転職直後の夏休み
長い休暇で不安や迷いが生じてしまったら――
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休み明け、採用企業からの電話
いつもはメールで連絡してくるN社から電話がかかってきた。
「8月に入社していただいたAさんについて、人事部長がぜひご相談したいと申しておりまして」
ちょうどN社の夏期休暇が明けたタイミングだ。嫌な予感を振り払いながら、用件を確認した。
「Aさんに何かあったのでしょうか」
「Aさんのような方をもう一人ご紹介いただけないか、というご相談です」
「えっ、Aさんが退職されるのですか」
「いいえ、そうではありません。Aさんはすごく頑張っていますよ」
詳しく聞いてみると追加の求人依頼だったので、一安心した。モチベーション高く仕事に取り組んでいるAさんへの評価は高く、紹介元の人材紹介会社である私たちに人事部長から直接、追加求人の趣旨を説明したいのだという。
「ありがとうございます。少し心配しました。Aさんの場合、入社から2週間もしないうちに10連休の夏休みに入ると聞いていたものですから」
「そうですよね。私もタイミング的にどうかと思っていました。だからといって、入社日を休み明けや9月にするわけにもいきませんので」
長期休暇明けの早期退職というリスクを、N社も不安に感じていた。しかし中途採用の場合、良い人材がいたらすぐに採用を決めなければ、他社に奪われてしまう可能性がある。休み前だからといって、先延ばしにするわけにはいかないのだ。
人材紹介会社にとっても、早期退職は重要な問題だ。入社した人材が早期に退職してしまったら、紹介手数料を返金しなければいけないばかりか、「すぐ辞める人を紹介した」ということで企業からの信頼も損ねてしまう。人材と求人がマッチしたら、たとえ長期休暇前のタイミングでも、紹介を進めていかなければならない。
入社直後の長期休暇には、これからも冷や冷やさせられることになりそうだ。
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