人事の常識や社内の慣行にとらわれない!
人と事業をつなぐミッションに挑み続ける
“ソフトバンク流”人事改革
ソフトバンク株式会社 人事本部 副本部長 兼 採用・人材開発統括部 統括部長 兼 未来人材推進室 室長
源田泰之さん
人事の常識や社内の慣行、従来の手法にとらわれない人事施策
これまでの人事としてのキャリアのなかで、ご自身のターニングポイントとなった出来事はありますか。
たくさんあるのですが、まず思い浮かぶのは、「ソフトバンクユニバーシティ認定講師制度」の立ち上げです。ソフトバンクユニバーシティとは、ソフトバンクグループの社員向けに研修を提供する人材育成機関。私が人事に異動してきたタイミングでは、研修のほとんどを外部講師が担っていたのですが、実際の研修を見学してみて、疑問を感じたんです。優秀な講師ではあるが、机上の話がメイン。これでは研修で学んだことが十分に身につかないだろうと、講師の人選を見直すことにしました。
ふと社内を見わたすと、ソフトバンクの社員のなかに、すばらしいリーダーシップを持つ人がたくさんいます。それなら社員に講師をやってもらおう、ということになり、社内認定講師の制度をつくって、研修の内製化にかじをきりました。部署や職種、役職の垣根を越えて、これまでの知見や経験、強みを生かして社員自ら登壇する講義のスタイルは、非常に独自性が高いものだと思います。制度発足から11年目となる今年度の認定講師は130人を超え、研修の満足度も向上しています。
「ソフトバンクユニバーシティ認定講師制度」の立ち上げが、なぜ私にとってターニングポイントだったのか。それは「これまで継承してきた既存のやり方や、世間で一般的だとされている方法にとらわれなくてもいい」と気づかせてくれたからです。人事発で新しいやり方を提案し、形にできることが実証された出来事でもありました。
2010年に開校した「ソフトバンクアカデミア」も、ターニングポイントとなった仕事の一つです。「ソフトバンクアカデミア」は孫正義が校長となり、自身の後継者やAI群戦略を担う事業家を発掘・育成することを目的とした学び舎です。特徴的なのは、ソフトバンクグループに所属していない社外のビジネスパーソンも参加できること。私は、「ソフトバンクアカデミア」の事務局を任されたのですが、20代前半でユニークな新規事業を生み出している若者や、30代で経営している会社を上場に導いた敏腕起業家など、社外とのつながりが飛躍的に増えました。さまざまなビジネスに出会い、多様な世界・多様な価値観を知るきっかけにもなりました。
新規事業提案制度「ソフトバンクイノベンチャー」の立ち上げや、孫正義が私財を投じて設立した孫正義育英財団の事務局長就任も、この延長線上にあります。孫正義育英財団を立ち上げるときには、「財団ってどうやってつくるの?」というところから始めました。もはや人事の範疇を超えていますよね(笑)
源田さんのキャリアをうかがっていると、「営業から人事へ」「人事から全社へ」「社内から社外へ」と、一つずつ既存の枠組みや常識から自由になっていった印象を受けます。
もともと、どうしても人事がやりたかった人間ではないので、「人事としてこうあるべき」という既成概念を持っていなかったことが、よかったのかもしれません。私は、仕事の本質というのは、どの部署にいても、どの職業に就いても、あまり変わらないものではないかと考えています。どの分野でも、物事を進めるうえで求められることは、そんなに変わらないのではないでしょうか。
たとえば本質的な課題を把握する力や、課題を解決するために適切な打ち手を考える力、打ち手を遂行する力は、どの職業でも重要ですよね。本当の意味で自らのミッションを果たしていくために、これまでの常識や自分自身のこだわりをできるだけ外して、フラットな頭で何をすべきかの本質を捉えることが大事だと思っています。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。