社風や仕事内容は、本当に合っている?
時期尚早な転職先の決断が、後悔へとつながった求職者のケース
仕事人生に大きな影響が出る可能性も… 転職時に焦って決断してはいけない理由
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「まず退職」は絶対にNG
しかし、ここでCさんはありえないプランを明かしてくれた。
「この半年、在職しながら転職活動してきましたが、どうもうまくいきません。前回の転職時も十分に考える時間がなかったことが失敗の原因でした。やはり、いったん仕事に区切りをつけて転職に専念した方が、良い判断ができるような気がします」
それまで、Cさんの話を肯定的に聞いていた私だったが、あわててその考え方を否定した。
「それは絶対におすすめできません。仕事を辞めて転職に専念すれば、時間的な余裕は生まれるでしょう。でも、この半年で主な同業他社はすべて当たっているんですよね? つまり、今後は違う業界でもキャリアを活かせる方法を考えなくてはなりません。しかも、Cさんの場合、仕事のスケール感などの面から大手志向を強く持たれているので、長期戦になる可能性があります」
「確かにそうかもしれません」とCさん。ハッとしたような表情で、私の話を聞いている。
「退職してからの転職活動が、長期戦になったらどうなるでしょう。いくら貯金があっても、経済的に厳しくなっていくのは間違いありません。ご家族からの目に見えないプレッシャーも感じるようになれば、結局は早く働くことが最優先になってしまいます」
「それだと、前回と同じことですね…」
Cさんは机の上の履歴書に目を落としたまま、腕組みをしてじっと考えている。その視線の先には、前回転職した日付や事情を記した文字が連なっていた。
「しかも、同業以外へのチャレンジですから、勢いだけで転職したら今よりももっと状況が悪くなる可能性だってあるわけです。時間さえかければいいというものではありませんが、大切なのは焦らずに決断できる状況があるかどうかです。そのためにも、仕事を続けながら、経済的な余裕を持った状態で転職活動をした方が、必ず良い結果につながりますよ」
Cさんのように、「失敗した転職をやり直したい」という思いで再度転職活動を始めると、「転職そのものが目的」になってしまうことがある。そこでまた判断を誤れば、今後の仕事人生に大きなダメージを受けてしまうことになるだろう。今後の展開によっては、転職しない方がいいというアドバイスも必要かもしれないな――人材紹介会社としては実績につながらないが、メリットの少ない転職を勧めるわけにもいかない。Cさんと話しながら、私はそんなことを考えていた。
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