申請遅れの住宅手当の支給に係る対応について
さて、当法人の拠点人事で、表記の事案につき法的懸念を感じる点があり、ご相談したく存じます。
【前提~当社の住宅手当支給ルール】
●住居手当は自ら居住するために住宅を借り受けている職員に対して支給
●住居手当の支給は、事実の承認された月の翌月(その日が月の初日の場合はその日が属する月)から開始する
【前提~当社の服務規律 抜粋】
●身上異動等の変更があった場合は、その日から5日以内に、その旨を所定の様式で届出すること。
【今回の事案】
●もともと住宅手当支給対象の住宅ア(住宅手当22,000円相当)に住んでいた職員Aが、6月1日に住宅イ(住宅手当28,000円相当)にも関わらず、転居の旨の身上異動届をしていなかった。
●身上異動届及び住宅イの住居手当申請届の提出は、服務の心得にある5日 以内から大幅に遅れて7月中旬に提出があった。
●給与規則、就業規則をかんがみて、6月の住宅手当は本来未支給であったとみなし、手当22,000円を遡及返金処理とし、8月分より手当支給(28,000円)とした。
【今回ご見解賜りたい点】
①6月度の住居手当を未支給とみなした理由を、不当利得(民法703条)とみなした場合、以下の4要件が必要であると考えます。
□損失者に損失が生じたこと(損失)
□利得者が利益を得たこと(利得)
□利得と損失との間に因果関係があること(因果関係)
□利得に法律上の原因がないこと
今回の場合、上3点については意見が分かれるとしても、最後の点については公平の理念からみた実質的・相対的な理由がないと言い切れるか
に懸念を感じます(事実報告が遅かった非はあれど、6月は手当支給対象となりうる賃貸住宅に住んでいたと推定されるのではないでしょうか)。
② 不当利得と言い切るのが難しいとすると、減給の制裁(労働基準法第91条)の①平均賃金の1日分の半額②総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1の両方を超えないことが条件となると考えます。
これを本事案に適用した場合、4千円強にしかならず、22,000円の減給は過大に過ぎるのではという懸念があるのではないか。
【当方の見解】
今回の事案で不当利得とみなすこと、減給の制裁を科すことのいずれも難しく、実務上は厳重注意や顛末書の提出を求めるくらいが妥当ではないか。
少なくとも、手当対象の住居から手当対象の住居への転居の手続き遅れであって、6月度のゼロ支給は過大に過ぎると考えますが、法的見地からのご見解を賜りたく存じます。
よろしくご教示のほどお願い申し上げます。
投稿日:2021/08/20 09:37 ID:QA-0106634
- 着眼大局さん
- 静岡県/医療・福祉関連(企業規模 10001人以上)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、やはり不当利得を享受されていたか否かによって判断されるべきといえます。
従いまして、当人に事実関係を聴取され「6月は手当支給対象となりうる賃貸住宅に住んでいた」否かを明確にされる事が必要といえます。
その上で、実際に住んでいたという事であれば返還無、住まれていなかったという事であれば全額返還(他の制裁は無)で対応されるのが妥当といえます。
但し、当人は前者と偽る可能性もございますので、その場合は身上異動書類の提出遅れがある以上何らかの証明となる文書を提出される事を求められるとよいでしょう。
投稿日:2021/08/20 10:10 ID:QA-0106642
相談者より
早々に明快なご回答を頂きましてありがとうございました。
投稿日:2021/08/20 10:47 ID:QA-0106649大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
会社として、住宅手当を支給している目的から判断してほうがよろしいでしょう。
申請がスムーズにいっていれば、6月は28,000のところ、申請の遅れにより、8月から28,000で、2月は22,000支給ということだと思いますが、
そこを0円にし、返還を求めるというのは行き過ぎと思われます。いったい何のための住宅手当なのでしょうか。
5日以内というのは決まり文句ではありますが、運用としては、事案・申請の遅れの理由によっては、遡って支払ってあげてもよろしいと思います。
民法うんぬんで従業員と争うべき事案ではないでしょう。
投稿日:2021/08/20 10:41 ID:QA-0106647
相談者より
当方も先生と同じく、手当の支給主旨等を鑑みると支給ゼロにするのは行き過ぎた内容だと感じております。
拠点人事と認識共有させて頂きます。明快なご回答ありがとうございました。
投稿日:2021/08/20 13:16 ID:QA-0106670大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
手当の趣旨を鑑みるのが人事政策の基本だと考えます。本人申請が自己責任であって、申請ベースとするのは理に適いますが、減給は本末転倒なのではないかと思います。
本件は実損が出ているかどうか含め、柔軟な対応で、話し合いをするのが最優先ではないでしょうか。
投稿日:2021/08/20 12:08 ID:QA-0106667
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ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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