人はいくつになっても成長できる――
トヨタファイナンスが取り組む“本気”のシニア活用とは
昇進することにしか意義を見出せないマインドの呪縛
新事業参入などで即戦力の中途採用者が急増すると、組織の年齢別人員構成にゆがみが生じます。それが、シニア社員の活躍推進に取り組む一因にもなったのでしょうか。
藤田:それが一番大きかったですね。カード事業参入の際に大量に採用した社員がいま30代半ばから40歳後半。その年代層が突出して多いので、10年も経てば、45歳以上の社員が過半数を占める人員構成になります。当然放っておくわけにはいきません。ラインマネジャーのポストは限られていますし、しかも弊社は役職定年制を設けていますから、最終的には誰もがプレイヤーとして会社を支えていかなければならない。そうしたシニア社員たちにラインマネージャーを外れても活躍し続けてもらうにはどうすればいいのか。それが喫緊の課題です。
高齢化やバブル期採用世代の歪みなど、日本企業全般に共通する課題でもあります。
藤田:弊社は、人員構成のゆがみがいちはやく、より極端な形で現れたので、他社に先駆けて手を打っています。今日、隣にいる鈴木は、シニア社員活躍推進の良い例です。彼女は、役職定年でラインの長を外れた後、人事部で新境地を開き、こうしてシニアや女性活躍の推進に大活躍してくれている。要は、コーポレートラダーを上がることやラインの長であることにしか価値を見出せないマインドを、一人ひとりが変えていかなければだめなのです。スキルにせよ、知識や経験にせよ、シニアは他の人が持っていない強みを持っているのですから、「どんな立場でも自分を活かして楽しめるはずだ」という気持ちが大事だと思います。
とはいえ、実際に一人ひとりの価値観から変えていくとなると簡単ではありません。施策に取り組む前、現場ではシニア社員の問題をどう認識していたのですか。
矢田:所属長やグループマネジャーと話す中で、シニア社員への接し方に悩む声をかなり多く聞いていました。ただ、難しいと不満ばかりで、実際はマネジメントから逃げているような気がしたのです。これでは先に進まないと思い、1年程前、経営陣とも相談して、全所属長と意見交換の場を設けました。シニアの活躍推進について何が問題なのか、何が難しいのか、腹を割って議論をしませんか、と。すると、シニア社員に対するマネジャーの本音が大きく三つ浮かび上がってきました。
一つは、シニア社員の仕事へのモチベーションが低いので困っていること。二つ目は、自分より年上であるためマネジメントしにくいと思っていること。そして三つ目が「数年後には自分も同じ状況になると思うと、他人事ではない」「自分がその立場になったら、やはりラインを外れても自分を活かして輝いていたい」という共感の声。特に、最後の本音を聞くことができたのは、大きかったですね。そう思っているなら、本気で取り組みましょう、という雰囲気になりましたから。そこでまず役員と所属長を集めて、先ほど社長が話した価値観や働き方の基本思想を共有しあうところから始めました。