狭い業界での転職事情
人材紹介会社のスマートな利用法とは
こんな割り切った利用法も… 紹介会社経由でカドの立たない内定辞退
前職で同僚だった知人が働いている会社というのは、転職するにあたって応募しやすいような、しにくいような…微妙な感じではないだろうか。特に、その元同僚の紹介で面接を受けた場合、給与などの条件を聞いてから断るのは非常に気まずいものだ。そんな思いをするぐらいなら応募しないでおこうと考える人もいるかもしれない。しかし、中には人材紹介会社を介することで、そのあたりの事情をうまくクリアしている人もいるようだ。
応募前から結果は読めていた?
「実は紹介してほしい会社をリストアップしてあるんです。だいたい前職で一緒に仕事をしていた人が転職している企業なので、仕事内容も分かりますし、対応できると思うんですよ…」
その日、転職の相談で来社したWさんは、そう言いながら10社近い社名を書いたメモを見せてくれた。いずれも業界では比較的大手、ないしは有力な外資系企業だ。Wさんの専門は特殊な薬品の研究。国内で同じような研究を行っている企業はとても限られているらしい。
「転職するといっても専門分野を活かせるのはこの10社ぐらいなんです。ですから、元同僚で転職した人はだいたいこの10社にいるんです。新チームの立ち上げなど、メンバーの増員が必要な時には、前の会社の後輩を引っ張るというケースもわりと多いですしね」
転職の目標が非常に明確なWさん。人材紹介会社としてはとてもやりやすい。私は、さっそくWさんが希望している企業への推薦手続きを進めていくことにした。
手続きをすると、各社から間もなく書類選考の結果が届いた。
「A社とB社、C社はぜひ面接したいそうです。D社とE社はご縁がありませんでした。それ以外は、今は研究部門の採用予定がないそうです」
そう伝えるとWさんは、すべて予想通りといった感じで3社の面接のアポイントを取って欲しいと言った。
「D社とE社はたぶん断ってくると思っていました。そこにいる元同僚とは、以前からあまり合わなかったので…。ひょっとしたらと思って応募してもらいましたが、それ以外はやはり募集なしですか」
よくよく聞くと、A・B・Cの3社には元同僚がいて、「転職するならうちに来ないか」と声を掛けられていたのだという。実務経験約10年、研究者としてちょうど脂が乗った年代のWさんなので評価が高いのだろうと思っていたが、実はそういう裏もあったのだ。書類選考を通過するのも当然だろう。