経歴詐称を見抜けるか
人材紹介会社は基本「性善説」 ついキャリアを上方修正してしまう人たち
自身のホームページに記載されているプロフィールが事実と違うのではないか――。経歴詐称疑惑でTVコメンテーターが番組を降板、謝罪した事件は記憶に新しい。同じように転職活動においても、少しでも良い仕事に就きたいという思いからか、キャリアを「よく見せようとする人」は存在する。人材紹介会社が推薦する人材は、学歴・経歴などもしっかりウラをとってあると思われるかもしれないが、幹部クラスを紹介するヘッドハンターなどを除けば、人材からの自己申告を信頼して紹介しているケースが一般的だ。
学歴水増しから転職回数の操作まで
「すごい経歴の方ですね。他の会社での進捗状況はわかりますか?」
時折だが、紹介した企業の人事も驚くほどの、キャリアを持つ人材がいる。普通なら書類選考後、「面接します」「今回は見送らせてもらいます」のどちらかの結果が伝えられるだけだが、わざわざそんなことを聞いてくる時は、素晴らしいのでぜひ会ってみたいという思いと、本当かなあという思いが混じっている時なのではないかと感じている。
「この経歴は本当なんでしょうかね?」
そうたずねられても「自己申告なので」としか答えようがない。基本的に人材紹介会社は、学歴・経歴などをごまかすような人はいないという、「性善説」のスタンスをとっている。企業の場合、入社前に大学などの「卒業証明」を提出させたり、過去に勤務していた企業に全部あたって在籍確認をしたりするところもある。就職がかかっているから、たとえ面倒でもそれについて文句を言う人はまずいない。しかし、人材紹介会社が同じことをやると「そんな面倒なところには頼まない」ということにもなりかねない。
性善説のスタンスをとっているとはいえ、転職相談をしている時に、なんとなく「これはゲタをはかせているんじゃないか?」と感じることもある。たとえば、大学を卒業後、国内外の著名な大学院などで複数の学位を取得している場合。聴講しただけなのに、「修了」や「学位取得」と記載しているのではないかと考えてしまうのだ。しかし、だからと言って、「これは本当ですか?」とたずねることはまずできない。
社会人の場合、学歴より職務経歴の方がより重要だ。しかし、これも実態を正確に把握することは難しい。たとえば、有名企業でインターンシップを経験したことを「勤務」と書いていてもわからない。一度だけ成績が良かったことを「トップセールス」、部下が一人でも「マネージャー」といった表現も完全にウソだとはいえない。数多くの職務経歴書を見ていると、不自然なところには敏感になるのだが、よほどのことがない限り、詳細まで確認することはできない。
何かを「つけたす」だけでなく、短期間で退職した企業などを職務経歴から「とばして」しまう人も少なくない。転職回数の多い人に、そういったケースがよく見られる。以前、人材紹介会社に登録した際の古いデータと比較すると、社数を少なく書いているのだが、これも一種の経歴詐称といえるだろう。