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キーパーソンが語る“人と組織”

誤解、偏見、思い込み!?
達人が教える“本当のダイバーシティ組織”とは(後編) [1/3ページ]

2016/3/3

佐々木 かをりさん
(株式会社イー・ウーマン代表取締役社長)

株式会社イー・ウーマン代表取締役社長 佐々木かをりさん
質問です。同じ社員10名の会社で、A社は10名全員が男性。B社は男性7名に女性が3名。さて、「ダイバーシティにすぐれた組織」はどちらでしょうか? 「B社」と即答した人には、インタビュー前編の熟読をおすすめします。株式会社イー・ウーマン代表の佐々木かをりさんにうかがったのはダイバーシティの本質。それは、“視点の多様性”に尽きるということでした。後編では、ダイバーシティな組織で働くとはどういうことか、日本企業が本当のダイバーシティを進めるためには何が必要か、トップや人事リーダーはどう取り組むべきかといった、より実践的なダイバーシティ組織論をうかがいます。
株式会社イー・ウーマン 佐々木かをりさんプロフィール

ささき・かをり●上智大学外国語学部比較文化学科卒業。米国ニューヨーク州エルマイラ大学に留学。2008年名誉文学博士号授与。 1987年、70言語対応の国際コミュニケーションのコンサルティング会社、株式会社ユニカルインターナショナルを設立。1996年からは毎年夏「国際女性ビジネス会議」を企画、実行委員長を務める。2000年株式会社イー・ウーマンを設立。Webサイト「イー・ウーマン」を通じて、スマートコンシュー マーの知恵を活用し、企業のブランドコンサルティング、コンセプト提案、商品開発などを行っている。2009年からは、表参道にて数々の講座提供および企業向け研修、講演アレンジメントも行っている。2013年、各分野で活躍する女性の講師、講演者、委員、女性社外役員などを紹介する「女性スピーカーズギルド」をスタート。テレビのコメンテーター、大学客員教授、各種政府審議会委員、上場企業などの社外取締役、社外監査役などを務める。著書は『必ず結果を出す人の伝える技術』(PHPビジネス新書)など多数。

ダイバーシティは「チームとしての総合得点」を高める手段

―― 佐々木さんは「日本人の多くはダイバーシティの本質を誤解している」と警鐘を鳴らしていらっしゃいます。インタビュー前編では、その一例として「ダイバーシティというと女性活用の話と同一視されがちだが、そうではない」という指摘がありました。

ダイバーシティをめぐる誤解や思い違いはほかにもあります。組織において尊重されるべき多様性を、人によっては、個人の権利と受け取ってしまうんですね。もちろん人権という部分は重要で、それが職場でないがしろにされるようなことは絶対にあってはなりません。しかし、個人の権利だけを主張し、ダイバーシティをそのための手段として利用するようなことになると、組織は多様化するどころか、バラバラになり、機能不全に陥ってしまうでしょう。例えば、「うちの会社はダイバーシティを重視しているんですよね? だったら私、今日は用事があるので、14時に退社します」とか、「僕はオフィスより家のほうがはかどるので、在宅勤務に替えてください」とか、そういう勝手な都合まで、社員が個人の権利として主張し、会社側もそれを多様性と解釈して認めてしまうようでは、まったく収拾がつきません。本末転倒だと思います。

―― 単なる“わがまま”ですよね。

そうなんです。多くの人が勘違いしているのですが、ダイバーシティとは、権利だけを主張してわがままな組織になることではありません。多様性と、個人のエゴは似て非なるものなのです。両者の違いは、そこに組織への貢献があるか、ないか。たとえば、事情で5時間しか働けないという社員に、家での業務を認めたら、大きな成果を出して、売り上げに貢献してくれたとか、在宅だと夕方以降も確実に連絡がとれるので、チーム全体の情報共有がスムーズになったとか、そういうことであれば、会社もその人に、多様な働き方として在宅勤務を認めた意味がありますよね。ダイバーシティのある組織は、単に多様なだけでなく、多様の先に、チームとしてのアウトプットがなければいけません。言い換えれば、働き手一人ひとりから最大限の貢献可能性を引き出すための環境や仕組みを整えて、チームとしての“総合得点”を高める。ダイバーシティとは、そのための一つの考え方であり、手法でもあるわけです。決してわがままを許したり、自分勝手なメンバーを増やしたりすることではありません。

―― ダイバーシティを導入し、多様性を受け入れる企業の側はもちろんですが、働き手の側にも、相応の覚悟が求められそうです。

本当の意味でダイバーシティを実現した組織では、どんな人でも受け入れられる反面、受け入れられるからには、誰もが組織への貢献を具体化する必要があります。その両方が共存して初めて、ダイバーシティは成立するのです。では、ダイバーシティな組織に貢献するとはどういうことでしょうか。前編で、ダイバーシティの本質は「視点の多様性」だと言いましたね。そう、大切なのは、人とは違う自分の「視点」をチームにどれだけ提供できるか。そこが乏しいと、チームに貢献していない、職場に参加していないということになりかねません。講演などでは、よくこう言うんです。年功序列、終身雇用の時代であれば、特に何か発言したり、提案したりしなくても許された。波風を立てず、言われたことだけやっていれば、毎年それなりに昇給し、いい会社人生を送ることができた。しかし、これからは違います。ダイバーシティの時代は、10人いれば10通りの貢献が欲しい。例えば、自分の意見やアイデアを、チームのために常に出す必要があります。多様な視点が求められるとは、そういうことなんです。


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