「2度目の五月病」をきっかけに転職する第二新卒
転職後の可能性は大きいが、迷いも生じる 決断させるには、時間と手間がかかるケースも――
「五月病」とは、一般的には入社後1ヵ月ほどの新人が新しい環境に適応できず、心身の不調を訴えることだが、現状に不満や悩みがあっても、すぐに人材紹介会社を利用して転職しようとする人はそう多くはない。しかし、最近は1年間働いてみて、やはり何か違うなと考えた2年目の社員が、「2度目の五月病」をきっかけに転職相談に訪れることが増えてきた。社会人としてのキャリアがほとんどない第二新卒層には、経験やスキル面でさほど期待できないが、さまざまな分野に挑戦できる大きな可能性を秘めている。だが、人材紹介会社にとっては、キャリアのある人材よりも相談に時間がかかる層だともいえる。
プロの方の意見も参考にしたいのです
「本当に私のような者が登録してもいいのでしょうか?」
正式に登録する以前の問い合わせの段階から、Kさんは謙虚だった。エントリー情報に記載されたデータを見ると、新卒で就職してからまだ1年しか経っていない。社会人としては駆け出しに近いキャリアなので、人材紹介会社に登録しても実際に仕事を紹介してもらえるのか、心配になる気持ちもよくわかる。
Kさんとの転職相談を始めるにあたって、私はまず第二新卒クラスの人材を紹介経由で採用する企業が増えている現状を説明することにした。
「昔は『石の上にも三年』などと言いましたが、今は自分の考えていた職場と違っていたら早い段階で軌道修正した方がいいと考える人が増えています。そうなった場合、企業としては代わりの若手人材を採用する必要があります。といっても欠員が大量に出るわけではないので、若干名を採用するのなら、公募よりも人材紹介の方が効率的だと考える企業は意外とあるんです」
それを聞いて、Kさんは少しほっとしたような表情になった。
「そうですか。転職は真剣に考えているのですが、今後の自分の方向性についても相談したかったんです。やりたい仕事のイメージはあるのですが、自分の考え方が甘いのかもしれないですし。就職してすぐ転職するだけでもイメージが良くないのに、それを繰り返したら、もうどこの会社にも相手にされなくなりますよね。同じ失敗はできないので、ぜひプロの方の意見も参考にしながら、転職活動をしたいと思いまして」
確かに転職ナビサイトで応募した場合、途中で立ち止まって考えるのはなかなか難しいし、すべての判断を自分でしなくてはならない。企業から直接「内定しました。いつから出社できますか」などと言われて、「少し考える時間をください」とは言いにくいものだ。若い人ならなおさらだろう。
その意味では、人材紹介を利用して転職活動を行うのはいい判断だといえる。と同時に、目標が明確なキャリアのある人材のお手伝いよりも手間はかかりそうだなという気もした。
こうして、Kさんとの転職相談が本格的に始まったのだが、その後Kさんは、順調に内定を獲得していった。