【真の残業削減を実現する】「営業職」の労働時間短縮のための業務見直しのポイント
時短コンサルタント・社会保険労務士
山本 昌幸
II. 「労働生産性」にみる日本の労働時間が抱える問題
1. 労働時間の国際比較
日本の労働時間が他の先進国に比べて長いことが、独立行政法人労働政策研究・研修機構の「データブック国際労働比較」から見てとれます(そもそもこの労働時間の比較自体が現実離れしており、個人的には実際の日本の労働時間はもっと膨大だと思っている)。
筆者は、あるマネジメントシステムを学ぶために、労働時間が非常に短い北欧(スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、アイスランド等)を、この2年半の間に4回訪問しました。その際、労働時間削減指導の専門家としてさまざまな実態を目の当たりにしました。特にスウェーデンでは、ストックホルム、イエテボリ、ヴィクショー、ボラスを訪ね、現地で働いている方からレクチャーを受け、スウェーデンの労働事情を学ぶことができました。
北欧で一番大きな国であるスウェーデンでは、管理職を含め残業はほとんどなく(年間200時間以上の所定外労働は法律で認められていない)、年間最低25日の有給休暇を使い切り(25日は最低付与日数なので企業によっては40日以上の場合あり)、その結果、気候の良いバカンスシーズンである5~8月は4週間程度の長期休暇を取得するのが普通です。しかし、2012年7月時点の1人当たりの国民総所得は5万6、210ドルで、日本の4万7、870ドルを上回ります。
長時間働いているにもかかわらず所得に反映されない原因は、日本人が無能だからなのでしょうか? そのようなことは絶対にあり得ません。日本の労働生産性の低さには必ず原因があります。その原因を取り除けばよいのです。
2. スウェーデンと日本の労働者の違いは?
一般論ではありますが、スウェーデン人は仕事よりも家庭やプライベートを大切にします。効率良く仕事を処理できればプライベートの時間を多く持てることが、仕事へのモチベーションを上げています。しかし、企業の業績が悪くなれば日本ほど解雇規制が厳格ではないので、解雇される可能性もあることから、企業の業績を維持・向上させるためのモチベーションも持ち合わせています。また、「会社に居ることが(ただ居るだけであっても)優秀な部下であることの表れ」という考えを持った管理職はほとんど存在しません。
3. 労働力人口減少に向けて女性の労働力を活用するには
少子高齢化による労働力人口減少を回避する方法の1つとして「女性の活用」が挙げられていますが、そのためには、(1)結婚しても仕事を続けられる勤務形態、(2)育児をしながら仕事を続けられる勤務形態、(3)介護を必要とする家族を抱えても仕事を続けられる勤務形態等を社内で整備する必要があります。このような柔軟な勤務形態を求めるのは女性に限ったことではありません。従業員にフルタイムでの勤務が困難となる事情が生じた場合に、職種変更によって働き続けられるようにするのではなく、そのまま同じ仕事を続けられるようにするほうが、企業にとっても労働者にとっても有用でしょう。このことからも、適正労働時間の実現が必要なのです。
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