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大学卒女性の働き方別生涯賃金の推計-正社員で2人出産・育休・時短で2億円超、男性並水準で3億円超

ニッセイ基礎研究所 生活研究部 上席研究員 久我 尚子氏

大学卒女性の働き方別生涯賃金の推計-正社員で2人出産・育休・時短で2億円超、男性並水準で3億円超

要旨

  • 生涯賃金推計の前提として女性の就労状況を見ると、女性雇用者の過半数は非正規雇用者である。ただし、近年の「女性の活躍」推進で54歳以下では若いほど非正規雇用率は低下し、出産前後の就業継続率が上昇している。また、第1子出産前後(出生年が2015~2019年69.5%)と比べて第2子(同87.1%)や第3子(同89.5%)の就業継続率は大幅に高く、女性の就業継続の壁は第1子出産前後にある様子が見て取れる。
  • 大学卒女性の生涯賃金について雇用形態別に復職した場合や出産・子育てで離職をした場合など11のケースを設定して推計した。結果、女性が大学卒業後に直ちに就職し、同一企業等で正規雇用で休職することなく働き続け、60歳で退職した場合の生涯賃金は2億5,570万円(同様の男性では2億9,492万円)となる。
  • 一方、2人の子を出産し産育休を各1年間利用し、フルタイムで復職すると2億2,985万円、復職時に時短勤務を子が3歳まで(2億2,057万円)、小学校入学前まで(2億1,233万円)まで利用しても2億円を超える。一方、第1子出産後に退職し、第2子就学時にパートで再就職した場合は6,489万円(「103万円の壁」を意識した働き方では最大6,081万円)となる。なお、非正規雇用で休職無しで1億1,742万円、産育休を利用し復帰すると1億1,353万円となる。
  • 大企業勤務や65歳で退職、男性並の賃金水準の女性の場合なども推計したところ、60歳より65歳で退職した方が、退職年齢が同じなら大企業の方が、女性より男性労働者の賃金水準の方が生涯賃金は多くなる。結果、大企業勤務・65歳で退職・男性並の賃金水準の場合、2人出産後に産育休を利用しフルタイムで復職すると3億1,457万円となる。近年、少数ながら増加傾向にあるパワーカップルの妻はこの水準を超えるものと見られる。
  • 本稿は、単純に大学卒女性の生涯賃金に注目して推計したものであり、当然ながら「女性の活躍」は生涯賃金の多寡によるものではなく、本人の意思が尊重されるべきものだ。また、活躍の場は職場だけではなく、家庭や社会など多様にある。一方で、就業希望があっても就業できていない女性が存在することや、将来を担う世代が結婚や子を持つことを躊躇する大きな要因には経済不安があることも事実だ。経済面が全てを解決するわけではないが、経済的な理由で結婚や出産をあきらめる状況は救済されるべきだ。
  • 足元では物価高が進行する中で、政府はエネルギー価格や食料価格の抑制対策や賃上げ支援、低所得世帯への給付といった物価高対策を実施しており、負担感の大きな子育て世帯に向けた給付等を行う自治体もある。生活困窮世帯を中心に即時的な家計支援策の実行が求められる一方で、中長期的には安心して働き続けられる就業環境の整備を進めることは究極の家計支援策と言える。

1――はじめに~「女性の活躍推進」が言われ始めて約10年、期待される女性の経済力

政府が2013年に成長戦略として「女性の活躍」を掲げてから1、10年近くが経過した。2015年8月には「女性の活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)」が成立し(2016年4月施行)、国や地方公共団体、民間企業2等に対して、女性の活躍推進に向けた数値目標を盛り込んだ行動計画の策定や情報の公表が義務付けられるようになった。

その結果、女性の管理職等の比率(図表1)や男女の賃金格差(図表2)、男性の育児休業取得率(図表3)など、女性の職業生活に関わる各種指標において一層の改善が進んでいる。また、30代を中心とした既婚女性の労働力率が上昇することで、当初から課題としてあげられていた「М字カーブ問題(出産や子育てによる離職)」は解消に近づいている(図表4)。

図表1 民間企業の階級別に見た役職者に占める女性比率/図表2 男性=100とした場合の女性の所定内給与
図表3 育児休業取得率(民間企業)/図表4 女性の労働力率

現在のところ、未だ多くの領域に是正の求められる男女差が存在し、課題は残存しているものの、今後とも「女性の活躍」推進が期待される中で、女性の経済力が日本経済に与える影響は一層、増していく。

このような中、本稿では大学卒業後の女性3について、雇用形態や育児休業制度・時間短縮勤務制度の利用状況などの違いを考慮しながら、生涯賃金を推計する4

1 首相官邸「日本再興戦略-JAPAN is BACK(平成25年6月14日)」
2 当初は常用労働者301人以上の企業等が対象で、2022年4月1日以降は101人以上の企業等に対象が拡大。
3 文部科学省「学校基本調査」によると、女性の大学進学率は上昇傾向が続いており、2022年で53.4%、男性は59.7%。
4 久我尚子「大学卒女性の働き方別生涯所得の推計」(ニッセイ基礎研レポート、2016/11/16)にて同様の推計をしているが、本稿では統計の最新値(2021年)を用いるとともに、65歳で退職したケースや大企業勤務(企業規模1,000人以上)のケース、男性と同様の賃金水準を得ているケースなどを加えている。

2――近年の女性の就労状況~「女性の活躍」推進効果で非正規雇用率低下、出産後の就業継続率上昇

1|雇用形態の状況~「女性の活躍」推進効果で若いほど非正規雇用率低下、高年齢層の就業も活発化

まず、生涯賃金推計の前提として、近年の女性の就労状況の変化について見ていきたい。

これまで「М字カーブ問題」で指摘されてきたように、日本では出産や育児を理由に一旦離職し、パートなどの非正規雇用で再就職する女性が多かったために、年齢とともに非正規雇用者の割合が高まり、女性雇用者全体では非正規雇用者が過半数を占める(図表5)。35~44歳までは正規雇用者が非正規雇用者を上回るが、45~54歳では逆転し、非正規雇用者率が半数を超えて上昇していく。

推移を見ると、2013年頃から54歳以下では若いほど非正規雇用者率が低下しており、2012年と比べて2022年では、15~24歳(在学中除く)や25~34歳で約1割低下している(図表6)。逆に、65歳以上では非正規雇用者の割合が約1割上昇しているが、これは正規雇用者数は大きくは変わらない一方で(2012年32万人→2022年41万人)、非正規雇用者数が大幅に増えたためである(同80万人→同199万人)。つまり、「女性の活躍」が掲げられて以降、若い年代を中心に正規雇用で働く女性が増え、高年齢層の就業も活発化している。

図表5 女性雇用者の雇用形態割合(2022年)/図表6 女性雇用者に占める非正規雇用者の割合

2|結婚・出産前後の就業継続状況~就業継続率は上昇傾向、第1子出産後は69.5%、正規は83.4%

前節で見た、М字カーブの凹みが解消傾向にある背景には、結婚や出産前後の妻の就業継続率が上昇していることがある(図表7)。子の出生年が2010~2014年と2015~2019年を比べると、第1子出産前後の妻の就業率は57.7%から69.5%(+11.8%pt)へ、育休を利用して就業継続した割合は43.0%から55.1%(+12.1%pt)へと上昇している。なお、就業継続者の中で育休を利用した割合は74.5%から79.3%(+4.8%pt)へと上昇している。また、就業継続率は第1子出産前後と比べて第2子出産前後(2015~2019年では87.1%で第1子出産前後の就業継続率より+17.6%pt)や第3子出産前後(同89.5%、同+20.0%pt)では大幅に高くなっている。つまり、女性の就業継続の大きな壁は第1子出産前後にある様子が見て取れる。

また、就業状況別には、もともと自営業主・家族従業者・内職では就業継続率が高水準にあるが(出生年が2015~2019年の第1子出産前後の就業継続率は91.3%)、近年、正規の職員(同83.4%)やパート・派遣(同40.3%)などの雇用者の就業継続率が上昇している。なお、正規の職員の就業継続率は上昇し続けてきた一方で、パート・派遣では2000年代初頭まで2割程度で推移してきたが、足元で約4割へと、これまでの2倍程度に上昇している。背景には、近年の「女性の活躍推進」の流れにおける政府等の啓蒙活動によって非正規雇用者も育児休業制度の利用対象であることの認識も広まったことや「改正育児・介護休業法」にて非正規雇用者の育児休業取得要件が緩和されたことなどがあげられる。

図表7 結婚・出産前後の妻の就業状況の変化

3――大学卒女性の生涯賃金の推計方法

1|設定した女性の働き方ケース

大学卒女性の生涯賃金について、正規雇用者・非正規雇用者別に、働き続けた場合や出産・子育てで離職をした場合など、11の働き方ケースを設定して推計する(図表8・9)。

図表8 大学卒女性の生涯賃金推計のために設定した働き方ケースの詳細条件
図表9 女性の生涯賃金推計のために設定した大学卒女性の働き方ケース

2|生涯賃金の推計条件

生涯賃金の推計方法を以下に示す。

・生涯賃金5=年齢別賃金の合計(※1または2)+退職金(正規雇用者のみ)

※1 正規雇用者及び非正規雇用者の場合
年齢別賃金=きまって支給する現金給与額6×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額

※2 パートタイムの場合
年齢別賃金=(実労働日数×1日当たり所定内実労働時間数×1時間当たり所定内給与額)
       ×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額

生涯賃金の推計は、厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」における「きまって支給する現金給与額」及び「年間賞与その他特別給与額」から各年齢の賃金を推計し、それらを合算する7。なお、大学卒業後、同一企業でフルタイムの正規雇用者として働き続ける労働者として、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」における「標準労働者(学校卒業後直ちに企業に就職し、同一企業に継続勤務しているとみなされる労働者)」を用いる。その理由は、他ケースとの比較を想定し、育児休業制度や短時間勤務制度などを利用しやすい環境にあり、正規雇用者比率が高い労働者と考えたためである。ただし、標準労働者の賃金の公表値には「所定内給与額」は存在するが、「きまって支給する現金給与額」が存在しないため、同条件の一般労働者における両者の比率から、標準労働者の「きまって支給する現金給与額」を算出する(参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2021」)。

5 退職金は必ずしも賃金に当たらないが(就業規則や労働契約等に、退職金の支給条件が定められている場合は賃金に相当)、本稿では便宜上、賃金に含まれる形で生涯賃金を推計している。
6 労働契約等により予め定められている支給条件により支給された6月分現金給与額(基本給、各種手当等含む)。ここから超過労働給与額を差し引いたものが「所定内給与額」。
7 本稿の推計は、独立行政法人労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2021」における生涯賃金推計を参考に、現在の各年齢の賃金を足し合わせて求めている。長期に渡る就業期間では物価・賃金水準は変化するが、賃金水準を現在のものに合わせるという考えに立つ。この方法とは別に、物価水準等を調整して生涯賃金を得る方法も考えられ、賃金の世代間格差などを把握するために適しているが、今年、新卒で働き始めた者の生涯賃金という見方は難しい。

育児休業利用時の取扱い

育休中は、休業前の賃金水準で「育児休業給付金」が支給されるものとする。育休から復職時は休業前の賃金水準に戻るが、復帰初年度のみ「年間賞与その他特別給与額」は半額とする。

短時間勤務制度利用時の取扱い

短時間勤務時は残業を行わないため、超過労働給与額を含む「きまって支給する現金給与額」ではなく「所定内給与額」を用いて年収を推計する。また、賃金水準は労働時間数比率(6時間/8時間=75%)を乗じた値とする。また、短時間勤務期間の経過年数は、実年数の75%とし(例えば、短時間勤務を8年間利用した場合、フルタイム勤務6年分に相当)、フルタイム復帰時には、その経過年数に相当するケースAの年齢別賃金に接続する。

55歳以降の取扱い(正規雇用者)

正規雇用者の55歳以降の賃金は、ケースによらず同水準とする(標準労働者では55歳を境に「所定内給与額」が大きく減るが、ケースによる違いには様々な仮定が必要であり、今回は設定しない)。また、60歳~64歳については再雇用として雇用形態が変わる場合が多くあることを想定し、雇用期間の定めのある非正規雇用者の年齢階級別賃金を用いる。

非正規雇用者の取扱い

非正規雇用者の賃金は、「正社員・正職員以外」の値を用いる。育休から復職時の賃金水準は、標準労働者と同様に休業前と同等とする。なお、ケースA-Bにて標準労働者が非正規雇用者として復職する際の賃金水準は、第1子出産退職時と同年齢の非正規雇用者と同等とする。

退職金の取扱い

正規雇用者の退職金は、厚生労働省「平成30年就労条件総合調査8」の1人平均退職給付額を用いる。ただし、男女別の数値がないため、男女計のものを、学歴種別では大学卒の数値がないため、大学・大学院卒のものを用いる9。また、出産等による休業のない場合は、勤続年数階級35年以上の値、育休を利用した場合は勤続年数階級30~34年の値(60歳で退職の場合)、第1子出産時に退職した場合は勤続年数階級20~24年の値に勤続年数比率を乗じた値とする。

8 退職給付額の調査は5年毎実施。
9 平成30年調査から学歴種別は大学卒から大学・大学院卒へと変更。よって、実際の大学卒の女性の平均退職給付額より多い可能性がある。

4――大学卒女性の生涯賃金の推計結果~正社員で2人出産・育休・時短利用で2億円超、男性並みの賃金水準なら3億円超

1|60歳で退職の場合~正社員で2人出産・育休・時短利用で2億円超、パート再就職で約6千万円

大学卒の女性が60歳で退職した場合について働き方ケース別に生涯賃金を推計した結果を示す(図表10)。女性が大学卒業後に直ちに就職し、同一企業等で休職することなく働き続けた場合(ケースA)の生涯賃金は2億5,570万円となる。なお、参考までに、同様の形で働き続けた男性では2億9,492万円となる(女性より+3,922万円)。

図表10 女性の働き方ケース別生涯賃金(60歳で退職した場合)

一方、2人の子を出産し、それぞれ産前産後休業制度と育児休業制度を合計1年間(2人分で合計2年間)利用し、フルタイムで復職した場合(A-A)の生涯賃金は2億2,985万円、復職時に時間短縮勤務制度を利用し、子が3歳まで時短勤務を利用した場合(A-T1)は2億2,057万円、小学校入学前まで利用した場合(A-T2)は2億1,233万円となる10。つまり、2人の子を出産し、それぞれ産休・育休を1年取得し、復職後には時短勤務を利用したとしても、生涯賃金は2億円を超えることになる。ただし、本稿における推計では、育休から復職後は、すみやかに休業以前の状況に戻ることを想定しているが、実際には仕事と家庭の両立負担は大きく、職場と家庭双方の両立支援環境が充実していなければ、休職前と同様に働くことは難しいだろう。また、人事評価上の問題(休職期間が生じることが実質的には不利になる可能性など)や、周囲や本人の意識の問題(本人の希望によらず負担の少ない仕事を与えられる、あるいは本人の仕事と家庭に対する優先順位の変化など)などもあるだろう。一方で冒頭に示した女性の職業生活に関わる状況の改善傾向をかんがみれば、すみやかな復職を希望する場合は、それを実現しやすい環境が拡大していることを今後とも期待したい。

一方で、第1子出産後に退職し、第2子就学時にフルタイムの非正規雇用者として再就職した場合(A-R-B)の生涯賃金は9,973万円となる(A―Aより△1億3,012万円、△56.6%)。また、昔から日本人女性で多い、出産を機に退職し、子育てが一旦落ち着いてからパートで再就職した場合(第1子出産後に退職し、第2子就学時にパートで再就職:A-R-P)は6,489万円(同△1億6,496万円、△71.8%)となる。なお、実際にはA-R-Pに相当するケースでは、配偶者控除枠を意識した働き方をする女性が多く、103万円の壁(年収103万円を超えると所得税が発生)、150万円の壁(年収150万円までは控除額が最大38万円)、201万円の壁(年収150万円を超えると控除額が段階的に減り、年収201万円でゼロになる)といった表現をされることが多い。一方、本稿のA-R―Pのパートで復職期間の年収は、短時間労働者の労働時間や日数、所定内給与額等の平均値を用いた結果、年収約120万円で推計されているため、103万円の壁を意識した場合の生涯賃金はこれより約400万円減り、最大で6,081万円(A-Aより△1億6,904万円、△73.5%)となる。

なお、出産前後で退職せずに就業継続した場合のA-AやA-T1・T2と、退職してパートで再就職するA-R-Pの生涯賃金を比べると1億5千万円前後の差が生じることになる。この金額差は、女性本人の収入として見ても、世帯収入として見ても、多大であることは言うまでもなく、配偶者の収入や資産の相続状況にもよるが、住居や自家用車の購入、子供の教育費等の高額支出を要する消費行動に影響を与える。当然ながら、個人消費全体にも影響を及ぼす。

また、女性を雇用する企業等から見ると、出産後も就業を継続していれば生涯賃金2億円を稼ぐような人材を確保できていたにも関わらず、両立環境の不整備等から人材を手離す結果となり、新たな採用・育成コストが発生しているとも捉えられる。女性の出産や育児を理由にした離職は、職場環境だけが問題ではないが、両立環境の充実を図ることは、企業にとってもコストを抑える効果はある。

また、女性が大学卒業後に直ちに就職し、正規雇用ではなく、非正規雇用の職に就き、休職することなく働き続けた場合(B)の生涯賃金は1億1,742万円であり、同一企業で働き続ける正規雇用者(A)の半分以下となる(△1億3,828万円、△54.1%)。また、正規雇用者と比べて賃金水準が低いために、産休・育休を2回利用して復帰した場合(B-B)でも生涯賃金は1億1,353万円(Bより△389万円)であり、休職せず働き続けた場合と大きくは変わらない。現在、「同一労働・同一賃金」として同一企業等における正規雇用者と非正規雇用者の間の不合理な待遇差の解消が進められているが、賃金水準の問題だけでなく、非正規雇用者では退職金がない場合も多いため(本稿では非正規雇用者については退職金を設定せずに生涯賃金を推計)、正規雇用者と比べると生涯賃金に大きなひらきが生じている。

なお、参考のため、図表11にケース別に各歳別賃金の推移(退職金を含まない)を示す。ケース別に賃金の経年変化を見ると、どこでマイナスが生じ、どのあたりから追いつくのか、あるいは、差がひらいてしまうのかなどをイメージしやすいだろう。

図表11 女性の働き方ケース別・年齢別賃金(60歳で退職した場合、退職金を含まない)の推移

10 なお、本稿と同条件で2015年の大学卒女性の生涯賃金を推計すると、ケースAは2億5,816万円、A-Aは2億3,008万円、でおおむね同様である。

2|大企業勤務かつ65歳で退職の場合~男性並みの賃金水準の女性は2人出産後に復職で3億円超

同様に11の働き方について、大企業勤務(企業規模1,000人以上)の場合や65歳で退職した場合、男性労働者と同等の賃金水準にある女性の場合について推計した結果を図表12に示す。その結果、当然ながら60歳で退職した場合より65歳で退職した場合の方が、退職年齢が同じ場合は大企業の方が、女性労働者の賃金水準より男性労働者の賃金水準で推計した方が生涯賃金は多くなる。

最も生涯賃金の推計値が多くなった、大企業勤務で65歳で退職、男性労働者の賃金水準で推計した場合において、正規雇用者で2人の子を出産後に産休・育休を利用し、フルタイムで復職したケース(A-A)の生涯賃金は3億1,457万円となり、先の企業規模を考慮せず60歳で退職、女性労働者の賃金水準で推計した場合の値(A-Aは2億2,985万円)を8,472万円上回る。また、この条件の場合、時短を利用したとしても生涯賃金は約3億円となる。近年、共働き世帯が増える中で夫婦ともに高収入のパワーカップル世帯が少数ながら増加傾向にあるが、パワーカップルの妻はこの水準を超えるものと見られる。

図表12 女性の働き方ケース別生涯賃金

5――おわりに~安心して働き続けられる環境を整備し、将来世代の経済基盤の強化を

2016年にも同様のレポートを発信し、その際は厚生労働省「平成27年賃金構造基本統計調査」等を用いて大学卒女性の生涯賃金を推計したのだが、令和3年の新たな値を用いて推計した本稿でもおおむね同様の結果が得られた(60歳で退職した場合のA-Aについて、前稿は2億3,008万円、本稿は2億2,985万円、他のケースも同様の傾向)。この間、「女性の活躍」が一層進み、少子高齢化による労働力不足や新型コロナ禍による雇用情勢への影響なども生じたものの、現在のところ、長期間にわたる推計には大きな影響は見られない。

図表13 女性の就業希望のある割合と労働力率

本稿は、単純に大学卒女性の生涯賃金に注目して推計したものであり、当然ながら、「女性の活躍」は生涯賃金の多寡によるものではなく、本人の意思が尊重されるべきものだ。また、活躍の場は職場だけではなく、家庭や社会など多様にある。一方で、就業希望があるにもかかわらず、就業できていない女性が存在することも事実である。もし、女性の就業希望が叶えられれば、М字カーブは一層、解消に近づき(図表13)、希望通りの働き方ができる女性が増えれば、女性の生涯賃金が増えることにもつながる。

図表14 夫婦が理想の数の子どもを持たない理由

また、将来を担う世代が結婚や子を持つことを躊躇する大きな要因には経済不安がある(図表14)。経済面が全てを解決するわけではないが、経済的な理由で家族形成をあきらめる状況は救済されるべきだ。

足元では物価高が進行する中で、政府はエネルギー価格や食料価格の抑制対策や賃上げ支援、低所得世帯への給付といった物価高対策を実施しており、負担感の大きな子育て世帯に向けた給付等を行う自治体もある。生活困窮世帯を中心に即時的な家計支援策の実行が求められる一方で、中長期的には安心して働き続けられる就業環境の整備を進めることは究極の家計支援策と言える。

株式会社 ニッセイ基礎研究所

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【用語解説 人事辞典】
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