合併と労働時間
A社の所定労働時間160H/月、B社が174H/月(いずれも変形労働時間制)の両社が合併する予定です。存続会社はA社となる予定ですが、労働時間は事情がありB社タイプの労働時間を導入をせざるを得ない状況です。社員の同意を得ることはもちろんのことですが、実際にこのような労働時間の増加は可能でしょうか。また、その他注意すべきことはありますでしょうか。 以上
投稿日:2008/02/26 12:28 ID:QA-0011543
- *****さん
- 神奈川県/その他業種(企業規模 101~300人)
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
合併に伴う所定労働時間の増加
■合併に伴う諸般の事情があるとはいえ、(通常は吸収側となる)存続会社における、9%に近い所定労働時間の増加に伴う不利益変更は容易ならざる課題です。労働密度が変わず、その他の補填がなければ、1割の賃金カットに相当する容易ならざる変更です。就業規則を『不利益変更』するためには、大きく次の2点が必要です。
① 不利益変更の『合理性』
② 不利益変更に対する『従業員の同意』
■社員の同意を得ることが至難の業であるのに加え、これほど重要な労働条件に関して実質的な不利益を及ぼす場合、不利益変更についても、相当《高度》な必要性に基づいた合理性が要求されるます。スペースの関係上、多くは申し上げられませんが、最高裁判決は、次の諸事情を考慮して,合理性判断をすべきであるとしています。
① 従業員が被る不利益の程度
② 企業側の変更の必要性の内容・程度
③ 変更後の就業規則の内容自体の相当性
④ 代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況
⑤ 労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応
⑥ 同種事項に関する同業他社の状況、等
■因みに、労基署は『不利益変更の就業規則』であっても『届出書・意見書・就業規則の3点セット』があれば、受理します。届出時には、就業規則の内容を確認しますが、その内容について、承認したわけではありません。従業員とのトラブルが発生したとしても、変更部分の妥当性について判断を下すのは「裁判所」であって労働基準監督署ではないことにご注意下さい。
投稿日:2008/02/26 19:46 ID:QA-0011549
相談者より
大変わかりやすくご回答いただきありがとうございました。
投稿日:2008/02/29 09:59 ID:QA-0034638大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
企業が合併した場合ですが、労働契約は存続会社にそのまま継承されますので、従来の労働条件を遵守することが基本となります。
しかしながら、現実には業務事情よりそうは行かないケースが多い為、不利益変更を承知の上で労働条件の見直しを検討しなければならない事も出て来ます。
文面の変更ですが、川勝様もご指摘の通り、労働者にとっては大きな不利益変更になりますので、まずは事情説明を十分に行う等、労使間での真摯な協議が不可欠です。
協議において合意を得る為にも賃金の上積みや時間外取り扱い等の代替・経過措置を検討して現実の不利益を緩和すべきでしょう。
一方、文面のみで確答は出来かねますが、合併という緊急事態では労働者にとりましても、雇用の安定確保自体が重要な意味を持つといえるでしょう。
従いまして、普段の労使関係が険悪で無ければ、急がずまた一方的な主張をせずに柔軟な対応を行なえば合意形成は十分可能というのが私共の見解になります。
投稿日:2008/02/27 00:17 ID:QA-0011557
相談者より
投稿日:2008/02/27 00:17 ID:QA-0034643大変参考になった
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