人材紹介会社のフォロー範囲企業によっては「ご遠慮ください」 細心の気遣いが欠かせない入社後のフォロー
採用が決定した人材を入社日までフォローするのは、人材紹介会社の重要な仕事の一つである。転職は人生の大きな決断。不安から直前で入社辞退に至ることのないよう、十分にサポートしていく必要がある。中には「入社後、職務や条件が聞いていた内容と異なっている場合は、いつでもご相談ください」などと、入社後もしっかりとフォローすることをアピールする人材紹介会社もある。しかし、採用した企業の中には「入社後は、社員に紹介会社と接触してほしくない」と考えるところが少なくないようだ。
「入社後アンケート」という形式をとって
「新しい職場には慣れましたか。聞いていた仕事内容と違う、給与や条件が異なっていたなど、もし違和感があれば、遠慮なくお知らせください」
これは私たちの人材紹介会社を経由して入社してくれた方に送る「入社後アンケート」の一文だ。アンケートは転職支援サービスの内容やスピードに関する質問が中心だが、同時に入社後に問題が発生していないかを探る「入社後フォロー」も兼ねている。
一般的に人材紹介会社のフォローといえば「入社まで」だろう。採用が決まった人材が、入社日までに心変わりしたり、他社に引き抜かれたりしないよう見守るのは、紹介会社にとってきわめて重要な業務だ。邪魔にならない程度にほどよくコンタクトをとりながら、入社日を迎える。
「本日は、Aさんのご入社予定日ということでご連絡いたしました」
「はい、予定通り出社していますよ。その節はお世話になりました」
「そうですか、よかったです。ありがとうございました」
ドキドキしながら人事に電話を入れ、出社の報告を聞いてほっと胸をなでおろすのである。もしも直前で入社辞退などになれば、採用企業からはクレーム必至だし、そもそも成功報酬制の紹介料は1円も入ってこない。そのため、入社前フォローにはどの紹介会社も力を入れるのである。
では「入社後フォロー」はどうだろうか。転職先で企業文化の違いに驚いた、場合によってはカルチャーショックさえ受けた、という話は珍しくない。そういうショックをそのままにしておくと、時には早期退職につながってしまう。入社後すぐに退職した場合、紹介会社は紹介料を一部返金する取り決めになっていることが多い。そのため、入社前と同じくらい入社後のフォローも大事なはずだが、人事としては、採用した社員に人材紹介会社とつながりを持ってほしくない、という気持ちが強いようだ。
やんわり断られることもあれば「接触はご遠慮ください」とはっきり言われることもある。何か問題があれば、紹介会社ではなく自社の人事に言ってくるのが筋だというのは、たしかに間違ってはいないだろう。しかし「転職して間もない頃は、上司や人事に言いにくいことが多い」と考える人が少なくないことも確かなのだ。そこで冒頭のようなアンケートにかこつけて、入社後フォローをひっそりと行うのである。