189
- みけださん
- 東京都/建設・設備・プラント(企業規模 101~300人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
結論といたしましては、今回のようなベースアップと住宅手当減額を同時に実施する方法自体は法的に問題はありませんが、以下のポイントに注意が必要です。
1.労働条件の不利益変更に該当する可能性がある
2.従業員への丁寧な説明と同意が重要
3.不利益変更に対する「合理性」が求められる
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
結論といたしましては、今回のようなベースアップと住宅手当減額を同時に実施する方法自体は法的に問題はありませんが、以下のポイントに注意が必要です。
1.労働条件の不利益変更に該当する可能性がある
2.従業員への丁寧な説明と同意が重要
3.不利益変更に対する「合理性」が求められる
今回のケースでは、基本給が1万円増額される一方で、住宅手当が減額されるため、住宅手当対象者にとっては実質的な賃金総額が変わらない、もしくは減少する可能性があります。住宅手当の減額は労働条件の不利益変更に該当する可能性があります。
労働契約法第9条では、不利益変更を行う場合は従業員の同意が原則的に必要とされています。ただし、就業規則に「会社の裁量で住宅手当の支給条件を変更できる」などの規定がある場合は会社が一方的に変更できる余地があります。
仮に住宅手当の減額が不利益変更に該当する場合でも、以下の要件を満たせば有効と認められる可能性があります(労働契約法第10条)。
1.変更の必要性があるか
→ 例えば、会社の経営悪化や賃金体系の見直しなど、やむを得ない事情がある場合は正当性が認められやすくなります。
2.代償措置があるか
→ 今回のケースではベアで1万円アップすることが代償措置と捉えられます。
→ ただし、住宅手当減額で総額が変わらない場合、代償措置としての説得力が弱くなる可能性があります。
3.労働組合や従業員への十分な説明と協議が行われたか
→ 今回は会議で発表したのみであり、拠点長から異論が出ていることから、説明不足と受け取られるリスクがあります。
ベースアップは本来、実質賃金を上げるための措置であるため、住宅手当を同時に減額すると「名ばかりベア」として従業員の不信感を招きやすくなります。特に労働組合が存在する場合は団体交渉に発展するリスクがあるため注意が必要です。
以下のように進めると、法的なリスクを抑えられます。
1. 従業員に丁寧な説明を行う
住宅手当の減額とベアを同時に行う場合は、「総額で実質賃金は変わらない」との認識になりやすいため、「ベアは基本給を恒常的に引き上げるものであり、将来の昇給や退職金にも影響する」など、長期的なメリットを丁寧に説明する必要があります。
2. 段階的な移行措置と代償措置
今回は「2年間は1.5万円」という移行措置が設けられていますが、これに加えてベア分の反映をより明確に示すことで従業員の納得感を高められます。
例:住宅手当が減額された従業員には、別途手当の支給やボーナスの調整などの措置を検討する。
3. 就業規則への明記と従業員への同意
住宅手当減額に関しては就業規則を改定し、従業員に周知・同意を得ることが重要です。
周知不足や同意なしで強行すると、後に「無効」と判断されるリスクがあります。
今回の対応は法的に直ちに違法とはいえませんが、以下の点に注意が必要です。
・住宅手当の減額は不利益変更に該当する可能性があるため、説明と同意を丁寧に行う
・ベアのメリットを明確に伝え、実質的な賃金アップであることを説明する
・就業規則に変更を反映し、従業員への周知と同意を適切に行う
今回は拠点長からも異論が出ているため、従業員への丁寧な説明と代償措置を検討することで、不満やトラブルを未然に防ぐことが重要です。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/03/31 11:08 ID:QA-0150217
相談者より
お世話になります。
今回は丁寧なご回答をいただき、ありがとうございました。
自身は従業員側ですが、「会社(本社)としての拠点への適切な姿勢」「日常の拠点との関係性・信頼性の構築」、それらの重要性や組織としての正しいあり方を考えるいい機会となりました。
あらためて、ありがとうございました。
投稿日:2025/04/15 18:14 ID:QA-0151059大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問のケースでございますが、貴社の会社規程へ変更が生じる内容です。
よって、事前に労使間での話し合いの場もなく、一方的に変更されているようで
あれば、会社の進め方にも問題がありえるものと思案いたします。
ご質問者様が、従業員側でございましたら、必ず労働組合又は、労働者代表の方がいらっしゃるかと思いますので、まずはその方へ、事前に説明があったかをご確認され、どのようなお話をされたのか、結果、合意なさったのか等もご確認されると
宜しいかと思います。その上で適正手続きを経た変更と言えるか否かの判断となります。
投稿日:2025/03/31 11:29 ID:QA-0150218
相談者より
お世話になります。
ご回答をいただきまして、ありがとうございました。
自身は従業員側ですが、今回は「会社(本社)としての拠点への適切な姿勢」「日常の拠点との関係性・信頼性の構築」、それらの重要性や組織としての正しいあり方を考えるいい機会となりました。
あらためて、ありがとうございました。
投稿日:2025/04/15 18:16 ID:QA-0151060参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
手当の減額変更は不利益変更になり得るといえます。まずは人事部門内で状況を確認し、正確な実態に基づいて、契約など確認して下さい。
いずれにしても合意を取れば不利益変更は可能なので、詳しく丁寧な社員向け説明会を実施すべきでしょう。
投稿日:2025/03/31 12:30 ID:QA-0150220
相談者より
お世話になります。
ご回答をいただきまして、ありがとうございました。
その後、全社向けの説明がありました。
自身は従業員側ですが、今回は「会社(本社)としての拠点への適切な姿勢」「日常の拠点との関係性・信頼性の構築」、それらの重要性や組織としての正しいあり方を考えるいい機会となりました。
ありがとうございました。
投稿日:2025/04/15 18:18 ID:QA-0151061参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、ベアと手当は別の事柄になりますので、片方を上げたからといってその分他方を引き下げてよいというものではございませんし、労働条件の不利益変更に該当する事になります。
御社の場合ですと、一定の経過措置を採られている点は評価出来ますが、こうした不利益変更を伴う事案に関しましてはそれに先立ち労使間で真摯に協議される事が求められるものといえます。
従いまして、従業員側で不満が生じているようでした、今一度労使間で協議の場を持たれるべきといえます。
投稿日:2025/03/31 18:08 ID:QA-0150233
相談者より
お世話になります。
ご回答をいただきまして、ありがとうございました。
その後、全社向けの説明がありました。
自身は従業員側ですが、今回は「会社(本社)としての拠点への適切な姿勢」「日常の拠点との関係性・信頼性の構築」、それらの重要性や組織としての正しいあり方を考えるいい機会となりました。
ありがとうございました。
投稿日:2025/04/15 18:18 ID:QA-0151062参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
ご質問の内容は、それではベアにはならないというよりは、
ベアとは別問題ということになります。
住宅手当の不利益変更ということになりますので、
なぜ、変更するのか十分な説明が必要ですし、
原則として、個別合意が必要です。
また、一律1万円ということになりますと、
残業手当の算出基礎に住宅手当を含める必要があります。
投稿日:2025/03/31 20:59 ID:QA-0150248
相談者より
お世話になります。
ご回答をいただき、ありがとうございました。
拠点の納得性は別にして、その後全社向けの説明がありました。
今回は「会社としての拠点への適切な姿勢」「日常の拠点との関係性・信頼性の構築」そして組織としての正しいあり方を考えるいい機会となりました。
ありがとうございました。
投稿日:2025/04/15 18:23 ID:QA-0151063参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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