聞きにくいこともしっかり確認、代理人としての紹介会社の役割
人材は弱い立場になりがち 面接時の服装で悩んでいた候補者
- 1
- 2
もしもの場合、直前に変身してもらう作戦も
「服装の件で、ご本人が非常に心配されているんですよ。ええ、大丈夫でしょうか。一般的なクールビズ的なものよりもさらにカジュアルな、いわゆるジーパンにTシャツのようなスタイルらしいのですが……。よろしいですか。ありがとうございます」
P社に電話で確認するとすんなりOKが出た。営業職などと違い、Yさんのような技術系の人材の場合、スーツにネクタイで勤務している方が珍しいということもある。また、夏場は管理部門の社員でもほとんどがノーネクタイのクールビズスタイルになるのが、近年の傾向だろう。
しかし、求職者側には「面接にはスーツで行くもの」という観念がしみついているようだ。特に転職未経験の人の場合、新卒での就職活動のイメージが強く残っているせいか、「選考される側は企業にあわせるのが当然」と考えることが多い。どうしても「企業=選ぶ側、人材=選ばれる側」という心境になってしまうのだ。例えば面接の際に、残業や休日出勤の実態を知りたかったのになぜか切り出せなかった、給与金額も聞けなかった、という人は珍しくない。
そんな時に「代理人」として交渉・調整を行い、聞きにくいこともズバリと確認するのが、企業と人材の間に立つ人材紹介会社だ。Yさんのような服装の件などは、よくあることなのだ。あわせて、P社には念押しの確認もしておいた。
「誠にお手数ですが、実際に面接を担当される部門マネージャーの方にも、服装の件をあらかじめお伝えいただけますでしょうか」
人事部が「いいですよ」といったことが、面接官にまで伝わってないケースは意外と多い。もともと人事部門は、仕事柄コンプライアンスやダイバーシティなどに関わることが多く、考え方も比較的柔軟な人が多い。企業と人材は対等ということもよく理解している。しかし、実際に面接する各部門の管理職などには、まだまだ考え方の古い人もいたりする。事前に十分根回しをしておかないと、面接にジーパンで来るとは何事だ!ということにもなりかねない。
もし、部門マネージャーが「スーツが当たり前でしょ」というタイプの人なら、私が事前にYさんからスーツ一式を預かっておき、P社の近くの喫茶店かカラオケボックスで合流して、面接前に着替えてもらうという作戦も考えていた。
「うちも夏場はTシャツで仕事をしている社員もいますよ。安心してお越しくださいとお伝えください」
P社に関してはどうやらそこまでの心配はいらないようだ。それにしても、服装のような細かいところまで気を使っていたYさん。これからも、転職にまつわる心配事があれこれと出てくることになるかもしれない。さらなる気配りが必要だと、私は改めて気を引き締めた。
- 1
- 2