世界基準のリーダーシップを求めて伸ばす GE流“生え抜き”育成哲学とは(後編)
―― 人の成長を支援する人事部門こそ自ら学び、成長せよ[前編を読む]
日本GE株式会社 代表取締役 GEキャピタル社長兼CEO
安渕 聖司さん
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トップ自らが30%の時間を“人”に費やすGEの本気
ところで、日本企業における人材育成の現状をどのようにご覧になっていますか。
人材の育成やリーダーの育成を企業の最重要課題と位置付けるのであれば、当然、トップ自らが直接コミットして進めなければなりません。残念ながら、日本企業はそこがまだ弱く、おそらく多くの企業では「人材育成は人事担当役員の役割」という認識に、未だとどまっているのではないでしょうか。私が知っている会社は限られますが、内外を問わず、GEほど真剣に人材やリーダーの育成を考えている企業は多くないというのが、入社時の率直な印象でした。その情熱の源が、現CEOのジェフ・イメルトの姿勢にあることは間違いありません。彼は、社員の育成・評価に関する仕事に執務時間の30%超を費やしているのですから。それくらい、トップ自らが“人”に関わっているのです。
また、女性や外国人を含めたダイバーシティの推進や、いわゆる年次年齢主義的な人事慣行からの脱却についても、取り組みが不十分な日本企業が多いと思います。それらの停滞が貴重な人的資源の活用や能力発揮の機会を妨げ、イノベーションの足かせになっているのだとしたら、日本全体の競争力にとっても大きな損失でしょう。
GEキャピタルでは、そうした日本企業の抱える経営課題に対し、GEのノウハウを伝授して解決に資する付加価値サービス、「アクセスGE」を提供していますね。
GEキャピタルにとって、金融サービスはお客様とのパートナーシップを構築する始まりにすぎません。「アクセスGE」は、航空機のエンジンから人の命を救う医療機器まで、多様な製品を創造するGEグループの一員として、モノづくりを原点に培ってきた経営知識やリソースを無償で提供し、お客様の成長と成功をサポートするサービスです。なかでも次世代リーダー育成や評価方法など、人事関連のノウハウに人気があります。
あらためて、うかがいます。安渕さんがリーダーとして、いま一番大切にされていることは何ですか。
いろいろありますが、一つだけ挙げるとしたら、GEにSay/Do ratioという言葉があります。直訳すると、「言ったことと行ったことの比率」という意味。要するに、自分の言ったことをどれだけ行っているか、「言行一致」ということです。やはり組織のリーダーなら、このSay/Do の比率が限りなく100%に近くなければいけません。メンバーにもっと勉強しなさいといった本人が、どれだけ勉強しているかという話です。ボランティア活動をしようというなら、まず自分から始めるべきでしょう。人はそういうところをしっかりと見ています。世の中には言いっ放しのリーダーも少なからずいると思いますが、私は、実践をおろそかにしません。
最後に、企業で人事・人材育成に携わる方々に向けて、メッセージをお願いします。
グローバル人材も、ダイバーシティも企業競争力の源泉。したがって人事部門の方々には、自社の競争力を創出する重要な役割を担っていることを、常に意識してほしいと思います。そして最も大切なことは、人材育成を手がけ、人の成長を支援している人自身が、自分を成長させようとすることです。まず自分が学び、自分を伸ばす。先述のSay/Do ratioです。その姿を示していくことが他の社員にも、「変われるんだ」「変化に対応していけるんだ」という動機づけになるはずです。何よりも人事に求められているのは、自ら変化をドライブする姿勢ではないでしょうか。
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さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。