「人」基準から「仕事」基準へ
――日立製作所が取り組む、
グローバル視点に基づく
人財マネジメントとは
株式会社日立製作所 人財統括本部 副統括本部長(グローバル人財戦略担当)
山口岳男さん
日本人と外国人の混成チームで行うことの重要性とは
「グローバル人財マネジメント戦略」に取り組む際、どのようなことに注意を払っていますか。
一番大切なのは、一つひとつのゴールをはっきりさせることです。また、すべてプロジェクトベースで行っていますが、プロジェクトの前提条件として、日本人だけでは行わないことがとても重要です。外国人が加わることによって何が起こったかというと、キックオフから稼働まで、全てのプロジェクトが想定以上のスピードで、その成果も予想以上だったことです。日本人と日本人以外の人事の混成チームだったからこそ、力を発揮できたのです。
人財部門でも、アメリカディビジョンでは三人以上の外国人のマネジャーを置いています。日本でも一人外国人を入れています。彼らは、日本人では経験できないものを持った人たちであり、日立の中ではなかなか身に付けられないスキルセットを持っています。そういう人たちがグローバルにプロジェクトをドライブしてくれたおかげで、実現できたことは多いと思っています。
外国人が一人でもいれば、ミーティングでの会話は英語になり、資料も英語で作ります。最初は大変でしたが、1年近くやっていると、日本人のメンバーのレベルも上がっていきました。現在進めている取り組みは、企業の文化を変えるようなものです。そのため、どれだけ徹底してできるかが重要な課題だと思っています。
すると、新しく創造していくためには、これまでの日立らしさなども否定するようなことも出てくるわけですか。
そうしなければ、変わることはできません。100年続いた仕事のやり方を変えるためには、思い切って振みこんでいくことが重要です。
グローバル展開を進めていく中で、リーダーの育成は大変重要なテーマですね。
私がアメリカの現地法人にいた時に一番困ったのは、日本人のリーダーの育成です。日本ではものすごく優秀で結果を残している人が、アメリカに来るとなかなか成果が上げられないというケースに、たびたび遭遇しました。経営研修のプログラムは既に存在していましたが、リーダーシップや人材育成のあり方について考え直さなければいけないと考え、研修のプログラムを全て見直すことにしました。
私は、リーダーシップとは「型」だと思っていますが、日本人のリーダーには「型」がなく、アメリカのリーダーにはきちんとした「型」があります。優秀なリーダーは自分が組織のリーダーになったら、ゴールをセットしてビジョンを見せ、自分のチームを作ってコミュニケートしながら結果を出すために何が必要であるかを議論し、メンバーをモチベートしつつチームを率いて結果を出すことが、「型」としてしっかりできるのです。しかし、日本にそういうリーダーがなかなかいません。そこで、リーダーシップの「型」を七つにまとめ、それをベースにして、課長研修で徹底的に教え込みました。
ビジネスの世界では、日本人も戦いのモードへと変わらなくてはいけません。その切り替えを、どのように行うかが重要なポイントです。英語ができることは当たり前ですが、戦いのモードへと自分を切り替えられなかったら、勝てるリーダーになれません。そういうことを重点に置いて、研修を行っています。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。