社会人教育と転職時にはブランクととられることも 学び直してキャリアアップを狙う人たち

「卵とニワトリ」の関係

「大学院に行くより、もっと現実的な方法を検討してはどうでしょうか」

一つは、現在Eさんが働いている会社で、マーケティング部門に異動させてもらうことだ。転職を考えているのだから、社内でどう思われてもいいくらいの強引さで希望を出せば、異動がかなうかもしれない。そこで最低でも1年、できれば数年経験を積んでから改めて転職活動をすれば、よりよい条件でマーケティング職として転職できる可能性がある。

または、大学院で学び直すとしても、働きながら通える社会人向けのコースにする。仕事と勉強の両立は大変だが、少なくともブランクやモラトリアムと誤解されるリスクはなくなるだろう。

キャリアチェンジの厳しい現実に、Eさんはやや複雑な表情だった。

こんな時に注意しないといけないのは、「将来マーケティングに異動できる」という触れ込みの営業職の募集に跳びついてしまうことだ。営業職の採用は簡単ではないから、そんな「エサ」をつけて募集する企業もあるのだ。もちろん、ずっと営業でもいいと思えるような会社であれば、それでも問題はないのだが。

では、実際に「学び直した人材」を企業はどう評価するのだろうか。とある企業の採用担当が人と状況によっても違うが、と前置きして話してくれたことがある。

「努力家だという前向きな評価はもちろんしますけど、やはり会社を辞めている場合には、そこまでしなくてはいけなかった理由が気になりますね」

社会人教育と転職 Photo

キャリアアップのために学び直すことがあまり一般的ではない日本では、どうしても何か他にネガティブな理由があったのではないか、と勘繰ってしまうようだ。勉強の結果として国家資格などを取得していればわかりやすいが、単なる語学留学などでは、遊びに行っていたように受け取られてしまうこともある。

結論としては、学び直した人材が目に見える成果を出した実績がないからのようだ。しかし、これは「卵とニワトリ」の関係と同じで、企業が積極的に採用しないから実績の出しようがないのだともいえる。

今後、アメリカのように社会人が学び直してキャリアアップできる時代がくるのだろうか。人材紹介会社としても非常に気になるところである。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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